薬草入りの水が注ぎ込まれる浴槽=2026年1月、ブータン・ティンプー(共同)

 心の幸せを重視する「国民総幸福量(GNH)」を掲げるブータンには、薬草をつけ込んだ水にたき火で熱した石を入れて沸かし、入浴する伝統的な風呂がある。雄大な山々に囲まれた小屋の中、かすかに香る薬草の湯…。風呂に漬かっているとストレスが溶けて消える気分になる。この時間がブータン国民の幸せの秘訣なのかもしれない。(共同通信ニューデリー支局=岩橋拓郎)

 首都ティンプーの郊外。なだらかな山に囲まれた盆地にれんが造りの長屋と小屋が立ち並ぶ一角がある。「ドツォ」と呼ばれる石焼き風呂の施設だ。利用中の建物からは白い湯気がもうもうと立ち上っている。

 部屋それぞれに木製の浴槽が備え付けられている。室内にはベッドや椅子、テーブルがあり、入浴後もくつろげる。部屋は1人でも複数でも利用可能。にぎやかな笑い声が聞こえてきた部屋からは、しばらくすると上気した顔の尼僧4人が楽しそうに出てきた。見るからに幸せそうだ。

 建物の壁には室内の浴槽に直結した小窓がある。まきに火を付け、2時間ほど熱した直径約20センチの石をここから投入する。数種類の薬草の入った水に石が入るとジュジュジュという音がして、湯気が勢いよく立つ。浴槽に石を2、3個沈めると40度前後の湯になる。誤って石に触れないよう浴槽内には木の柵が設置されている。

 施設を管理するケンチョさん(37)によると、寒さが厳しい冬場は満室になることもある。薬草は自ら山に採りに行き、中には標高4千メートル以上の高地にしかないものもあるという。料金は部屋の広さによって異なり、2時間で千ヌルタム(約1700円)から。

 石に含まれるミネラル分や薬草の効果で、ひざや腰の痛みが治るとケンチョさん。「悪い毒が抜け、心身の不調が改善するから人気なんだ」と自信満々に語った。

薬草がつけ込まれた水=2026年1月、ブータン・ティンプー(共同)

たき火で焼かれる石=2026年1月、ブータン・ティンプー(共同)

長屋やまき置き場など石焼き風呂の施設=2026年1月、ブータン・ティンプー(共同)

山々に囲まれた小屋=2026年1月、ブータン・ティンプー(共同)

ブータン・ティンプー、ヒマラヤ山脈