カシオペヤ座ガンマ星の伴星は白色矮星だった 「W」中央の星から届くX線の50年来の謎を解明
北の夜空を見上げると、アルファベットの「W」の形に並んだ星々を見つけることができます。北極星を探す時の目印としてよく知られている「カシオペヤ座」で、特に秋から冬にかけて見やすい星座です。
この「W」のちょうど中央の頂点に位置する、肉眼でもはっきりと見える明るい2等星は「カシオペヤ座ガンマ星」と呼ばれています。リエージュ大学のYaël Nazéさんを筆頭とする研究チームは、カシオペヤ座ガンマ星から放射される異常に強力なX線の発生源が、連星をなす伴星の「白色矮星」であることを特定したとする研究成果を発表しました。
今回の成果は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)がNASA(アメリカ航空宇宙局)やESA(ヨーロッパ宇宙機関)と協力して運用するX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」の観測によるもので、天文学者を50年以上悩ませてきた謎がついに解明されたことになります。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌Astronomy & Astrophysicsに掲載されています。

50年間議論されてきた「異常なX線」の謎
カシオペヤ座ガンマ星は、太陽の約16倍の質量を持つ「B型輝線星(Be星)」と呼ばれる高温の星です。この星は高速で自転していて、その周囲には放出されたガス円盤が存在しています。1970年代半ば、この星が通常の大質量星の約40倍という異常な明るさのX線を放っており、その発生源が約1億5000万度という超高温のプラズマであることが発見されました。
2000年には、この星が別の星と互いの周囲を回る公転周期203日の連星であることが判明したものの、目に見えない伴星の正体は不明なままでした。異常なX線の発生源についても、「Be星自身の磁場とガス円盤が相互作用してX線を出している」という説と、「未知の伴星へBe星のガスが落下(降着)する際にX線を出している」という2つの説が提唱されていました。


XRISMの「色を見分ける力」が捉えた決定的な証拠
論文によれば、この論争に終止符を打ったのはXRISMに搭載されたX線分光器「Resolve」でした。
研究チームがXRISMを用いて連星の軌道周期に合わせた観測を実施したところ、X線のスペクトル(電磁波の波長ごとの強さの分布)に見られる鉄の輝線の波長が青側や赤側へとわずかながらも周期的にずれる様子を、Resolveの極めて高いエネルギー分解能(簡単に言えばX線の「色」を細かく見分ける能力)のおかげで高精度に検出することに成功しました。
輝線の周期的なズレは、公転する星が地球に対して近づいたり遠ざかったりする時のドップラー効果によって生じたものです。注目すべきはその波長のズレから計算される速度変化で、主星であるBe星の動きとは異なり、目に見えない伴星の軌道運動と一致していました。このことから、X線はBe星の周辺ではなく、伴星の周辺で発生していることが直接的な証拠として示されたのです。


伴星の正体は「白色矮星」だった
この観測結果から、連星をなす2つの星のうち謎だった伴星の正体は、太陽程度の質量を持つ星が寿命を迎えた後の高密度な天体「白色矮星」であることが確定しました。主星であるBe星を取り巻くガス円盤の物質が、強力な磁場を持つ白色矮星へと落下する過程で生じる衝撃波などによって超高温のプラズマが形成され、強烈なX線が放射されていたのです。
研究チームによると、連星進化モデルの予測では、「Be星と白色矮星の連星系」は宇宙に多数存在するはずでしたが、これまでほとんど見つかっていませんでした。Nazéさんは今回の成果について、大質量星の連星進化のモデルをアップデートするための重要な一歩だとコメントしています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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