「年度末は無罪ラッシュ」は本当? ネットの噂を最高裁データで検証、“3月突出”の傾向明らかに
被告人は無罪──。最近、そんなニュースをよく目にする気がする、と感じている人がいるかもしれない。
ネット上では「年度末の無罪ラッシュがはじまった」といった書き込みも見られるが、本当なのだろうか。
調べてみると、その印象は必ずしも的外れではないことが見えてきた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●「年度末の無罪ラッシュ」は本当か?
Googleの「ニュース」タブで「無罪 判決」と検索すると、生後11カ月の娘への傷害致死事件や、知人に大麻を譲り渡した事件などをめぐって、京都や福岡、千葉など各地の地方裁判所で無罪が言い渡されたというニュースが並ぶ。
なかでも、群馬県太田市のホテルで20代の知人女性に性的暴行を加えたとして、不同意性交の罪に問われた福島県の復興ボランティア団体代表の男性に対し、前橋地裁が無罪判決を下したニュースは大きな注目を集めた。
筆者がざっと数えただけでも、3月に入って10件以上の無罪判決が出ていることが確認できた。
ネット上でも「やはり、年度末は無罪判決が出るタイミングと感じる」「年度末の駆け込み無罪ラッシュはじまったな」といった書き込みが散見される。
起訴された場合の「有罪率は99%」とも言われる日本の刑事裁判において、無罪判決が下されることは極めて珍しい。では、年度末の3月にこれほど相次ぐのは偶然なのだろうか。
●最高裁が過去10年間のデータ開示
弁護士ドットコムニュースが今回、最高裁判所に「月ごとの無罪判決の数の推移」について問い合わせたところ、2015年〜2024年の過去10年分のデータを開示してもらった。
資料では「通常第一審(地方裁判所・簡易裁判所)」「控訴審」「上告審」の3段階の裁判について、「無罪」や「一部無罪」の判決数が月ごとにまとめられている。
●過去10年の無罪判決、「第一審」は3月に突出
この資料によると、過去10年間で「通常第一審」における「無罪」の合計が最も多かったのは「3月」で、計199件だった。また、「一部無罪」も計131件で、3月が突出して多かった。
年別にみても、2021年と2023年を除く各年で、3月の無罪が最多だった(2024年は2月と3月がともに12件)。
「通常第一審」の「一部無罪」も同様の傾向で、3月が際立って多いことがわかる。
年ごとの数を見ると、たとえば2016年は、3月には30件の無罪が言い渡されているが、同じ年で次に無罪が多かったのは11月の10件だった。
2021年と2023年は10月が最多だったが、3月もその年の2〜3番目の多さとなっている。
2024年は2月と3月が各12件で最多だったが、10月が11件、11月と12月が各10件と、年度の後半に件数が多い傾向が見られた。
●控訴審の「破棄自判・無罪」、「3月集中」の強い傾向なし
一方で、「控訴審」のデータを見ると、第一審ほど極端な「3月集中」の傾向は見られなかった。
2015年、2017年、2018年、2022年、2023年の各年は、3月に「破棄自判・無罪」の数が最も多かったが(2022年は1月と3月が最多タイ)、それ以外の年では、2016年が10月、2019年が11月、2020年が6月、2021年が7月、2024年が12月、とばらつきがあった。
●上告審は10年間でわずか4件、うち3件が3月
「上告審」については、2015年〜2024年の10年間で「破棄自判・無罪」が言い渡されたのはわずか4件で、2017年3月、2018年3月、2022年1月、2023年3月に各1件ずつとなっている。
そもそも上告審で「破棄自判」の判決が言い渡されること自体が極めて少ないため、単純な比較は難しいが、ここでも3月における無罪判決が目立つ結果となった。
●年度末に裁判官の処理事件が多くなる可能性も
最高裁の資料を見る限り、10年間という限定的な範囲ではあるものの、「3月になると無罪判決が多く出る」という印象は、必ずしも的外れとは言えなさそうだ。
ただし、裁判官が処理する事件数自体が年度末の3月に多くなる可能性もある。そうした場合、単に分母が増えることで、無罪判決の数も比例して多く見えている可能性も残されている。
