世界で勝つためのピッチクロック導入の是非 WBCでの失敗と選手の声、そして“隣国の成功”は「慎重」なNPBを変えるキッカケにも

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8強で敗れたWBC。この結果は日本でピッチクロック導入の議論を促進させている(C)Getty Images

2年前のプレミア12でも――

 世界との“差”を感じる大会だった。現地時間3月17日に幕を閉じたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、野球日本代表「侍ジャパン」は、史上ワーストとなる8強で姿を消した。

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 1次ラウンドを4戦無敗で突破した日本だったが、準々決勝では、大会を制したベネズエラ代表に5-8と敗戦。投打に“力負け”という印象を植え付けられる完敗を喫した。

 大谷翔平を筆頭に過去最多となる8人のメジャーリーガーを招集した日本は、十分な戦力を備えていた。それでも大会史上初となる2度目の連覇の夢は早々と潰えた。

 敗北の原因は、さまざまに考えられ、球界内ではすでに多角的な検証が進められている。そうした中で選手たちからも「世界で勝つなら」と一つの要因として挙げられたのが、今大会から導入されたピッチクロックへの適応だった。

 そもそもピッチクロックは、試合時間短縮のために、MLBで前回大会直後の2023年シーズンから実施されてきた革新的ルールだ。投手は、捕手の返球を受けてから、走者なしでは15秒以内、走者がいる場面では18秒以内に投球動作に入らなければならない。違反すれば1ボールが加えられる。また、打者も残り8秒までに打席で構えを取らなければならず、こちらも遅れれば1ストライクを取られる。

 NPBでは、導入に向けた検証や議論こそされてきたが、導入には至らず。迎えた今大会は、慣れないルールに戸惑う選手も見られた。先述のベネズエラ戦で1点リードの6回に4番手として登板した伊藤大海は、先頭打者の2球目に違反。これが直接的な影響を与えたとは断言できないが、結果的にそこから2連打を許して、ウィルヤー・アブレイユに特大の逆転3ランを浴びた。

 もっとも、国際舞台において日本の選手たちが全く未経験だったということはない。2024年11月のプレミア12でもピッチクロック(20秒)は導入されていた。その時でさえも、侍ジャパンのメンバーからは「ルールが若干曖昧で、ちょっと難しかった」(早川隆久談)との声が上がり、導入を巡る賛否両論が巻き起こっていた。

韓国は「問題なく適応している」

 NPBでのピッチクロック導入の議論は、“隣国”でも小さくない注目を集めている。すでに2025年シーズンからKBOリーグで正式採用している韓国だ。日刊紙『Mania Times』は、日本球界の現状を受けて「日本では球界に根本的な改革を促すべきという声が大きくなっている」と報道した。

 MLBに倣って、早々とピッチクロックを取り入れた韓国球界は、今年から次のフェーズへと移行。初年度は走者がいない場合に用いていた秒数を20としていたが、それを2秒も短縮。国際仕様へと着実に近づけている。

 では、実際の選手たちの声はどうなのか。日刊紙『スポーツソウル』によれば、導入当初は「投手が不利になるのではないか」という現場からの声も少なくなかったという。当時の球界の雰囲気については「適応過程でかなりの混乱が見られた。違反も散見され、ピッチクロックが起因する問題が生まれる場面も少なくなかった」とも伝えている。

 しかし、「(選手たちは)特に問題なく適応している」と球界全体の現況を伝えた同紙は、ロッテ・ジャイアンツに所属する投手であるユン・ソンビンのコメントを紹介している。

「とくに問題ない。そもそも昨年にピッチクロックの導入を聞いた時から、自分はボールを受け取ったら他のことをせず、素早く投げる練習をしてきた。だから、時間が短縮されても2秒くらいなら慣れている。他の選手たちも適応に問題はないみたいだ」

 あくまで競技面において不安はないという。彼らの意見は、NPBで導入していく上で、貴重なサンプルとなりそうだ。

 競技面、興行面、試合運用などあらゆる影響を考え、慎重にルール変更の検討を重ねているNPB。WBCでの“失敗”と世界に目を向ける選手たちの声は、それを大きく前進させるファクターとも言えそうだが、はたして――。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]