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大学進学のために借りた奨学金。手取り19万円のなかから毎月やりくりして返済していたものの、ある月の「うっかり残高不足」による引き落とし不能から油断が生じ、数ヵ月放置してしまったSさん(23歳)。見知らぬ番号からの着信も無視し続けていた結果、新しいクレジットカードの申し込みで「審査落ち」に。軽い気持ちで奨学金の返済を放置したことで、社会的信用にキズをつけていた可能性に気づき、後悔する20代男性の事例を紹介します。

奨学金の引き落とし不能から生じた油断

「最初は本当にうっかりしていて、引き落とし口座にお金を移し忘れてしまったんです。でも、ハガキや電話での催促もなかったので、つい甘く考えてしまいました」

都内の中小企業で働くSさん(仮名・23歳)は、大学時代に借りた奨学金約300万円の返済に頭を悩ませていました。Sさんの毎月の手取り額は約19万円。そこから家賃や光熱費、食費を差し引くと手元にはほとんどお金が残りません。そこに毎月約1万5,000円の奨学金返済がのしかかります。

何とかやりくりして口座にお金を入れていましたが、友人の結婚式や急な出費が重なったある月、奨学金の引き落とし口座が残高不足になってしまいました。

「やってしまった、と思いましたが、翌月も生活はカツカツでした。先月引き落とされなくてもすぐには何もいわれなかったから、今月も少し待ってもらえるだろうという油断があったんだと思います」

クレジットカードの審査落ちで気づいた「もしかして…」

そうこうしているうちに、Sさんのスマートフォンには見知らぬ番号からの着信が頻繁に入るようになりました。仕事中で出られなかったり、知らない番号だからと後回しにしたりしているうちに、気づけば最初の引き落とし不能から3ヵ月が経過していました。

そんなある日、Sさんは交際中の女性との旅行を計画し、旅行保険などが充実している新しいクレジットカードを作ろうとネットから申し込みをしました。これまでカードの支払いを遅らせたことは一度もなかったため、審査など気にも留めていませんでした。

しかし数日後、カード会社から届いたのは「今回はご希望に沿いかねます」という審査落ちの通知でした。

「どうして落とされたのかまったく理由がわからなくて。焦ってネットで調べていくと、『奨学金の滞納によるブラックリスト入り』という言葉を見つけました」

Sさんが後回しにし続けていた見知らぬ着信は、奨学金の回収を委託された債権回収会社からの電話でした。そして、奨学金を3ヵ月以上滞納したことで、自分の信用情報にキズがつき、いわゆる「ブラックリスト」状態になっているのではないかと疑い始めました。

「通知があったわけではありませんが、カードの審査に落ちた理由はこれ以外に考えられません。滞納分は親に泣きついて何とか払いましたが、一度ついた信用情報の記録は数年間消えないとネットに書いてありました。この先、結婚して家を買おうと思っても住宅ローンすら組めないかもしれない。自分の甘さが本当に情けないです」

ただの学生時代の借金だと軽く考えていたSさん。その代償は、想像以上に重いものとなって将来に影響を及ぼします。

奨学金延滞の背景にある「若年層の生活苦」

日本学生支援機構(JASSO)の最新のデータによれば、奨学金の返還を3ヵ月以上延滞している人の割合は一定数存在します。その最大の理由は「本人の低所得(62.8%)」で、次いで「本人の借入金(日本学生支援機構奨学金以外)の返済(34.5%)」となっています。

物価や社会保険料は上昇を続けています。手取り19万円の若手社員にとって、毎月1万5,000円前後の固定支出は家計の大きな負担となります。Sさんのように、悪意なく「お金が足りない」という理由から引き落としができず、そのままズルズルと滞納してしまうケースは十分に考えられるでしょう。

しかし、奨学金は金融機関のローンと同じ扱いです。3ヵ月以上の滞納が続くと個人信用情報機関に登録され、クレジットカードの新規発行や住宅ローン、マイカーローンの審査に通らなくなるリスクが高まります。将来のライフイベントに悪影響を及ぼしかねないので、「数ヵ月なら大丈夫だろう」という自己判断は危険です。

もし経済的に返還が難しくなった場合は、放置せずに機構の窓口へ相談しましょう。一定の収入基準を下回っていれば、最長で通算10年まで返還を待ってもらえる「返還期限猶予」などの救済制度が用意されています。電話を無視して事態を悪化させる前に、自ら制度を利用して身を守る行動が求められます。

[参考資料]

日本学生支援機構(JASSO)「令和6年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」

日本学生支援機構(JASSO)「奨学金事業に関するデータ集」