Appleの新作ディスプレイ「Studio Display XDR」、どこが良くて、どこが微妙なのか解説するよ
スピーカーの音が何気にめっちゃいいですね。
Appleが先日、新しいディスプレイを発表しました。「Studio Display」と「Studio Display XDR」の2モデルで、ともに画面サイズは27インチ。
目玉はStudio Display XDRです。Appleの従来のプロ向けディスプレイだったPro Display XDRを置き換える形で登場し、120Hzのリフレッシュレートに対応。価格は約73万円が約55万円に(Pro Display XDRは32インチの6Kで、サイズも解像度もかなりちがいますけどね)。
少なくともAppleのプロ向けディスプレイとしては、価格はかなり手が届きやすくなりました。いま買える据え置きディスプレイの中でも、本格的な選択肢だと言えるでしょう。
以下、どんな製品かを解説しつつ、試用しての評価や印象をまとめます。
総評
Studio Display XDRは、Pro Display XDRをより安く、より小さくした選択肢として魅力的です。
長所短所2022年のStudio Displayから大きく進化左右に向きを変える機能がないコントラストに優れ、明るいベゼルが太いスピーカーの音が豊かで大きく、躍動感があるひそかにA19 Proチップを積んでるのにmacOSは動かないPro Display XDRよりはかなり安い根本的に高い(XDR版は通常モデルのほぼ2倍)Appleの価格設定は相変わらずわかりにくいです。
新しい通常版Studio Displayは26万9,800円からで、AppleのNano-textureガラスを追加すると31万9,800円になります。このオプションは映り込みや反射を抑えるのに役立ちますが、その代わり明るさや色の鮮やかさが少し犠牲になりがち。
傾きと高さを調整できるスタンドが欲しければ、通常版Studio Displayではさらに7万円必要です。
一方、Studio Display XDRは54万9,800円からで、Nano-textureガラス付きだと59万9,800円になります。こちらには傾きと高さを調整できるスタンドが付属します。また、このディスプレイの性能をきちんと引き出せるMacも必要です。
結局のところ、この美しくてプロ向けのディスプレイを使うには、かなりの出費が必要です。
新しいStudio Displayの特徴
AppleのStudio Displayは高級ディスプレイという位置づけです。価格もデザインもプレミアム路線です。
自由に使いたいならスタンドではなくVESAマウントアダプタ
いちばん気になったのは、どちらのStudio Displayにも左右に向きを振れるスタンドがないことです。画面の向きを変えたければ、本体ごと手で回すしかありません。
傾きと高さを調整できるスタンドを選べますが、上下に動かせる幅はそれほど大きくなく、わずか105mm、4インチ強ほどです。
もっと自由に設置したいなら、追加料金なしでVESAマウントアダプタを選ぶことになります。モニターアームなどを使ったほうが都合のいいデスク環境なら、そのほうが向いているでしょう。
スタンドを選ぶと設置は超カンタンこの内蔵スタンドのおかげで、箱から出して設置する作業はとても簡単です。本体を段ボールから引き出して、机に置いて、つなぐだけで済みます。
高機能なビデオ通話用カメラが内蔵されている
ベゼルは厚めでガラス感が強いですが、1200万画素のカメラが内蔵されており、ビデオ通話がしやすくなっています。センターフレームとデスクビューに対応しています。前者はFaceTimeやZoomの通話中に自分の顔が常に中央に来るようにしてくれる機能で、後者は手元の机の上を真上から見たように映してくれる機能です。
USB-CでつないだMacを高速充電。「HDMIポートがない」のには注意
分厚くて重いディスプレイをくるりと回してみると、HDMIポートは見当たらず、あるのはUSB-Cだけ。
つまり、Switch 2やPS5のように映像出力にHDMIを使う機器をつなぐには、アダプタが必要になります。
Studio DisplayとStudio Display XDRは、どちらもThunderbolt 5を2基、USB-Cを2基備えています。付属のUSB-Cケーブルでは、Studio DisplayはThunderbolt 5経由で最大96W、Studio Display XDRは最大140WでMacBookを充電できます。
AppleのディスプレイはMacのエコシステムの中ではよくできていますが、その外に出ると物足りない部分があります。そこは今回も変わっていません。Studio Display XDRは、Apple中心のデスクトップやノートPC環境をそのまま広げたような存在に感じられます。
高価なXDR版の強みは「よりなめらかで美しい」こと
最大120Hzの可変リフレッシュレートに対応し画面の動きが従来よりなめらかになのは、XDR版だけ。しかも、それを活かすには、高解像度で60Hzを超える外部ディスプレイ出力に対応した新しめのMacが必要です。
たとえば、M2 MacBook Airは外部ディスプレイ1台に60Hzでしか出力できません。廉価なMacBook NeoでもStudio Displayは使えますが、使えるのは4K解像度の60Hzまでで、5Kかつ120Hzのフル性能は引き出せません。
新しいM5 MacBook Airや最近のMacBook Proであれば、5K解像度で120Hz出力が可能です。
ってか、XDRって何なの?
念のため説明しておくと、Appleの「XDR」は「extreme dynamic range」の略。要するに、明るい部分と暗い部分をよりはっきり描き分けられるパネルを使っているということです。AppleはXDRを、ほかのIPS液晶よりHDRコンテンツに向いたmini LEDパネルの呼び名として使っています。
Studio Display XDRは、左右や下からほぼ90度近い角度で見ても画質が落ちにくいとうたっています。実際に試してみると、70度から80度くらいの位置に立ったときでも、わずかに白っぽくにごる気配が見える程度でした。
mini LEDは、液晶に近いパネルの下へ小さなバックライトを大量に敷き詰める方式です。そのおかげで、明るさや画質をより細かく制御できます。具体的には、Studio Display XDRでは画面の明るさを細かく分けて制御するエリアが2,304あります。以前のPro Display XDRは576のフルアレイディミングゾーンでした。どちらも画素密度は218ppiで同じですが、27インチと小さいぶん、Studio Display XDRのほうがわずかにシャープに見えます。
明るさや色味が重要な作業に向くmini LEDは明るさの面でも有利です。Studio Display XDRは、HDRコンテンツではピーク輝度2,000ニト、SDRでは1,000ニトをうたっています。XDRではない新しいStudio Displayは600ニトまでで、これは2022年モデルと同じです。
XDRモデルは、広色域(P3)とAdobe RGBの両方にも対応しています。つまり、色を重視する作業でも、より狙いどおりに表示しやすくなっています。
せっかくの「iPhoneと同じチップ」は有効活用して欲しかった
Appleがあまり表に出していないこととして、Studio Display XDRの中にiPhone 17 Proと同系統のA19 Proチップが入っていることが挙げられます。12GBのユニファイドメモリと128GBのストレージまで備えています。通常版Studio Displayにも、A19チップが入っています。
こういった内蔵チップは、ファームウェア更新や内蔵ウェブカメラの管理に使われています。少しぜいたくすぎる構成にも思えますが、Studio Display XDRという製品自体がそういう方向性です。
ただ、「いっそiMacにしてもよかったのでは?」と思ってしまいます。MacBook Neoの、より非力なA18 Proチップでも十分やれるとわかった今、少なくともXDRモデルくらいはmacOSが動いてもよかったのではないでしょうか。そうであれば、強烈な価格にも少しは納得しやすかったはずです。
旧Studio Displayより画質は上
2022年の旧Studio Displayと新しいStudio Display XDRの差は、ぱっと見では劇的ではありません。ただ、画質にうるさい人なら気づくようなちがいはしっかりあります。
旧モデルを新モデルの隣に並べて、広色域(P3)の4K動画でいくつか比較してみました。影のコントラスト差はごくわずかですが、黒の沈み込みはStudio Display XDRのmini LEDのほうが明らかに優秀です。明るい部分と暗い部分の境目に出る光のにじみ、いわゆるハローも少なく感じました。
いちばん大きなちがいは、HDRコンテンツの見え方です。雪をかぶった山や、浜辺に打ち寄せる波の白い飛沫のような映像では、Studio Display XDRの白の表現力の高さがよりはっきりと見てとれました。
ほかの4K映像でも、はっきりとしたちがいが確認できました。ドラマ『Pluribus』を見ていたときには、俳優の肌が不自然に赤く見える場面がいくつかあり、それがStudio Display XDRのmini LEDパネルではかなり抑えられていました。旧Studio Displayだとハイライトが白飛びするような場面でも、Studio Display XDRはずっと多くの情報を見せてくれました。
そうした細かな差が、映像の見え方を大きく変えます。映画『F1』で画面に出る「Lap 20」という文字を見れば、Studio Display XDRのほうが白がきれいに立って見えました。
製作向けのディスプレイとしてはどうでしょうか? Studio Display XDRはこの観点でも、旧Studio Displayより優れていると感じられました。
ただし、もっと安く、有機ELパネルを採用したディスプレイがほかにあることは頭に入れておくべきです。有機ELはバックライトを使わず、画素自体が発光するので、ほぼ無限に近いコントラストを出せます。
AppleがいまPro Display XDRをいったん脇に置いているのは、Studio Display XDRで十分だと考えているのか、それとも有機ELを新しいMacBook Proのために温存しているのかのどちらかでしょう。AppleがいつかPro Display XDRを有機EL化するとしても、まだしばらく待つことになりそうです。
ディスプレイとは思えない音のよさ
Studio Display XDRの6スピーカーシステムの音は本当に見事です。スピーカーに加えて、4つのフォースキャンセリングウーファーと2つのツイーターが詰め込まれています。高品質なサウンドバーやサラウンド環境には及ばないとしても、思ったよりかなり近いところまで来ています。
旧Studio Displayと新しいStudio Display XDRの音の差は、切り替えて聴き比べた瞬間にはっきりわかります。旧モデルも新モデルも空間オーディオとドルビーアトモスに対応していますが、低音が30%強化されているのは新モデルだけです。
Apple Musicでいつも聴く曲を流してみると、Studio Display XDRは音量を上げたときに部屋全体をしっかり満たせるだけの力がありました。それでいて、音の輪郭は崩れず、特に中域がきれいに出ています。
この価格帯なら、音響システムは良い画面に添えられたおまけとして片づけるべきではありません。むしろ、この2モデルを検討する大きな理由のひとつです。
(デスクで作業する映像編集者なら、クリップの音を合わせるときに、まともなヘッドホン以外を使う人はほとんどいないでしょうが)
いいんだけど、Apple好きでも高い
大半の人には通常のStudio Displayで十分でしょう。正直、Appleが仕事向けに用意する最も明るいディスプレイがどうしても必要でない限り、多くのクリエイターは今の環境のままでも問題ないはずです。
もしすでに、複数の5Kディスプレイを扱える高価なMacBookを所有しているなら、価格はもはや気にならないのかもしれません。Studio Display XDRは名前こそ「Pro」ではありませんが、HDMIを直接つなげないことを除けば、求めることはほぼ何でもこなしてくれるプロ志向のディスプレイです。このディスプレイにはオールインワンコンピュータになるために必要なものがほとんどそろっています。
ないのはOSだけ、“iMac XDR”であってもよかった気はするでしょうか。
