最上位機種は約40万円!再ブーム中のSONY「ウォークマン」が示す、携帯音楽プレイヤーの「知られざる現在地」

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近年、SONYの「ウォークマン」がTikTokなどをきっかけに再ブームとなっている。

かつてiPodに代表された携帯型のデジタルオーディオプレイヤー(以下「DAP」)は、スマートフォンの登場によってすっかり主流の座を明け渡した。

それがなぜ今、このタイミングで再び注目を集めているのか?よくよく観察すると、そこには需要が生まれるたしかな理由が存在していた。

フラッグシップモデルは約40万円!

ウォークマンはSONYの商標製品だ。1980年生まれの筆者の世代にとっては、カセットテープをカシャっと入れて持ち歩くイメージが強いが、現代ではiPodのような携帯音楽プレイヤーを指す。今や、音楽はカセットテープではなくデータとして持ち歩く時代になった。

ウォークマンが再注目されている背景のひとつには、近年のレトロブームがある。カセットテープを再生する往年の機種が高値で取引されており、1980〜1990年代に発売されたウォークマンやディスクマンは、ある業者では数千〜数万円(古い機種ほど高額)で買い取られている。付きなどの完品であれば10万円を超えるものもあるという。もし、過去に持っていた心当たりがあるなら、自宅の物置を探してみるのもちょっとした宝探し気分で楽しいかもしれない。

ちなみに、ここ最近のウォークマンはというと高音質化が著しく進んでいる。オーディオ界隈でいうところの「ハイエンド」の領域に踏み込んでおり、音質の良さもさることながら、その価格も半端ではない。

SONYのウォークマンのラインナップを見ると、2万円未満のかわいらしい値段のモデルもあるが、ハイレゾ対応は4万6000円から始まり、9万4000円、16万5000円と続く。そして2022年に発売されて大いに注目を集め、かつファンを興奮させた「NW-WM1ZM2」という現行の最上位機種は、なんと38万5000円である(全てソニーストア価格)。

「ふつうに音楽を聴きたい」「音楽が再生できれば十分」と考えるライトユーザーには信じられない値段と思われるだろうが、ハイエンドオーディオとはそういう世界だ。

SONY以外のハイエンドDAPの製品でも10万円超えは珍しくなく、70万円近いものまで存在する。そう考えると38万5000円でも比較的リーズナブルに思えてくるから不思議なもので、それもまたハイエンドの世界の醍醐味といえるだろう。

奥深いハイエンドオーディオの世界

これは余談ではあるが、昨年10月に開催された、世界のハイエンドオーディオが国際フォーラムに集まる「東京インターナショナルオーディオショウ2025」というイベントに、2億円のスピーカーというのが登場して会場の話題をさらった。

筆者もそのスピーカーを実際に見てきたが、“2億円”を意識するあまり何だか萎縮してしまい、「大きいスピーカーだなあ」(組み立てに8時間かかったらしい)という幼稚な感想を持つので精一杯だった。

で、その会場には他にも何百万円のスピーカーやらアンプやら、1000万円を超すレコードプレーヤーやらが並んでいるわけだが、2億円と比べるとそれらがずいぶん安く思えてきて、この金銭感覚のバグは多くの参加者に共通する傾向のようだった。

つまり人の感覚というのはとても相対的なもので、価格差の激しいハイエンドオーディオの世界なんかはそれが顕著に表れるということであろう。

携帯オーディオ市場の現行王者はSONY

閑話休題、DAPの話である。2000年代にはApple社の「iPod」が一世を風靡して、世界市場を完全に席巻した。

家電流通の情報を発信するメディア「BCN+R」によると、当時の国内携帯オーディオ市場はAppleとソニーの2強が独走状態にあった。ただし両者の差は大きく、販売台数シェア50%前後を誇るAppleに対し、SONYのシェアはそれを25〜30ポイント下回る状況が数年にわたって続いていた。

その後、徐々にシェアを回復したウォークマンは、2010年8月についに8年間トップに君臨したAppleを月間販売シェアで逆転し、1位を奪取。その後は抜きつ抜かれつの激しい争いを経て、SONYが王者の座を確固たるものとしていく。

スマホの登場でDAPは求められなくなった

ところが、2010年代に入ると音楽を携帯するライフスタイルはそのままに、世間はDAPをあまり必要としなくなった。スマートフォンが普及したからである。よろずになんでもこなせるスマホが、DAPの役割も担うようになったのだ。

スマホの登場で市場規模がどのように変質したか、いくつかの統計を組み合わせながら具体的な数字で見てみよう。

MP3プレイヤーのブームが起きたのは2000年代初頭のことである。初代iPodが出たのが2001年で、ポータブルメディアプレーヤーの出荷台数は2003年の1700万台から2006年には1億8140万台へと急増した。

ところが、2007年に初代iPhoneが発表されると爆発的な人気を得た。その影響でDAPの出荷台数は2010年に6900万台にまで落ち込み、2024年にはついに850万台にまで縮小した。iPodは、Appleの自社製品であるiPhoneやiPadと機能が被るところもあって、2022年に生産終了となっている。

ニッチな市場をモノにしたSONY

もともとiPodは「お手頃価格で気軽に音楽を持ち歩く」大衆向け、ウォークマンは「より良い音質で豊かな音楽体験を」という好事家向けという棲み分けがあった。

大衆がスマートフォンに流れたことでDAP市場はよりニッチなものとなったが、それはAppleが狙いたい市場ではなく、むしろSONYの土俵だった。こうした市場の大転換後に国内シェアNo.1の座を手にできたのは、音質の良さを追求するSONYの企業努力の賜物といえよう。

たとえば「Bluetooth」というのは基本的に音質がそこまでよくないのだが、SONYが独自に開発したLDACという技術は、簡単にいうとハイレゾに相当する超高音質を実現するBluetoothコーデックである。

また、DAPに4.4mmバランス端子を積極採用するなど、「良い音でのリスニング体験」を一貫して追い求めるぶれない姿勢が、いまやブランド価値そのものとなり、ユーザーからの熱い支持を受けるに至っている。

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【つづきを読む】『スマホ時代になぜ「40万円のウォークマン」が売れるのか?iPod時代を超えて、携帯音楽プレイヤーが生き続けるワケ』

【つづきを読む】スマホ時代になぜ「40万円のウォークマン」が売れるのか?iPodが消えた後も携帯音楽プレイヤーが生き残るワケ