『未来のムスコ』©TBSスパークル/TBS

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「俺、本名はマコトなんです。真(シン)って書いて、マコト」

参考:『再会』『未来のムスコ』『ラムネモンキー』 冬ドラマになぜ「男3人・女1人」が多い?

 現在放送中の『未来のムスコ』(TBS系)で、2036年からやってきたという未来(志田未来)の息子の颯太(天野優)は、自分のパパは“まーくん”だと言っていた。未来と同じ劇団に所属する矢野真は、未来への好意を隠しておらず“恋人候補”ではあったが、周りから「シン」と呼ばれていたため、“まーくん候補”としては可能性が低かった。しかし、名前が「マコト」、しかも母親から「まーくん」と呼ばれているならば話は変わってくる。

 そうして一気に“まーくん候補”最有力となった真を演じているのが兵頭功海である。

 2019年に望月歩主演映画『五億円のじんせい』で俳優デビューを果たした兵頭は、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019年/テレビ朝日系)でカナロ/リュウソウゴールド役としてテレビドラマに初出演。だが、彼の名を一躍世に知らしめたのは、鈴木亮平主演の日曜劇場『下剋上球児』(2023年/TBS系)で演じたピッチャー・根室知廣役だろう。

 根室は、ちょっと気が弱く、ピッチャーとしてより注目度が高いエースの犬塚(中沢元紀)の陰に隠れてしまうような存在だった。さらに、2時間かけてフェリーと電車で通学していたり、硬式グローブを買うことができずに南雲(鈴木亮平)にプレゼントされるまで小中学生時代の軟式グローブを使用していたりと、周囲と比べてあまり環境にも恵まれていなかった。だが、真摯に野球に向き合い、サイドスローから長身を活かしたオーバースローに投法を変え、犬塚と並ぶピッチャーに成長した。

 努力家でひたむきな根室の性格と同じく、兵頭の演技には、観る者の心を突き動かす“まっすぐさ”がある。それは、演技に対して兵頭が真正面から向き合っている証拠でもあり、『下剋上球児』のクランクアップコメントでは、撮了したにもかかわらず「悔しい」と語り、その後のインタビューで、「お芝居でも『もっとこうできたんじゃないかな』と思うことがたくさんあって、それが最後のワンカットまで続いていた」「まだまだやれるなと思いました」とコメントの真意を語っている。(※)

 その言葉通り、さまざまな作品に出演するたびに新たな顔を見せてくれるのが現在の兵頭だ。『9ボーダー』(2024年/TBS系)で演じた立花祐輔は、大手商社に勤めるエリートで、マッチングアプリを使って19歳の八海(畑芽育)と出会う。立花はシンガポールに赴任が決まったこともあり、会って3回目、“交際0日”の状態で八海にプロポーズして、彼女を翻弄し、“まっすぐさ”ゆえの大胆さを見せて視聴者を驚かせた。ちなみに『9ボーダー』のプロデューサーは『下剋上球児』でもプロデュースを担当した新井順子。兵頭の存在感が新井の目に留まったからこその再抜擢なのだろう。

 『未来のムスコ』では、稽古場で2人きりになった未来に真が「俺、未来さんが好きです」とストレートに告白。これまでも温かく見守って支えてくれた真にこうして気持ちを打ち明けられて、心が揺さぶられないはずがなく、未来は告白を受け入れた。兵頭の“まっすぐ”な演技が光る場面だが、実は真は父親と複雑な関係にあり、颯太と関わることで次第にその心の傷が明らかになってくる。真が周りに見せないようにしていた繊細さを、兵頭は切ない表情で表現し、俳優として演技の幅を確かに広げていることを感じさせた。

 未来の元カレの将生(塩野瑛久)や甘酸っぱい初恋の優太(小瀧望)は、未来と過去に関わりがあったために、なかなか今の関係を進展させられない。今、“THE 恋愛ドラマ”といえる甘い雰囲気を出せるのは未来と恋人関係になった真だけだ。『下剋上球児』から3年。本作は、兵頭の新たな魅力を堪能できる作品となっていると言っても過言ではないだろう。

参照※ https://realsound.jp/movie/2023/12/post-1535470.html

(文=久保田ひかる)