今や“親が黙認”することも…卒業シーズンに「制服」を売る女子高生が減らない理由 「売ったお金で卒業旅行に行けるならいいんじゃない?」
2月後半から、徐々に高校の卒業式シーズンが到来する。そんな時期にSNSやフリマサイトで密かに売買のピークを迎えるのが、“女子生徒”たちが高校3年間で使用した制服や上履き、体操着などである。
女子生徒が着古した制服は、有名ブランド校によっては一式10万円以上で売れることも珍しくなく、履き古してボロボロになった上履きもマニアに高値で売れるという。いったいどのような人が購入し、いくらで取り引きがなされているのか。知られざる制服売買の世界を取材した。【文・取材=宮原多可志】
卒業シーズンが近づくと問い合わせが殺到
現在20歳になる女子大学生Dさんは、都内のとある有名高校の出身である。制服は非常にかわいらしく、マニアの間で人気が高いことは、学生の間でもよく知られていたという。そのため、DさんのInstagramには「制服を売っていただけませんか」というメッセージが合計20件以上届いたと話す。

「私の高校はデザインがかわいいことで全国的にも有名な制服でした。私も制服目当てで入学したのですが、3年生の秋ごろになると、Instagramに“卒業式が終わったら制服を売ってください”とか、“今から不要になった制服の買い取りを予約できませんか”と問い合わせがじわじわ来るようになったんです。
そして、2月になるとさらに何件も届くようになりました。友達のもとにも届いていたらしいです。画像や経歴もフォロワー以外には非公開にしているし、なぜ? と思ったのですが、どうやらフォロワーをたどって、私がこの高校の生徒だと特定したようです。なかには中国人と思わしき人もいて、率直に凄いなと思ってしまいましたが……」
ちなみに、Dさんは制服を「卒業後にどうせ捨てるつもりだったから」という理由で、もっとも高い金額を提示してくれた人に売却した。金額は15万円。フリマサイト経由だったので手数料も引かれたというが、「卒業旅行の資金になったし、特にその後にしつこい問い合わせもなかった」ため、「変な目的に使われているかもしれないけれど、特に気にしていない」という。
フリマサイトでは出品禁止のはずだが
フリマサイトによっては、制服の出品を原則として禁止しているケースがある。Dさんが利用したサイトも本来は禁止しているはずなのだが、どうやって取り引きしたのだろうか。
「購入希望者から具体的に指示があったのですが、“洋服セット”のような名称にして、制服と関係ない画像を載せればバレないのだそうです。実際、そうやってみたら問題なく取り引きできました。学校名や画像を載せれば、サイト側がパトロールしているのでバレてしまうそうなんですが……」
実際にフリマサイトを見てみると、そういった取り引きをした形跡のあるページがいくつか見つかった。また、中古商品ではなく、あくまでも“新品”の制服で“コスプレ衣装”という扱いにすれば、チェックの網をかいくぐることができるのだという。
ちなみに、不要になった制服を販売すること自体は、罪に当たる行為ではない。おさがりなどの文化も昔からあるし、純粋にそういった目的で販売している人もいる。一部のサイトが規制を行う一方で、問題なく売買が行えるサイトもある。いくらでも抜け道はあるということなのだろう。
親が制服の売却を容認してしまう
女子生徒の制服や上履き、靴下などを売買する行為は、かつては“ブルセラ”などと呼ばれてPTAなどからも嫌厭されていた。ブルセラとは、ブルマとセーラー服を合わせた造語であり、使用済みのパンツを売って荒稼ぎする女子生徒も現れ、1980〜90年代には社会問題化した。
ところが、近年は女子生徒の親にも変化が見られるようだ。制服を売ることに対して「別にいいんじゃない?」と、寛容になっているのだという。前出のDさんも、親に一度相談したというが、止められなかったと話す。
「私の友人も制服を売ってしまったのですが、親は黙認だったそうです。そもそも、制服が高く売れるのは親の間でも常識みたい。私の場合も、親から“売ったお金で卒業旅行に行けるなら、いいじゃん”とか、“買ったときの値段よりも高く売れちゃうのね”と言われました。親に危機感がなくて、私の方がびっくりしたほどです」
10代の少女たちの親にあたる世代は、バブル期の影響もあって制服がかなりの高額で販売できたという。「いまマニアの間で10万円で売れる制服が、90年代なら20万円以上で取り引きされたと思います」と話すのは、制服マニア歴30年というコレクターである。
そういった時代を経験している親ほど、もしかすると制服を売ることにあまり抵抗がないのだろうか。もしくは、相変わらずの物価高の影響で、不用品の制服が少しでも金銭的な足しになればいい、という感覚もあったりするのかもしれない。
日本人は高額な制服を買えない
とはいえ、“客層”には変化がみられるようだ。かつてのようなブルセラ趣味の日本人は鳴りを潜め、買い手は中国を筆頭に、外国人が主体になっている。日本のアニメや漫画が海外でも人気になり、おしゃれな制服のデザインに注目が集まっているためだ。コスプレのような感覚で日本の制服を着用し、楽しんでいる外国人もいるという。
対する日本人は、いわゆる“無名校”にあたる数万円程度の制服をメインに買い求める人が多いといわれる。なかでも10万円以上する“名門校”や“ブランド校”の制服は「易々と手を出せない」傾向にあるようだと、前出のコレクターが話す。
「世間の人たちは制服好きというと、性的な目的で制服を買っているイメージを持つかもしれません。しかし、そのために、わざわざ制服に10万円出す人は極めて少ないと思います。性的な目的の人は女子高生を思い起こさせるものであれば何でもいいので、ごく一般的なデザインを採用する公立校の制服や、ディスカウントショップで売られているコスプレ用の制服でも十分なんですよ。
ところが、外国人は明確にデザイン目当てで買っています。バブル期は森英恵や山本寛斎がデザインした制服が全国各地で採用されましたが、今や不景気の影響で安価な制服にモデルチェンジしてしまいました。一方で、モデルチェンジをしていない学校の制服はブランド化しており、高値で取り引きされています」
なお、ボロボロになった上履きは日本人のマニアに人気なのだとか。1万円以下で“お手頃”なうえ、手軽に女子高生の“思い出”を感じ取ることができるためなのだという。購入者が上履きをどのように扱っているのかという具体的な話をここに書くことは控えておくが、少なくとも鑑賞して楽しんだりする目的ではないようである。
取材をしてみると、女子高生の愛用品の楽しみ方にもずいぶんと国民性というか、国ごとの明らかな格差が感じられる。こんなところからも、日本がどんどん貧しくなっている様子が見て取れるのが残念である。
デイリー新潮編集部
