これが墓場!? 多くのEVバスが並んでいる(撮影:加藤博人)

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EVMJバスが万博採用に内定したのは2021年

 大阪万博の会場輸送で使われたEVバス。

 このEVバスは「EVモーターズ・ジャパン(EVMJ)」が取り扱うものでしたが、2025年9月には多数の不具合により、国土交通省による異例の「全台点検」指示を受けました。

【画像】これが「バスの墓場」です。画像で見る!(30枚以上)

 そして大阪・森ノ宮に出現した、これらEVバス134台もの車両が雨ざらしになる「EVバスの墓場」も存在し、いま話題となっています。

「国産」をアピールして万博に採用され、全国の自治体へ導入が進んだこのEVバスですが、その実態は「製造経験の浅い中国メーカーによる激安部品の寄せ集め」だったという衝撃的な証言も出ています。

 なぜ、このような事態に陥ったのでしょうか。本記事では、頻発する事故やリコールの裏にある「国産偽装」の実態と、巨額の補助金が絡む採用のカラクリに迫ります。

 最近、ニュースなどで話題となっている「EVモーターズ・ジャパン(以下EVMJ)」は、大阪万博の開催が決定した後の2019年4月1日に福岡県北九州市に設立された売会社です。

 このEVMJは、中国の新興バスメーカー3社が製造したEVバス300台以上を納車してきました。

 ただし、これらのEVバスでは不具合が頻発し、ブレーキホースの損傷やブレーキチャンバーの脱落など重要保安部品による事故も発生しています。

 こうしたことをうけて、2025年9月3日、国交省はEVMJが輸入販売するEVバス300台以上に対して「全台点検」を指示。

 9月5日に行われた国土交通省の中野洋昌大臣会見では「EVモーターズ・ジャパンに対して、万博輸送に使用しているバス以外も含め、車両全般について総点検を至急実施するとともに、委託製造先の中国メーカーを含め、品質管理体制を見直すこと、そして総点検等の結果について速やかに国に報告することを指示したところです。今後とも、EVモーターズ・ジャパンの対応状況を確認しつつ、国土交通省としても必要な指導を行っていきたいと考えています」と発言。

 その後、11月28日には、EVMJはリコールを国交省からの指摘を受けて届出をしました。

 なお最近話題となっている大阪市森ノ宮に出現した「EVバスの墓場」は134台が保管されています。

 万博バス150台のうちほとんどが墓場に移動していますが、残りの数台は大阪府南河内地域での自動運転実証実験用にEVMJの北九州本社に送り返されて点検を受けている状況です。

 大阪府は万博レガシーとして点検で問題がなければ自動運転の実証実験に使用するとのことです。

 大阪メトロは万博関連の輸送に使うバスとして合計190台のEVバスをEVMJから購入しています。

 190台の内訳は以下の通りです。

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1.ウィズダム大型10.5m 115台 (会場と鉄道の駅を結ぶシャトルバスなどに使用)

2.ウィズダム小型6.99m 35台 (主に万博会場内を走る『e Mover』として使用)

3.愛中和E1乗合 40台(実際に稼働していたのは12-3台。あとは共食い整備や不具合で新車時からほぼ使用できず)
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 なお3.の愛中和に関しては「乗合」とは別に「路線」バス仕様を第一弾として2025年11月に新たに6台を納車予定でしたが、サスペンションナックルが破断するなどの信じられないトラブルによって大阪メトロは納車をキャンセルしています。

 このように様々なトラブルが出ているEVMJですが、同社が扱うEVバスが万博への採用に内定したのは2021年後半です。

 2020年11月にはマカオオートショーでウィズダム小型6.99mが日本で開催される万博用に採用されることが明らかになっていました。

 しかし、その時には内部関係者の間でもEVMJの名前は出ていませんでした。

 実は当時、大阪メトロの傘下にある大阪シティバスは万博に使用するEVバスとしてBYDを選定していました。

 しかし、それを大阪メトロに稟議を上げた際、担当役員たちから「EVモーターズ・ジャパンという会社のEVバスも検討してほしい」と言われ、結局BYDバスの使用は却下た経緯があるようです。

 他の中国メーカー、アルファバスや遠程汽車(Farizon Auto)にも話がありましたが「万博は国産EVバスで揃えるべき」という当時の西村康稔経産大臣の強い圧力のもと、『自称』国産のEVMJバスが採用されることになったのです。

 大阪万博での一社独占150台の採用が決まったこと、そして国内製造であるとことアピール材料にして、EVMJはどんどん新たな契約を全国の自治体やバス事業者と進めていきます。

 同時に自民党バス議連とのつながりが深い日本バス協会からも強力なバックアップを受けます。

 日本バス協会は国産EVバスを推進する立場で補助金増額の活動にも力を入れており、さらに協会長は伊予鉄グループのトップである元国交官僚清水一郎氏で同社はEVモーターズ・ジャパンの大株主でもあります。

 実際、伊予鉄ではこれまでに21台のEVMJバスを導入してきました。これは富士急グループ(24台)に次ぐ台数です。

 富士急や伊予鉄のほかにも、阪急バス、京福バス、京阪バス、大新東、根登山バス、東武バス、東急バス等の大手バス会社、川崎市交通局、名護市役所、鹿児島市役所、などの自治体がこぞってEVMJのバスを導入し、その台数は実質約2年で300台以上となります。

 なお日本における量産EVバスといえば、世界トップクラスのシェアと高品質を誇るBYDが2015年2月から京都の路線バス「プリンセスライン」に5台を納入したのが始まりでそれ以来、約10年間BYDは約500台を納めてきました。

 さらに、初の国産EVバスとして注目を集めているいすゞエルガEVは2024年5月の発売以来、2025年末までの納車台数は86台です。

 そもそも大型バスは短期間で作れるものではありません。では、EVMJは何故それが可能となってきたのでしょうか。

EVMJがわずか約2年で300台以上を納車できた理由は?

 EVMJのバスを作るのは中国ウィズダム(福建)、恒天、愛中和の3社です。

 いずれも中国国内で販売できるCCC認証は取得していないため、輸出用としてのみ中国当局から製造の許可が出ています。

 ウィズダム以外の2社はバスを作ったのは今回が初めてというメーカーです。

 EVMJからは激安で作るように指示されており、中国国内からできるだけ安い部品を寄せ集めて組み立てています。

 なお、EVMJは北九州に建設費100億円の巨大な工場を持っていますがその中では、1台も組み立ては行われていません。

 2022年頃のEVMJ社長インタビューでは、「2023年中には組み立てを開始する…」と話していましたが、これからもここでバスの組み立てが行われることはないと思われます。

 富士急や伊予鉄他、バス会社のリリースには「国内メーカーが開発・製造を行なう」と記されているのものもたくさんあります。

 EVMJは日本の企業であることは確かですが、「メーカー」ではありません。

 中国3社のバスをほぼそのままの状態で並行輸入して、工場内では運賃や行先表示などの簡単な架装だけを行っています。

大阪にあるEVバスの墓場と言われる場所

 短期間で大量のEVバスを輸入し、バス事業者へ納車できた理由を改めて整理します

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1.補助金込みの契約で間に合わなければ補填 

 BYDのような実績もないのに短期間で大量の受注を可能にしてきたのは、ほとんどの契約が補助金込みの契約だったからです。

 もし、納車が遅れて補助金申請に間に合わない場合はEVMJが補助金分を補填(バス会社に支払う)していました。

 実際に2024年3月には納車が遅れて補助金申請が間に合わなかった富士急静岡バスに対して観光庁補助金相当額2,585万円を支払っています。

2.自称国産アピール

 万博バスをはじめEVMJは3社のバスは国内で組み立てられているから国産だと主張してきました。

 営業トークにも盛んに使われており、これによって「EVMJのバスは国産」と現在も勘違いしているバス事業者やドライバーも少なからず存在します。

 EVMJ経営陣は「シャシだけは中国から輸入するがあとは高性能な日本製、欧州製部品を多用して北九州本社工場で組み立てる」と言っていましたが、シャシだけではなくほぼ100%中国メーカーから輸入しており使われている部品は中国国内からかき集めた激安部品が中心です。

3.検査もほとんどせず、即納車

 補助金申請の締め切りも関係していますが、ほとんどのEVMJバスは日本に到着してから安全性の確認や各種のテストを行わずにバス会社などに納車されてきました。

 中国メーカーが「仕上がりが6割程度だからお客さんに納めないで」と言っているのに無理やり納車した事例がたくさんあります。そのようなバスは実際に多くの不具合を出しています。
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 なお、EVMJのバスを「安かろう、悪かろう」という人もいますが実際、安くはありません。

 同じクラスのBYDやアジアスター、アルファバスと比べても1.5-2倍近い高額です。

 車両価格が高ければ補助金もそれに応じて高くなるため補助金額は他の高品質中国製バスにくらべて3-4倍にもなります。

 なお一例として、高額補助金の例を紹介しておきます。

 3300万円のバスが環境省+神奈川県補助金でわずか416万円+税金で購入できます。

 このバスは恒天製6.99mで、筑後市スクールバスとして2025年4月に4台が導入されましたがわずか2週間で100か所以上の不具合発生で使用中止となり、その後はディーゼルバスに戻っています。

 補助金は芙蓉オートリースが受け取っており、近々、環境省に返金を予定しています。