Jensen Huang © Fotofield

やっぱりそういう立ち位置なのね…。

AIブームで資産がたったの数年で1000億ドル(約15兆8700億円)近く増え、今や総資産1591億ドル(25兆円超)、押しも押されぬ世界第8位の富豪となったNVIDIA社ジェンスン・フアンCEOがポッドキャストの「No Priors」にゲスト出演。AI終末論にそっと苦言を呈していました。

AI終末論といえば「AIで仕事がなくなる」「監視社会になる」「なんでも完コピされる」「デマと事実の見分けがつかなくなる」「マインドコントロールされる」「AIが自立した意志をもって人類を滅ぼす」といったものがありますが、こういう論調が世にはびこることについて氏は「ぶっちゃけボロボロ。権威が唱える終末論のダメージは計り知れない」と言ってますよ。

AIを解き放つことに伴う人類滅亡のリスク。そんなのクヨクヨしても「なんの用にもならない。人の役にも立たないし、業界の役にも立たないし、社会の役にも立たないし、政府の役にも立たない」というんですね。

特に問題視しているのが、規制や安全対策の義務化を政府に働きかけている同業者のことで、「こういったナラティブ(論調。事実を捻じ曲げる意図が感じられるときに使われる)に触れたら話し手の狙いが何で、真意は何かを、聞き手自身が考えなければならない」とまで言ってます。

「スタートアップの首を絞めるような規制を定めるよう、わざわざ政府に働きかけるなんて、どうしてそんなことするんだろう」っていう気持ちはわかります。せっかく伸び盛りの新産業なのに、ここで規制のブレーキがかかったら元も子もないだろうってことですよね。

現にAI各社は余計な規制をしないよう政府に働きかけていて、莫大な投資を武器にロビー活動も活発だし(WSJによれば中間選挙のスーパーPAC[政治資金団体]にはすでにシリコンバレーから献金1億ドル[約160億円]以上が集まっている)、大型の公共事業も取り付け放題です。その根底にあるのは、政府規制当局や敵国・犯罪組織の手に渡るぐらいなら、AI企業側で全部コントロールしたほうが国民は安全だ、という考え。

氏は「見聞きするメッセージの90%が世界の終わりや悲観論だと、みんな怖くてAI投資どころじゃなくなってしまうだろうし、そうすればAIをもっと社会に役立つものにするための投資そのものが冷え切ってしまう」と心配しているみたいなんですね。

まあ、楽観論に転じればすべて解決というわけでもないのが難しいところ。AIのインフラにもっとお金を注ぎ込めばみな安全。そんな保証があるのなら、その根拠が知りたいのだけど、そういう具体論はなくて、ただモア・イズ・ベターの一点張り。これじゃあねぇ…と思ってしまいますけどね。

仕事がなくなるという社会不安についても解決策は示されていなかったし。AIがパワフルになって知的労働が不要になるのはもちろん、企業がAIに投資を回して新卒採用やめちゃう事例も急増中で、今の子はせっかく卒業しても就職口が全然なくて路頭に迷ってます。企業側もAI投資分の回収ができたかというと、それも怪しいところ。このままじゃ新人を育てる梯子のない社会になって、有能な子も裏社会に回っちゃいやしないかと心配。

ほかにもデマ、いじめ、メンタルヘルスの危機など問題は山積みだし、どれもAIで解決どころか悪化してたりします。あなたも私も、完ぺきな回答を導く過程で通るただのベータテスター、なんですかねぇ…。

唯一示されたソリューションは、投資と開発のスピードを上げていけば、いつかはスーパーインテリジェンスが生まれて、問題を全部解決してくれるというものであり、これを信じるのは疑うのと同じくらいリスキーな賭けです。CEOの言うように、終末論者の隠れた目的が社会のコントロールを奪うことだとするなら、CEO自身の真意はなんなのか。ちょっと考えてしまいました。

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