
記事のポイント ヴィクトリアズ・シークレットはショーを「終了」ではなく「進化」させる方向を選び、再出発を図っている。 新クリエイティブ・ディレクターのア
ダム・セルマンは、プロアスリートやミュージシャンの登場など、ポップカルチャーとの融合を推進している。 ブランドの復活には「
ファッションへの回帰」と「文化への再接続」が鍵になるとし、セルマンはブランドを再び時代の中心に戻す構想を描いている。
アダム・セルマンが4月にヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任してから、わずか1週間後のことだった。話題はすぐに核心に触れた――「ファッションショーをどうしたいか」。ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーは、長年にわたり文化的な一大イベントだった。しかしブランドがアイデンティティの危機に陥るなかで、そのショーがビジネス全体においてどのような役割を果たすのかは不明確なままだった。ブランドは2019年から年次ショーを休止し、再開したのは昨年のことだった。そのあいだ、ブルームバーグ(Bloomberg)の報道によれば、同社の取締役会ではショーを恒久的に中止する案も検討されたという。だが最終的に経営陣は、ショーを「やめる」のではなく「進化させる」道を選んだ。セルマンは、その方向性を考える時間を無駄にしなかった。「50年以上続くアメリカのヘリテージブランドとしての魅力を活かしながら、『ひとつのセクシー像』だけでなく、もっと幅広い感情を表現したいと思った」とセルマンは語る。10月15日に開催された「Victoria's Secret Fashion Show 2025」
新ディレクターが描く「再構築されたショー」
セルマンは、サベージ × フェンティ(Savage x Fenty)のチーフ・デザイン・オフィサーを務めた経歴を持ち、自身のブランド「アダム・セルマン・スポーツ(Adam Selman Sport)」の創業者でもある。ショーの企画を始めた当初、あえて過去のヴィクトリアズ・シークレットのショー映像を見ないようにしたという。まっさらな視点から始めたかったからだ。過去作品を参照したのは、最近になってからのことだった。それも新しい形がより先進的になるよう確認するために過ぎない。今回のショーでは、ブランド史上初めてプロのアスリートをランウェイに起用することだ。WNBAで人気の高い選手であるエンジェル・リースが、その出演を発表した。セルマンにとって、リースや、ミッシー・エリオットのようなミュージシャンを登場させ、ショーをポップカルチャーと融合させることは、最重要課題のひとつだった。ビジネスの回復と「文化への再接続」
ヴィクトリアズ・シークレットは下着カテゴリーでの市場シェアを一部失ってはいるものの、依然として支配的な存在である。直近の四半期決算では、売上がピーク期(2000年代)と比較して減少しているものの、一貫して予想を上回る売上を維持している。売上高は前年同期比3%増の15億ドル(約2250億円)だった。そして昨年のショーが確実に「効果をもたらした」とセルマンは見る。「昨年は4500万人が視聴した」と彼は語る。2024年版ショーには、モデルのタイラ・バンクスの復帰やミュージシャンのシェールの出演が話題を呼んだ。「今でも多くの人が昨年のショーについて語っている。巨大な波及効果だ」。ヴィクトリアズ・シークレットでの在任期間におけるセルマンのもうひとつの目標は、ヴィクトリアズ・シークレットをよりファッションの世界へと引き戻すことだという。「たとえばレッドカーペットで、ヴィクトリアズ・シークレットを取り入れたスタイリングを見たい」と語る。「ここには大きなチャンスがある。我々には1400以上の店舗があり、3秒に1つブラジャーが売れている。これほど大きなブランドなのだから、もっと積極的にカルチャーのなかに入り込むべきだと思っている」と同氏は締めくくった。[原文:Victoria’s Secret creative director Adam Selman on the evolution of the fashion show]Danny Parisi(翻訳・編集:戸田美子)Image via Victoria’s Secret