英語を上手に発音するにはどうすればいいか。語学コーチのタカサカモトさんは「たとえば“right now”の“t”は完全に発音せず、頭の中で『言ってるつもり』になるだけでネイティブには通じる。音の流れを意識して反復練習することが重要だ」という――。

※本稿は、タカサカモト『日本育ちが世界で戦うためのアスリート流英語習得術』(大和書房)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/undrey
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/undrey

■「w」が出てきたら口をすぼめる

一般に英語学習と言えば頭を使って行う勉強というイメージが強いかと思いますが、とくに発音に始まるアウトプットの練習に関しては、スポーツや楽器のような身体的なトレーニングだと理解しておくことが大切です。

つまり、徹底した反復と慣れが土台を作るということです。

最初はなかなかうまくいかず、できるようになるイメージも湧かないかもしれませんが、踏みとどまるメンタリティで何とか続けてみてください。

なかには比較的少ない反復回数でスムーズに身につけられる人もいますが、そこは周囲と比較せず、自分に必要な回数をしっかり練習すれば、必ず一定レベルには到達します。あとは、細部へのこだわりが差を生むというのもスポーツや楽器と同じです。一音一音の正確さや音のつながりに敏感になれる人は、やはりより高い精度で発音できるようになります。

せっかくなので1つ具体的な例文で解説しておきますね。今回は野球の文にしましょうか。

We need a double play right now.
ここはダブルプレーが必要だ。

まずは一度、自分なりに発音してみてください。日本語ネイティブが苦労しがちなLとRもしっかり入っていますが、スムーズに発音できたでしょうか。

この文の発音を順に見ていくと、まず大事なのはWeの「w」の音です。実は英語の「w」は一瞬でもいいから口をすぼめることで、ネイティブに「w」として認識されます。

なので、発音練習の段階で「w」が出てきたら、多少大げさでも口をすぼめる感覚を意識して発音します。

■needを「ニード」と発音してはいけない理由

続いてneedですが、日本育ちの学習者がまず意識すべきは決して「ニード」と言わないことです。これはネイティブの耳にはneedではなく、needoという別の綴りになるような音として聞こえます。日本語の音は原則として「あいうえお」の母音とセットで発音されるので、このneedのdのように子音だけで発音する音を練習することは非常に大切です。

もしヒューマンビートボックス(ボイスパーカッション)に興味のある人がいたら、英語を子音だけで発音する練習になるので意外とオススメです。(私もレッスンの一部として選手たちにやってもらうことがあります)

その後にはa double playのaが来ますが、このaは直前のneedとつながってneedaのような形で発音されます。なのでやはり、needを「ニード」と発音してしまうと音のつながりが阻害されてしまいます。またneedaのaも日本語の「あ」よりは弱くて曖昧な音なので、そこもしっかり意識して舌に覚えさせます。

■最初の関門は「bl」と「pl」の体得

そしてdouble playですが、ここはまず、あくまで「ダブルプレー」ではくdouble playであり、両者は発音上は別モノなのだということをしっかり心に刻んでください。

実際「ダブルプレー」とそのままカタカナで言っても、現地のネイティブ話者には伝わらない可能性が高いです。(日本在住が長い人なら分かってくれるかもしれませんが、それはむしろ相手の努力にあっぱれです)

発音のポイントとしてはdoubleのblとplayのplです。

両唇を使って出すbやpの音と、舌を前歯の裏に軽く当てて出すlの音を、いかに切れ目なく連続して出せるかどうかが勝負の分かれ目になります。これも、まずここだけを徹底してくり返すことで感覚をつかみます。

できるようになったら次の関門、double playのbl→plの接続です。まずはゆっくり丁寧に、それから徐々に自然な速度に近づけていきます。

これができたら、あとはdoubleをdouーbleのように分けて発音して確認したうえでdoubleとして完成させ、playも同じ要領でplとlayなどに分けて正確に言えるかチェックしたら完成です。

これでようやく見事なdouble playが成立するわけですが、油断してplayのayを「プレー」の「エー」のように発音したらエラーです。強いてカタカナで書くなら「エイ」に近い発音ですから、そこまでやり切るようにしてくださいね。

ちなみにこのdoubleのように語尾にくるl(le)の音は、カタカナを当てると「ル」ですが、ネイティブはもっと簡単に「ゥ」(小さいウ)に近い音で発音する傾向があります。

なのでやはり、カタカナにとらわれない発音を身につけることが大切です。

■“言ったつもり”があるだけで聞こえ方は変わる

あとは最後のright nowですね。LとRの区別は何だかんだ苦手な人が多いかと思いますが、今はYouTubeの動画やSNS上で様々なパターンの解説にアクセスできる時代なので、色々見比べて、自分にしっくりくる説明や練習方法でやってみればよいと思います。(一応私もYouTubeに解説を載せていますので、ご興味ある人はご活用ください)

ここもneedのdと同じで、rightのtを「ト」と言ってしまわないように注意してくださいね。

最後のnowは、それこそカタカナの「ナウ」の感じでそのままいける気になりがちですが、やはり英語での発音は微妙に違います。スマホで文を打ち込めばすぐに音声も確認できますので、nowの発音もちゃんと確認して、少しでも英語での言い方に合わせてみるようにしてください。

rightとnowがそれぞれ完成したら、これをつなげてright nowの練習です。ここでは先ほどせっかく練習して発音できるようになったrightのtを、逆にきれいに消す練習をする必要があります。「きれいに消す」というのは、まったく言わないということではありません。

私がレッスンで指導する際には、ちょっと妙な言い方ですが、tという文字の一画目の縦の棒みたいな部分だけ書いて、残りの横棒の部分は書かないような感じで発音する、という表現を使っています。言いかけて言わない感じといいますか、頭の中ではtを浮かべて「言ってるつもり」にはなった状態で、口には出しきらずに次のnowに行ってしまう感じです。

面白いもので、この「一応頭の中では意識して言ってる感じ」があるだけで、ちゃんとネイティブの人は聞き取ってくれます。

日本語で言えば、流れの中での「だから」が無意識に「だっ」だけで発音されがちなのと同じことですね。音としては明らかに省略されているのに、言った側も聞いた側も普通に「だから」として認識しています。

写真=iStock.com/RBFried
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RBFried

■発音のチェックにはスマホの音声認識を活用

というわけで、We need a double play right now.という、たった7単語の短い文1つの発音でも、ある程度細かく説明したら原稿用紙5枚分くらいの内容になるのです。最初は大体これくらいの細かさで練習してもらうと、長い目で見たときに遠くまでたどり着けます。「急がば回れ」の精神で、根気よく取り組んでいただけたら嬉しいです。

タカサカモト『日本育ちが世界で戦うためのアスリート流英語習得術』(大和書房)

慣れてくるとこの作業そのものにも最初ほど時間はかからなくなりますし、最終的に発音記号をマスターして書かれたとおりに発音できるようになってしまえば、この例文の発音は/wi nid ə ˈdʌbəl pleɪ raɪt naʊ/と書かれたものを確認するだけで一発です。

ロケットと一緒で、地上から宇宙に飛ばして軌道に乗せるまでが一番大変で準備も労力もエネルギーも必要ですが、軌道に乗せてしまえば、半ば自動操縦でやっていけるようになります。

自分の発音が合っているか確認する際には、スマホの音声認識機能などに聞かせて、言ったとおりの文がそのまま表示されればひとまず合格だと思ってください。

あるいは自分の発音や音読を録音して聞いてみると、課題を客観的に認識できます。いずれも人に聞いてもらうのと比べれば緊張しないと思いますので、対人だとシャイになってしまうという人にもオススメです。

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タカサカモト(たかさかもと)
語学コーチ・通訳・著作家
1985年鳥取市生まれ。東京大学文学部卒業。20代で英語・スペイン語・ポルトガル語を習得し、32歳でフットリンガルを創業。国際舞台に挑む日本人アスリートの語学習得や異文化適応をサポートするほか、海外アスリートの通訳なども務める。著書に『東大8年生 自分時間の歩き方』『PLMメソッド ファンを増やしてプロ野球の景色を変える!』(ともに徳間書店)。
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(語学コーチ・通訳・著作家 タカサカモト)