塩貝(左)と後藤(右)。2人の共存は可能なのか。写真:佐藤博之

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 ロス五輪世代の強化を目論み、20歳以下の選手で構成されたU-22日本代表がU-23アジアカップ予選を戦った。年上の相手に対し、大岩剛監督が率いるチームは、苦戦を強いられ試合もありながらも3連勝を達成。見事に首位で来年1月の本大会出場を手中に収めた。

 ほとんどの選手やスタッフが初めて訪れたミャンマーでの戦い。試合会場のピッチ状態は想像以上に悪く、練習場は照明もないような環境下で戦うことを余儀なくされた。そうした厳しい状況を受け入れ、自分たちのベストを尽くす。こうした経験は日常で味わえないものであり、選手たちを逞しくするうえでは大きな価値があった。

 特に今回は今年9月下旬からU-20ワールドカップが開催されるため、日程の関係で船越優蔵監督が率いるU-20日本代表で主力を担う選手たちは不参加。FW後藤啓介(シント=トロイデン)、FW塩貝健人(NEC)、MF保田堅心(ヘンク)、DF小杉啓太(ユールゴーデン)といった世代のトップを走る海外組と、経験値が浅い大学生やJクラブの若手をミックスしたメンバー構成で挑んでおり、経験値が浅い選手も少なくない。

 選手層の拡充を目ざす大岩ジャパンにとって、過酷な環境で戦えた体験は選手の成長を促すうえで必要不可欠なものだった。
 
 試合を振り返っても、簡単なゲームはひとつもなく、アジアの厳しさや難しさを知る機会になった。初戦こそアフガニスタンに3−0で快勝したが、2戦目と3戦目は苦戦。ホスト国でもあるミャンマーとの第2節(2−1)はアウェーの大声援とも戦ったが、守りを固めてくる相手を崩し切れなかった。終了間際にMF名和田我空(G大阪)のゴールで勝ち切ったものの、一歩間違えれば勝点を失っていても不思議ではない。

 引き分け以上で首位突破となる第3戦。クウェートに敗れれば、2位となって他グループの結果次第では敗退となるなか、開始10分でリードを許すなど、厳しい状況に追い込まれた。そこから6ゴールを奪って勝ち切ったが、この試合も一筋縄ではいかなかった。

 タフさが求められる環境下でいかに自分たちの力を発揮するか。食事や気候など普段とは異なれば、調整方法も変わってくる。常にベストな状態で戦えるわけではなく、普段通りの準備ができるわけでもない。その中で最適解を見出すことを知れたのは、ロス五輪世代の選手にとってプラスだった。
 
 そうした成果に加え、今予選におけるもうひとつの収穫がある。それが、後藤と塩貝というふたりのストライカーの共存方法だ。

 23人のメンバーが発表された時点で、両者とも本職のセンターフォワードで起用する構想でチームに呼んだと推察していた。その場合、4−3−3をメインで戦う大岩ジャパンでは共存ができない。しかし、指揮官は塩貝の右ウイング起用も想定してチームに招集。大岩監督もふたりの共闘について、初戦の試合後にこんなことを話していた。

「彼にも言っているけど、(前線であれば塩貝は)どこでもできる。我々のグループのタスクを理解したうえで守備のところも含めていろいろあるので。いろんなポジションができれば、より彼のポテンシャルを引き出してくれるはず。上のカテゴリーのチームに選ばれるポテンシャルはあるので(期待したい)」

 実際にふたりが同時にプレーしたアフガニスタン戦の68分以降、ミャンマー戦の試合開始から64分まで、クウェート戦の74分以降は後藤がセンターフォワードで、塩貝が右サイドでプレーした。
 
 ただ、塩貝が右サイドで良さが発揮できたわけではない。アフガニスタン戦は推進力を発揮し、重馬場のピッチを切り裂くように何度もボールを前に運んだ。オープンな展開となったことで背後のスペースがあり、裏を突く動きも効果的だった。

 しかし、2戦目以降は守りに比重を置いた相手と戦ったため、プレーが窮屈になるシーンが増加。2戦目は後藤が交代してからポジションを真ん中に移したが、周りとの呼吸が合わずに決定機を作れなかった。3戦目も持ち味を発揮できずに孤立。ウイングとしての役割を果たせなかった。

 しかし、大岩ジャパンは今回が初めて。すり合わせている段階であり、指揮官が求めるプレーモデルもまだ把握している最中だ。逆に塩貝が右サイドでも輝ける体制が整えば、ロス五輪世代の攻撃力は増す。そうした理想系を探るうえで、ミャンマーの地でトライができたのは収穫だった。

 7月下旬のウズベキスタン遠征を経て、今回のU-23アジアカップ予選で本格的に動き出した大岩ジャパン。伸びしろ十分の若き日本代表の戦いはまだ始まったばかりだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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