記事のポイント フラクショナル幹部の雇用がビューティ業界で急増し、柔軟性と専門性を両立させた働き方が広がっている。 企業は高額な報酬を払わずに一流人材の知見にアクセスでき、「試してから採用」する柔軟な選択肢も得ている。 SNS戦略やAI活用、ブランディング再構築など新領域でもフラクショナル人材の需要が高まりつつある。


経済の不確実性が続くなかで、ビューティとウェルネス業界では、フラクショナル雇用、つまり部分的な幹部の雇用がうまく機能しているようだ。

「ビューティ業界のエグゼクティブが持つスキルの多くは、プロジェクトベースの仕事に非常に適している」と語るのは、創業4年のハイブリッドコミュニティ兼エージェンシーであるザ・ボード(The Board)の創業者兼CEOを務めるエイプリル・ウチテル氏だ。同社は、厳選されたCレベルのフラクショナルなコンサルタントを250名以上抱えている。「フラクショナル雇用の根底にある考え方は、まさに『精密なフィット』(の人材起用)であり、私はこれを『適材適所、適時採用』と呼んでいる」と続ける。

コンサルタントや契約業務と呼ばれることもあるフラクショナル雇用は、それぞれの場合で異なるが、フラクショナル雇用のエグゼクティブの多くは1社で週10〜15時間程度を費やしている。複数の企業を掛け持ちして、週の勤務時間を分割しているエグゼクティブや、空いた時間を起業やMBA取得、家庭のコミットメントに充てている人もいる。ウチテル氏によると、契約期間は3カ月から1年が多く、6カ月がもっとも一般的だという。

「試してから採用」が可能な柔軟雇用



フラクショナル人材のなかには、契約期間終了後にフルタイムでの雇用をめざす人もいれば、契約業務ならではの柔軟な働きかたを好む人もいる。「フラクショナル雇用は、双方にとって『購入前に試す』的な手段にも、また企業のニーズを評価して、その人材がどれだけ貢献できるか、そして長期的な適合性があるかを見極める手段にもなる場合がある」と語るのは、プレミア・エグゼクティブ・リクルーティング(Premier Executive Recruiting)のプレジデントのデビー・ジョンソン氏だ。ロサンゼルスに拠点を置く同社は、オラプレックス(Olaplex)、エムコスメティクス(Em Cosmetics)、メイン(Mane)、ビューティカウンター(Beautycounter)と協働している。

Glossyの姉妹媒体であるWork Lifeによると、フラクショナル人材の数は2020年以降3分の1増加しており、フォーチュン500企業の約40%が現在、経営幹部や戦略的な役職にフラクショナル人材を採用しているという。企業がこの手法を採用する背景には、コスト削減というよりも、通常は特定の企業内に限られているような専門性や、高額な報酬ゆえに手が届かないような専門性にアクセスできるという利点がある。

業界全体に拡がるフラクショナル人材起用の波



ビューティ業界の経営層の目まぐるしい入れ替わりを目の当たりにしている業界関係者にとって、このトレンドはビューティ&ウェルネス業界に顕著であるように感じられる。その背景には、経済の不確実性に加え、エスティ ローダー カンパニーズ(Estée Lauder Companies)、コティ(Coty)、ユニリーバ(Unilever)、ロレアル(L’Oréal)といった大手コングロマリットでの大規模な人員削減も関与している。

「これまで経験したことのない失業という状態にある(ビューティ業界の)幹部らとこれまで以上に多く話をしている」とジョンソン氏は語る。「彼らは長年のキャリアを積んでおり、これまでは次の仕事を見つけて転職することができていた。競争の激しい市場において、現状は彼らにとって未知の領域だ。そのような話をいつも耳にしている」。

ジョンソン氏はGlossyに対して、6月と7月に美容業界の正社員求人が急増したことを指摘したが、2026年への明るい見通しはまだ持ち合わせていないと語った。「(ビューティ業界では)まだ求人数よりも求人市場に参入してくる人材のほうがはるかに多い」。

ウチテル氏によると、エスティ ローダーやロレアルなどの企業で削減された役職の多くは、テクノロジーや市場の変化ゆえにもはや「復活する」ことはないという。ザ・ボードのネットワークに登録している250人の幹部のうち、過半数がビューティ業界の幹部である。

ソーシャルからブランディング、AI戦略まで



ウチテル氏はGlossyに対し、フラクショナルでもっとも多く採用される役職は、マーケティング、商品開発、小売やWeb戦略などの市場開拓に関わる役職だと語る。フラクショナルでこれまで通例的に採用されてきたのは、COO、人事、CFOといった役職であり、これはトップクラスの幹部を雇用したいものの、フルタイム雇用の資金がない小規模な独立系企業で特に多く見られる動きである。

ウチテル氏が目にしている今後成長が見込まれるほかの分野は、ソーシャルメディア、インフルエンサー、AI戦略に加え、足場を固めつつある新興企業や、ブランドアイデンティティを失い新たな視点を求めている老舗企業のクリエイティブディレクターやブランディングがある。また、ウチテル氏は、多くの企業が、3人以上のエグゼクティブがともに課題解決に取り組むという、フィクサー集団のような「SWATチーム」を採用しているとGlossyに語った。

「ビューティ業界には経験豊富で非常に優秀な人材が多く存在している。同時に、社内で何が必要か、何をアウトソースしたりオフショアしたりすべきか、新しいテクノロジーをどう活用するかといった点において、業界全体が劇的に変化しているのを我々は目にしている」とウチテル氏は語る。「最近どこかで同じことを経験したばかりの信頼できる人材を招き入れて対応してもらえるのは、非常にパワフルだ」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Why Fractional executive hires are trending in beauty, plus industry news]

Lexy Lebsack(翻訳・編集:ぬえよしこ)