恋人同士が本当に話すべきは「楽しかったこと・面白かったこと」ではない…相互理解に役立つ"2つの話題"
■「相手のことしか見ていない」人ほど要注意
二人が一緒に過ごしていることが自然で、心地よくて、無理がない。
そんなカップルになるためには、やはりある種の“努力”や“コツ”が必要です。
それが「観察」「想像」「聴く」「伝える」です。
これができていれば、二人はときにはケンカをしたり、相手に腹を立てたりしながらも、円満に暮らしていけるでしょう。
これは、パートナーとの関係だけに限らず、すべての人間関係にいえることです。
この4つがうまく日常生活に取り入れられている人は、おそらく多くの場面でスムーズに物事を運ぶことができます。カップルの間でもきちんと互いの意見を言い合う関係が築けるのではないでしょうか。

?相手を「観察」する
一番身近にいる相手なのに、パートナーのことがわからない。
それは逆に、「近いからこそ見えていない」「近い相手こそ見えづらい」ということでもあります。
ある精神科医の本に、こんなエピソードがありました。
若い医師が初めて患者と面接を行なったあと、「患者さんとがっぷり四つに組んで面接してきました」と先輩であるベテラン医師に報告しました。
するとベテラン医師はこう言ったといいます。
「そんなことをしたら、相手のことが見えないじゃないか!」
そう、がっぷり四つに組んでいたら、相手は見えません。
これはパートナーとの関係でもまったく同じです。
毎日一緒に暮らしていると、その存在や言動が当たり前になってしまい、一番知っていると思っている相手を、実は“きちんと見ていない”ということが起こり得るのです。
「一緒にいる間は、相手のことしか見ていません」
と思う人こそ、ぜひ「観察」を心がけてみてください。
■小さなSOSのシグナルに気づいて声かけする
大切なのは、「何を見ればいいのか」ですが、実はとても簡単なこと。
仕事から帰ってきた相手を見て、「とても疲れているみたい」「表情がいつもより暗いかもしれない」などとそのときの様子を観察します。
毎日顔を合わせていても、相手のことをよく見ていなければ、そんな小さな変化は目に入ってこないものです。
パートナーが仕事上で悩みを抱えていたことに半年の間気づかず、「仕事を辞めたい」と言われて初めて知った、という女性は「どうして気づいてあげられなかったのか……」と悔やんでいました。
ですが、おそらく小さなSOSのシグナルは出ていたのでは……。
いつもと違うささいな変化に気づき、「今日、元気ないのでは?」「何かあったの?」などと、問いかけると、相手は悩んでいることを言う気になるかもしれません。
たったこれだけのことですが、それによって「お互いのことを気にかけている」という安心感と思いやりを二人の間に育むことができます。

■近い存在なのに見えていない部分が山ほどある状態
?見えない部分を「想像」する
ただし、相手のことをよく観察したとしても、「自分が見ている姿」だけが相手のすべてではないのも事実です。
たとえば、自分と一緒にいない時間に相手がどのように過ごしているのか、知ることはなかなかできないでしょう。
たとえ一緒に暮らしていたとしても、平日ならお互いを知らない時間が一日8〜10時間もあり、その一方で、一緒に過ごす時間はわずか1〜3時間ほどしかない、という場合もありえるでしょう。
その圧倒的に少ない時間に見る相手の姿がすべてだと思ってしまうと、「近い存在なのに見えていない部分が山ほどある」ということになります。
実際に目にするのは、休日にどこかへ出かけたり、会話を楽しむ元気もないほど、疲れきった互いの姿。これでは徐々に会話が減り、相手に対して不満がたまって関係がギクシャクしてしまうかもしれません。
■相手の態度につられず、自分の気持ちを落ち着けて行動する
せっかく二人でいるのに男性がピリピリしていたり、不機嫌そうな様子を見せたりすると、女性のほうも「私だって仕事で疲れているのに」「こっちだって家事と育児で大変なのに」と思ってしまいますよね。
ですが、そんな日は相手も会社でうまくいかないことがあってストレスを感じているのかもしれません。
あるいは、重要な仕事の前で、心配事を抱え、ほかのことにまったく目がいかなくなっていることもあるでしょう。
そんなふうに、見えていない相手の状態を想像する習慣をつけると、「今日は向こうの調子が悪そうだから、そっとしておいてあげようか」「いつもより口数が少ないけど、疲れているのかな。あとでおいしいものでも食べに連れ出してみようか」と、相手の態度につられず、自分の気持ちを落ち着けて行動することができ、それによって相手の態度も徐々に変わるかもしれません。
■恋愛中の二人が本当に話しておくべきことはこれ
?相手の話を「聴く」
第3のポイントは、相手の話を「聞く」だけでなく「聴く」ことです。
「聴く」は、理解しようという意志を持って、身を入れて耳をそばだてるということ。
しかし、話を聞いているうちに自分の意見を言いたくなったり、ほかのことに目がいってしまったりと、相手に関心を持って「聴く」ことができていない人は案外多いものです。
「アドバイスする」というのも、相手の話をきちんと「聴いて」いないと、すれ違いやケンカの原因になることも。
相手はただ、「つらい気持ちを吐き出したい」だけかもしれないからです。
自分の話を相手に関心を持ってきちんと「聴いてもらえた」と感じると、満足度は大幅に増し、それだけで相手への信頼や感謝の気持ちが湧いてきます。
?思いを言葉にして「伝える」
「見えない部分」という溝を埋めるためには、「相手が見えていないときの自分の行動や気持ちを説明する」こともやはり大切です。
恋愛中でもっとも二人の関係がうまくいっているときは、時間を忘れるほど夢中になっておしゃべりを楽しみます。
「こんなにわかり合えて幸せ!」という幸せな期間がしばらくは続きますが、ある日ささいなケンカをきっかけにしてふと、
「この人は何を考えているの?」
「なんでこんなこともわかってくれないの?」
と、現実に引き戻されます。
こういうときは、二人でたくさん会話をしていたにもかかわらず、実は「本当に話すべきこと」を話していなかった可能性があります。
「本当に話すべきこと」とは、楽しかったこと・面白かったことといった出来事だけでなく、「どんなことに楽しさや悲しさを感じるのか」「どのように物事を考え、どのような選択をしているか」ということです。
この「思考のプロセス」を理解することは、相手を理解することにつながります。

■「こう考えたから、こうした」と伝えられるか
たとえば、デートの約束をしているカップルの場合。
彼が仕事のあとで取引先の人から「一杯飲んでいきませんか」と誘われたとします。
そのとき誘われるままにデートをキャンセルする日もあれば、誘いを断って彼女のもとに駆けつける日もあるでしょう。
しかし、また別の日は、今週は、お互い忙しくて顔を合わせて話す時間が全然なかったから、今日は早めに帰ろう、と考えて、飲みに行かずに断る日もあるかもしれません。
ですが、わざわざ「今日は飲みに誘われたけど、君と一緒にいるために断ってきたよ」とは、言わないことが多いのではないでしょうか。

こういう場合にも、「こう考えたから、こうした」ということをきちんと伝えておくと、あなたの「考え方」「選択の傾向」を相手も知ることができます。「ああ、この人は、今日は私のことを考えて、約束通りきてくれたんだな」とわかるからです。
この4つのポイントは、そのままアサーションを実践する上でのポイントです。
「?観察」「?想像」「?聴く」「?伝える」を意識しているうちに、本当に忙しくて一緒にいられないとき、時間的なすれ違いが続いたときでも、相手を責めたり不安になったりせずに、冷静さを保っていられるようになります。
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平木 典子(ひらき・のりこ)
臨床心理士、家族心理士
1936年生まれ。津田塾大学英文学学科卒業後、ミネソタ大学大学院に留学し、カウンセリング心理学を専攻(教育心理学修士)。帰国後、カウンセラーとして活躍する一方、後進の指導にあたる。日本におけるアサーション・トレーニング(自分も相手も大切にしながら行う自己表現)の第一人者。立教大学カウンセラー、日本女子大学教授、跡見学園女子大学教授を歴任。1995年、IPI統合的心理療法研究所を創設。主な著書に、『図解 相手の気持ちをきちんと〈聞く〉技術』『図解 自分の気持ちをきちんと〈伝える〉技術』(PHP研究所)、『アサーション入門』(講談社)ほか、多数。
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野末 武義(のずえ・たけよし)
明治学院大学心理学部心理学科教授
家族心理士、臨床心理士、公認心理師。1964年生まれ。立教大学文学部心理学科卒業。国際基督教大学大学院教育学研究科博士前期課程修了(教育学修士)。医療法人社団草思会錦糸町クボタクリニック、立教大学池袋学生相談所、国立精神・神経センター精神保健研究所などを経て、現職。IPI統合的心理療法研究所所長。主な著書に『夫婦・カップルのためのアサーション』(金子書房)、『家族心理学 家族システムの発達と臨床的援助 第2版』(共著、有斐閣ブックス)、『マインドフル・カップル』(監訳、金剛出版)などがある。
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(臨床心理士、家族心理士 平木 典子、明治学院大学心理学部心理学科教授 野末 武義)
