父は元プロ野球選手。名古屋U-18の大西利都が受け継いだDNA「結果を出せば未来につながる。全力で取り組んでいきたい」
「2週間前に友人に剃ってもらいました。気合いを入れるためです」
高校ラストイヤーに懸ける熱い思いは、プレーにも如実に表われた。昨年は最前線で武器であるスピードとフィジカルの強さ、そして背後を取る巧さを駆使してゴールに迫っていくストライカーとして、プレミアWESTで得点ランキング3位タイの14ゴールを奪った。
「これまでと違って前に味方がいるので、ポジショニングを考えながらプレーした」と口にしたように、伊藤のポジションを常に見ながら、斜め後ろにサポートに入ったり、相手CBを釣り出す動きを見せたりと、伊藤がやりやすいようなポジショニングやアクションを見せていた。
その一方で、伊藤が落ちた瞬間に一気にスプリントを仕掛けて裏のスペースを狙ったり、伊藤が仕掛けていくと、ラストパスやこぼれ球をイメージしてゴール前のスペースに飛び込んで行ったりするなど、ストライカーとしてゴールへの貪欲さも持ち続けた。
1点リードで迎えた後半は守勢に回ることが多かったが、前からのプレスとボランチやウイングバックなどをサポートするプレスバックなど、そのスプリント力を守備面で発揮。ゴールこそ生まれなかったが、88分に交代するまでチームのために献身的かつ頭脳的に動き、1−0の勝利に貢献した。
「シャドーというポジションをさせてもらっていることは、僕にとって大きなチャレンジだと捉えています。今までは常に相手の背後を駆け引きしながら狙っていくことの連続だったのですが、(1トップの)伊藤選手も背後をうまく取れる選手なので、その持ち味を消さないように、むしろ引き出せるように、自分が少し落ちたり、角度をつけたりすることでスペースを開けることを意識しました。身体の向きやターン技術など、細かい部分がまだまだ自分には足りないと痛感しています」
こう反省の弁を述べたが、88分間のプレーを見ても、昨年以上に首を振って、半身の姿勢を繰り返し作りながら、実戦の中で動きを工夫している姿勢はヒシヒシと伝わった。
新しいポジションでもポジティブに受け止めて、自身の成長、チームへの貢献をイメージしてプレーに反映させていく。こうした謙虚かつ貪欲なスタンスは、家族やトップチームの選手たちから学んだ。
「お父さんからは常にメンタル面のアドバイスをもらっています。自分はカッとなってプレーが雑になることがあるのですが、プロの選手はサッカーも野球もそうですが、イラッとした時にいかに冷静さを保てるか。そこが良い選手になれるか、なれないかの分かれ目になると。他にも勝負所を見逃さないために日々の練習がある、フォワードならば自分が点を決めるんだという強い意志を持ち続けろなど、技術的なことは全然言ってきませんが、メンタルの部分は厳しく言われています」
大西の父親・崇之氏は元プロ野球選手。中日ドラゴンズや巨人でプレーし、昨年まで中日の一軍外野守備走塁コーチを務め、今年からは福岡ソフトバンクホークスの一軍外野守備走塁兼作戦コーチを務めている。厳しいプロ野球の世界で選手としても、指導者としても揉まれながら一流になっていった父の言葉は説得力が違った。
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そして大西は今年のトップチームの沖縄キャンプに参加。「やはりメンタルの部分は指摘されましたし、一番痛感したのは技術の部分で、今までユースでごまかしながらやれていたことが、トップに入ると一切ごまかせないと感じました」と、大きな刺激と共に危機感を覚えた。
2月にはGK萩裕陽、DF森壮一朗と共に2種登録された。徐々にプロが近づきつつある今だからこそ、父やトップのスタッフ、選手たちの言葉により重みを感じているという。
「ぶれないメンタルというか、どの環境でも自分を出せるメンタリティを身につけないといけないと感じています。だからこそ、今やっているシャドーというポジションは重要だと思っていて、フォワードとしての獰猛さは持ちながらも、バランスを取りながら味方に点を取らせるという新たな意識を持つことで、メンタル面だけではなく、技術面でもプレーや意識の幅が広がるチャンスだと思っています」
与えられた場所で力強く咲く。突きつけられた課題と真摯に向き合って、創意工夫をしながらチャレンジすることこそ、成長への大きなチャンスでもある。
それは父・崇之氏が現役時代にやってきたことでもあった。少し話は逸れるが、崇之氏の現役時代は打球への反応スピードが速く、俊敏性と鮮やかなグラブ捌きを見せるなど、守備面で輝きを見せる名手だった。
打撃が課題と言われていたが、コツコツと課題と向き合って努力を重ねた結果、プロ7年目、8年目で打率3割をキープするなど、『走攻守』揃った重要な選手になった。その知見と経験、明晰な頭脳があるからこそ、今も一流の指導者として現場に立ち続けている。
大西には着実に努力するDNAが受け継がれている――。
「トップ昇格をした杉浦駿吾選手は昨年、シャドーでかなり点を取っているので(注/プレミアWESTで大西と同じ14ゴールをマーク)、僕もシャドーでも得点王を狙っています。それに3年生でもあるので、チームのことを考えてキャプテンシーを発揮したい。ここで結果を出せば未来につながると思いますので、全力で取り組んでいきたい」
この瞬間に全身全霊で挑む。その繰り返しが自分自身を加速させていく最善の方法と信じて、大西は心身ともに自己研鑽を続ける。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
