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記念すべき50年前の911 カレラRSR 2.1ターボ

モータースポーツは、クルマを速くする。レースに勝てば、ディーラーで売れる。20世紀に確立された、クルマ好きには聞き飽きた表現かもしれない。だとしても、最もこれを体現してきたメーカーの1つが、ポルシェだ。

【画像】「スピード抑制」から生まれた高速ポルシェ カレラRSR 2.1ターボ 935/78 GT1 917Kと718も 全128枚

サーキットでの活躍とワインディングでの速さが、これほど密接に結びつき進化してきたブランドは、他に例がないといっていい。ターボチャージャーで過給されるリアエンジンの911は、その象徴だろう。


右から、ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボと、ポルシェ911 GT1、ポルシェ911 935/78

先日のコンテンツでもご紹介したが、2024年はポルシェ911 ターボの発売から50年目。これを記念しポルシェ・ミュージアムは、特に重要なレーシングカーを英国のグッドウッド・サーキットへ運んでくれた。3台も。しかも、キーまで貸していただいた。

集合したマシンの最高出力は、合計で1900馬力以上にも達する。ポルシェ・ファンの1人として、筆者には夢のような時間になった。少し冷静になるため、半世紀に及ぶ歴史が生み出されるきっかけを、1度振り返っておこう。

ターボを積んだ911として、初のレーシングカーとなったのは、カレラRSR 2.1ターボだ。皮肉なことに、耐久レースでのスピード抑制を目的に実施されたレギュレーション変更が、高性能なポルシェ誕生に繋がった。

水平対向12気筒エンジンを積んだプロトタイプレーサーの917で戦い、1971年のル・マン24時間レースで2度目の総合優勝を勝ち取ったポルシェ。シケインのないミュルザンヌ・ストレートを、385km/h以上で疾走したのだった。

速すぎて出禁になったポルシェ917

ところが主催する国際スポーツ委員会(CSI)は、この速さを問題視。そこで1972年は、エンジンの排気量を3.0L以下へ制限することが決まった。これは、917が参戦できない条件だった。

ポルシェは活躍の場を北米へ移し、カンナム・レース仕様に917をアップデート。1973年の917/30では、5.4L水平対向12気筒エンジンにターボを追加することで、最高出力を1151psへ引き上げた。


ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボ(1974年)

実に、4.5Lの自然吸気だった1969年仕様の、ほぼ2倍の馬力だった。強さは圧倒的で、カンナム・シリーズを席巻。アメリカ勢は太刀打ちできず、V8エンジン・マシンを養護するため、ここでも917の出場禁止が決まってしまう。

速すぎた結果といえたが、シュツットガルトの技術者はターボの価値を確信。ロードモデルにも応用できると考えた。

1974年のパリ・モーターショーで発表された試作車が、2.7L水平対向6気筒エンジンにターボを組んだ、ナローボディのポルシェ911。同じ会場には、モータースポーツでの競争力を主張するべく、911 カレラRSR 2.1ターボも並んでいた。

グループ5カテゴリーに準拠したカレラRSR 2.1ターボを、ライバルとして迎えたのはマトラやガルフ・ミラージュなどが開発したプロトタイプレーサー。それでも同社のマネージャー、エルンスト・ファーマン氏は、戦いを恐れなかった。

フランス伝統の耐久レースでの活躍

カレラRSR 2.1ターボがベースにしたのは、自然吸気の3.0 RSRと同じく、Gシリーズと呼ばれた911のシャシー。ボディはFRP製へ置き換えられ、燃料タンクはシャシー中央へ移動。リアのトレッドは拡幅され、巨大なスポイラーが追加された。

最大の特徴といえたのが、2142ccの水平対向6気筒エンジン。巨大なKKK社製ターボが、1基組まれていた。


ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボ(1974年)

当時のグループ5では、排気量は3.0L以下という規定があった。ターボで過給される場合は、実際の排気量に1.4を掛けた数字を適用するというルールも存在した。

そのためポルシェは、ニカシル合金製のシリンダーライナーを追加してボアを調整。ストロークも2.0Lエンジンと同等に短くすることで、排気量を2.2L以下へ抑えた。

エンジン自体は、コンロッドがチタン製で、マグネシウム合金をクランクケースに使用。ナトリウム封入バルブも採用するなど、徹底的な高性能化が図られた。最終的に得た最高出力は、予選仕様で約500ps。本戦仕様では、安全を取り約450psに抑えられた。

1974年のル・マン24時間レースに帰ってきたポルシェは、ヘルベルト・ミューラー氏とジィズ・ファン・レネップ氏のペアで、総合2位という好成績を奪取。フランス伝統の耐久レースでの活躍が、空冷ターボ伝説の始まりとなった。

この姉妹関係にあるのが、今回ミュージアムからやってきたマッシブな1台。スパ1000km耐久レースでは表彰台を掴んでいるが、コンロッドの破損でル・マンでは結果を残せていない。

パワーが路面へ伝わるとフロントが軽くなる

ドライバーズシートへ座り、ステアリングホイールを握れば、自ずと興奮が高まる。助手席側には、耐久レース用の120Lタンクが固定されている。キャビンにはロールケージが張り巡らされ、そこへ括られたホースは、ターボブースト計に繋がっている。

一見、圧倒される雰囲気だが、深呼吸すると公道用のGシリーズでの既視感もなくはない。ダッシュボードに収まる扇型のメーターパネルに、いつもどおりのキー。クラッチペダルは驚くほど軽く、5速MTのシフトレバーは心地良く正確にスライドする。


ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボ(1974年)

ピットレーンからの加速直後は、驚くほど文化的。しかし4000rpmが近づくと、ゴロゴロとくすぶりバリバリと弾けるノイズが、2.1Lエンジンから放たれる。ポルシェのメカニックは、ターボラグが酷いことを忠告していた。

荒々しいノイズを鎮める唯一の方法は、アクセルペダルを目一杯踏み込むこと。充分な回転数まで高めればいい。

グッドウッド・サーキットの中速コーナー、ラヴァントを攻略するには、侵入時の左足ブレーキが必要になる。自然吸気より早めにアクセルペダルを傾けることで、予めブーストの上昇を誘っておける。

17インチのリアタイヤが生み出す、トラクションは凄まじい。パワーが路面へ伝わると、フロントノーズが軽くなるのがわかる。安定性が高いとはいえないだろう。

この続きは、カレラRSR 2.1ターボ 935/78 GT1 911を3台乗り比べ(2)にて。