「Nothing Ear (a)」(左)と「Nothing Ear」(右)

Nothingは4月18日、東京・新木場で開催したコミュニティイベントにおいて、完全ワイヤレスイヤフォンの新モデルとして、前モデルのデザインはそのままに細部まで設計を見直したという「Nothing Ear」と、よりリーズナブルな「Nothing Ear (a)」を発表した。価格はNothing Earが22,800円、Nothing Ear (a)が14,800円で、公式サイトで予約受付を開始している。

カラーバリエーションはNothing Earがブラックとホワイトの2色、Nothing Ear (a)はブラックとホワイトに加え、ブランド初採用となるイエローの3色。

4月19日からは、二子玉川 蔦屋家電とKITH TOKYO、ビームス原宿・梅田・銀座・六本木ヒルズ、ユナイテッドアローズ丸の内店・名古屋店・心斎橋店にて数量限定で先行発売する。

Nothing Ear

前モデルのデザインを踏襲した「Nothing Ear」(ホワイト)

3年に渡るデザインとエンジニアリング、イノベーションの集大成で「Nothing史上最高の音楽体験」ができるというモデル。本体デザインは発売済み2023年3月に発売された「Nothing Ear (2)」を踏襲しつつ、「ドライバーやバッテリーの大物だけではなく、細部に至るまで徹底的に内部の設計デザインを見直した」という。

「Nothing Ear」のイヤフォン

イヤフォンはスティック型で、11mm径のダイナミックドライバーを搭載した。振動板の素材には「鮮明な高音を実現するのに最適な選択」だとしてセラミックを採用している。振動板の可動域も前モデルから2倍以上になったという。

振動板にはセラミックを採用

新たに立ち上げられたNothingの日本オフィス「Nothing Japan」でマネージングディレクターを務める黒住吉郎氏によれば、「セラミックは、オーディオプロダクトではあまり聞き慣れない新しい素材。ただ綿密なテストを重ねた結果、例えば高音域であったり、音の明瞭感であったり、そういった部分が良くなるだけではなく、全体的な周波数特性さえも優れていることが分かった」とのこと。

エアフローも改善された

また前モデルで採用していたデュアルチャンバーを採用したうえで、2つの通気孔を追加することでエアフローも改善。これにより歪みを抑えつつ、よりクリアで鮮明な音の再現が可能になった。

Bluetooth 5.3準拠で、コーデックはSBC、AAC、LHDC 5.0に加え、新たにLDACもサポート。LHDC 5.0では最大1Mbps、192kHz/24bit、LDACでは最大990kbps、96kHz/24bitのハイレゾオーディオを楽しめる。遅延を120ミリ秒未満に抑えるという低遅延モードや、2台の端末に同時接続するデュアル接続(マルチポイント接続)にも対応する。

「Nothing Ear」(ブラック)

アクティブノイズキャンセリング(ANC)にも、引き続き対応する。前モデルでは最大40dBのノイズ低減が可能だったが、新モデルでは最大45dBまでノイズ除去が可能に。イヤフォンを装着するたびに、外耳道との密閉性を自動的に確認してノイズ漏れをチェックし、それに対応してNC強度を高める「スマートANCアルゴリズム」や、周囲の状況に応じてNCレベルを自動的に切り替える「アダプティブANC」を採用している。

通話機能でも、3つのマイクとAIノイズリダクションアルゴリズムによりクリアな音声で通話が可能。新たなマイクを導入したことで通話の妨げとなるノイズが少なくなった。また、ステム部分に通気孔が追加され、風の通り道がより明確になったことで、通話の妨げとなるノイズを前モデルから60%低減できたという。

バッテリー持続時間はイヤフォン単体でANC OFF時は8.5時間、ANC ON時は5.2時間。ケース併用時の最大再生時間は40.5時間を実現。10分の充電で10時間(ケース併用/ANC OFF)使える急速充電や、最大2.5Wのワイヤレス充電をサポートする。

ステム部分はピンチコントロールに対応し、楽曲操作やNCモードの切替、ボリューム調整などをすべてピンチ操作で行なえる。これらの機能は専用アプリ「Nothing X」でカスタマイズできる。アプリからは重低音を強調する「Bassエンハンス」のON/OFFや、イコライザー操作などもできる。

イヤフォンはIP54、ケースはIP55の防水防塵仕様。装着検出やGoogle Fast Pair、Microsoft Swift Pairを利用できる。外形寸法と重さは、イヤフォン片側が21.7×24.1×29.4mm(幅×奥行き×高さ)/4.62g、ケースが55.5×22×55.5mm(同)/51.9g。S/M/LサイズのイヤーチップやUSB Type-Cケーブルなどが付属する。

Nothing Ear (a)

「Nothing Ear (a)」(イエロー)

魅力的なデザインとスマートなノイズキャンセリング機能を備えた「オールラウンドなオーディオコンパニオン」と位置づけるモデル。ロンドンのデザインチームが、ケースからイヤフォン本体に至るまで、すべて新しいデザインを採用した。

ケースの蓋は丸みを帯びた形状

正方形に近い「Nothing Ear」よりもケースの向きが識別しやすくなった

ケースは錠剤の包装シートからインスピレーションを受けたという隆起した輪郭とバブル状のデザイン。このデザインは、内部コンポーネントを効率的に収容するために、上部と底部のプラスチック成形品に緩やかな曲線を組み込むことにつながったとのこと。また、配置の見直しによりケースの向きが識別しやすくなり、ケースの開口部とイヤフォンの左右が判別しやすくなっている。

同社オーディオ製品で初採用となったイエローカラー

カラーリングでは、同社オーディオ製品として初めて黒と白以外のカラーリングとしてイエローを採用。Ear (a)のデザインを引き立てるだけでなく「ありのままで最も美しい工学、同じ哲学をカラーにも適用した。色の成り立ちを本質まで突き詰めると、原色だけが残る。この純粋主義のアプローチの末に、Ear (a)イエローに辿り着いた」とのこと。

イヤフォンはスティック型。ステム部分はスケルトンデザインで、モデル名も記される

イヤフォンはNothing Earなどと同じくスティック型。ドライバー口径も11mm径ダイナミックドライバーとNothing Earと同様だが、振動板はセラミックではなくPMI素材を採用している。内部レイアウトが見直され、振動板の可動域が拡大しているほか、通気孔も2つ追加され、エアフローも改善されている。

「Nothing Ear (a)」(ホワイト)

Bluetooth 5.3準拠で、コーデックはSBCとAACに加え、LDACをサポート。最大990kbps、96kHz/24bitのハイレゾ再生ができる。遅延を120ミリ秒未満に抑えるという低遅延モードや、2台の端末に同時接続するデュアル接続(マルチポイント接続)にも対応する。

最大45dBのノイズ低減が可能なANCを搭載。Nothing Earと同様に、スマートANCアルゴリズムやアダプティブANCなどを利用できる。

通話性能も3つのマイクとAIノイズリダクションアルゴリズムにより、クリアな音声で通話可能。通話の妨げとなるノイズは「Nothing Ear (2)」より60%低減しているという。

「Nothing Ear (a)」(ブラック)

バッテリー持続時間は、イヤフォン単体でANC OFF時は9.5時間、ANC ON時は5.5時間、ケース併用時はANC OFF時で最大42.5時間、ANC ON時で最大24.5時間。急速充電も利用できる。なおワイヤレス充電は非対応。

防水防塵仕様は、イヤフォンがIP54、ケースがIPX2。装着検出やGoogle Fast Pair、Microsoft Swift Pairを利用できる。

ステム部分はピンチコントロールに対応し、楽曲操作やNCモードの切替、ボリューム調整などをすべてピンチ操作で行なえる。これらの機能は専用アプリ「Nothing X」でカスタマイズできる。アプリからは重低音を強調する「Bassエンハンス」のON/OFFなどもできる。

外形寸法と重さは、イヤフォンが21.7×24.3×30.9mm(幅×奥行き×高さ)/4.62g、ケースが63.3×22.7×47.6mm(同)/39.6g。S/M/LサイズのイヤーチップやUSB Type-Cケーブルなどが付属する。

音を聴いてみた

「Nothing Ear」を同社製スマートフォン「Nothing Phone (2a)」とペアリング

Nothing Earは、同社製スマートフォン「Nothing Phone (2a)」とLDAC経由でペアリングして試聴。短時間の試聴だったが、イヤフォン形状は従来同様のスティック型ということもあり、耳への負担は少なく、長時間の装着でもストレスは少なそうに感じられた。

ライブ版の「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」を試聴してみたところ、セラミック振動板を採用したドライバーのサウンドは、高音域がややピーキーで“シャリシャリ感”があるものの、ギターの音色やボーカルはクリア。低域を強調するBassエンハンスの効果もあり、量感ある低域を味わうこともできた。

一方のNothing Ear (a)も同じくスティック型で、こちらも装着時のストレスは少なめ。サウンド面では、Nothing Earで感じられた高域の“シャリシャリ感”はなくなるものの、解像感は一段抑えめ。同じく低域もNothing Earと比べると大人しめの印象だが、音楽を楽しむには十分な量感に感じられた。

イヤフォン、スマートフォンにChatGPT統合

イヤフォンからChatGPTを呼び出す機能が搭載される

また、イベントでは今後のロードマップについても紹介され、その一部として同社のイヤフォンとスマートフォンから、生成AIのChatGPTに直接アクセス可能になる機能を追加することが明かされた。

イヤフォンからのアクセスは、Nothing PhoneにChatGPTアプリをインストールしたあと、イヤフォン用アプリ「Nothing X」からボタン操作をカスタマイズ登録すると利用可能。例えばChatGPTの呼び出しを左ステム長押しに割り当てておけば、ポッドキャストを聞いていて気になった部分があれば、左ステム長押しでChatGPTに直接質問を投げかけることができる。

この際、ペアリングしているNothing Phoneを操作する必要はなく、「ポケットに入れたまま画面がオフになっていても問題はない。直感的で簡単な操作でChatGPTをイヤフォンに統合した」(黒住マネージングディレクター)とする。

イヤフォンのChatGPT機能は、Nothing EarとNothing Ear (a)では製品発売時から対応。すでに発売済みのオーディオ製品については、サブブランド「CMF by Nothing」のものも含めて6月末に対応予定。

スマートフォンのOS「Nothing OS」にChatGPTを統合

スマートフォン向けには、同社のOS「Nothing OS」にChatGPTを統合。テキストとボイス、画像に直接アクセスできる新しいウィジェットを新たに開発し、そこからアクセスできるほか、気になる文章をコピーしてショートカット経由でChatGPTに質問したり、気になった画像のスクリーンショットをショートカット経由でChatGPTに入力することができるという。

Nothing OSへのChatGPT統合は、18日よりNothing Phone (2a)向けにスタート。Nothing Phone (1)とNothing Phone (2)向けにも今月後半を目処に提供される。

ChatGPTのウィジェットは、Nothing OSのデザインとの一貫性も確保される

Nothing OS向けのChatGPT統合は18日から順次スタートする

Nothingオーディオ製品にとって「日本は2番目の市場規模」

Nothingのカール・ペイCEO

イベントにはNothingの共同創業者でCEOを務めるカール・ペイ氏も登場。「2年ほど前、私たちは日本市場での活動実績も現地チームも持たないままにソフトローンチを迎えた。しかし多くの方が関心を抱き、デザインのファンになってくれた。その結果、Nothingのオーディオ市場としてはアメリカに次いで2番目の市場規模になっている」と明かした。

「これは私たちにとって嬉しいサプライズであり、これを機に本格的に日本に進出し存在感を示すことに決めた。その第1弾が初めてFeliCaをサポートしたNothing Phone (2a)で、これはSNSで大きな反響を呼んだ」

「これまで我々のスマートフォンには、FeliCaなど日本ユーザーに求められる機能がなかった。実際、日本に3週間ほど滞在しているが、いちいち切符を買わなければいけない煩わしさを痛感した。それでもPhone (1)、Phone (2)は日本市場で好意的な反応を頂いている」

また製品のネーミングについて、これまでNothingのイヤフォン製品にはナンバリングが採用されていたが、今回の2モデルから廃止された。

これについて、カールCEOは「将来のロードマップも含めて検討した結果、スマートフォンは毎年のように新製品を発表しているのでナンバリング制を採用しているが、オーディオ製品は、そこまでの頻度でアップデートする予定はないだろうと考えて、名前を簡素化することにした。自動車のモデル名と7じようなイメージだと考えて欲しい」と語った。

Nothing Japanの黒住吉郎マネージングディレクター

新たに立ち上げられたNothing Japanのマネージングディレクターに就任した黒住氏は「日本市場への本気度、それをみなさまにお見せする意味も含め、新製品を世界で初めてここ東京で発表」したとコメント。

「2024年はNothingにとって、これまで以上に大切な年になりました。デザインへの深い伝統であったり、高いアンテナを持った日本のお客さまを理解するだけではなく、うまく活用して日本展開のためのしっかりとした拠点を、日本に構築していきます」

「ただ日本に拠点を作るということは、日本展開だけのためではありません。Nothingを世界的なブランドにするための足掛かりにもしたいと思います。そのためにはマーケット、お客様の需要・要求にお答えする必要があります」

「(その一例が)先ほどカールが申し上げたNothing Phone (2a)へのFeliCa搭載。またNothingらしい例としては会場でも使用されているNothingオリジナルの書体を日本のコミュニティメンバーと一緒に作成しました」

「そして、できるだけ多くの方にNothingのプロダクトを体験・購入していただくために販売チャンネルやパートナーさまを順次拡大していくつもりです。もちろん日本の体制はより強化していきます。加えて日本という地の利を活かし、デザインであったり、最先端の研究などを行なう拠点の展開も可能性として視野に入れています」

会場となったGARDEN新木場FACTORY

FeliCaを搭載したスマートフォン「Nothing Phone (2a)」

Nothingのサブブランド「CMF by Nothing」のイヤフォンなども展示されていた