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1960年代を見据えた105Eのアングリア

1950年代、世界的に自動車産業を牽引する立場にあった英国。名車も数多く生み出したが、明らかに時代遅れといえるモデルも作られていた。戦前の技術をそのまま継投していた、フォード・アングリア 100Eはその1台に数えられる。

【画像】映画ハリー・ポッターで飛行 フォード・アングリア 105E 同時期の英国車と比較 全127枚

戦後を象徴するような、アングリア 100E ポピュラーが発表されたのは1953年。サイドバルブの4気筒エンジンに、3速マニュアルのトランスミッションが組まれていた。フロントガラスのワイパーは、モーターではなくバキュームホースが動かした。


フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

シンプルさとリーズナブルさで、英国市民の支持を集めた。しかし、新しいアングリア 105E 2ドアサルーンが1959年に登場。1960年代を見据えたモデルチェンジを果たした。

今回ご紹介する、このアングリア 105Eは、それまでとは異なる低いボンネットが特徴。両サイドの高い位置に、丸いヘッドライトが構えた。コストを抑えた板状のリアガラスは、通常とは逆向きに傾斜が付き、リアシート側の空間が確保されていた。

英国フォードのエンジンの歴史を遡っても、1959年ほど大転換といえる時期はないだろう。従来のロングストローク・サイドバルブから、アングリア 105Eではショートストローク・オーバーヘッドバルブへ進化している。

シリンダーもオーバースクエア形状へ変更され、高回転域まで軽快に吹けるようになっていた。2速から上にシンクロメッシュが付いた4速マニュアルが組み合わされ、滑らかな変速も実現していた。

チューニングベースとして注目された4気筒

その結果、105E用のユニットはコスワースやアレクサンダー、HRGといったレーシングカー・メーカーが、チューニングベースとして注目。数年後には、フォーミュラジュニア・クラスのレーシングカーへ搭載されるようになっていた。

さらにこのエンジンは、フォード・コルチナ用としてバージョンアップ。1962年に追加された高性能なアングリア・スーパー 123Eへ、1198cc版が登用されている。


フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

低価格の量産車であったアングリア 105Eだが、フォードは複数のオプションを用意。現代でいうパーソナライズにも力が注れた。クロームメッキ・モールがボディに付かない、シンプルなフロントグリルと内装のスタンダードが、標準仕様に設定された。

その上のデラックスでは、クロームメッキ・グリルにクロームメッキのサイドトリムとテールライト・フレームを獲得。グローブボックスにリッドが付き、サンバイザーも備わった。

アングリア・スーパー 123Eでは、サイドトリムが2本に増え、ルーフをボディと対照的なツートーン・カラーで塗装。インテリアは豪華に仕立てられた。また、デラックス仕様やスーパー仕様で指定することも可能だった。

ほかにアングリア 105Eでは、約1000台が生産されたピックアップトラックと、約600台のステーションワゴン、スタンダード・エステートも作られている。

映画ハリー・ポッターでは魔法で空飛んだ

映画ファンなら、1998年の「ハリー・ポッターと秘密の部屋」に、ライトブルーのアングリア 105Eが登場したことをご存知かもしれない。魔法で空飛ぶ様子がクルマの価値に影響を与え、少なくない数がスクラップ置き場から路上へ復活することになった。

世界で最もエキサイティングな小型車という触れ込みで発売され、1960年代にはロンドンの景色の一部になった、アングリア 105E。英国におけるフォード躍進の立役者といえる、重要なクラシックカーだ。


フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

オーナーの意見を聞いてみる

幼い頃からクルマ好きだったという、オーボネ・ブラドン氏。視力が弱くても、お気に入りのクルマへ注がれる愛情は絶大だ。

「両親がフォード・アングリアのエステートを所有していました。自分は運転免許を取得できないとはわかっていましたが、両親と話をし、1986年に自分のアングリアを購入しています。今では12台もあります」


フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

「わたしが運転するのは自宅の敷地内だけ。一般道は友人にお願いします。フォード・アングリア 105Eのオーナーズクラブに加わっていて、素晴らしい仲間がいます。スペアパーツの提供にも積極的なんですよ」

「このライトブルーのアングリア 105Eは、デラックスのサルーン。当時は最も人気のあるスタイルでしたね」

「走行距離が7万4000kmと浅いワンオーナー車で、リアのパーキングセンサーなど、前オーナーが機能的な変更を加えています。まったくレストアせず、この状態なんですよ」

英国で掘り出し物を発見

フォード・アングリア 1200スーパー(英国仕様)

登録:1964年 走行:−km 価格:2万6950ポンド(約433万円)

大費用をかけて、ラリーカーへ改造されたアングリア。FIAが公認するヒストリック・テクニカルパスポート(HTP)を取得しており、FIA主催のロードラリーや、グッドウッド・フェスティバルのイベントなどへ参加できる資格を持つ。


フォード・アングリア 1200スーパー(1964年/英国仕様)

これまでも、レーサーやラリーカーとして活躍してきた。ボディシェルはシーム溶接され、ロールケージが組まれている。1200ccエンジンは130馬力以上を発生し、ブレーキとサスペンションも競技仕様。大容量の燃料タンクと消火システムを実装する。

フォード・アングリア 105E デラックス(英国仕様)

登録:1968年 走行:5万3100km 価格:1万6995ポンド(約273万円)

売り手がタイムワープと表現する、走行距離が驚くほど短いアングリア 105E。現存する、最も状態の良い1台であることは確実だろう。

新車時から1994年まではワンオーナー車。その後2017年まで保管され、新しいタイヤとバッテリー、ステンレス製マフラーが組まれ、復活への整備を受けている。ラグーン・ブルーの塗装は、細かい傷があるものの工場出荷時のままだという。

ボディは一度も溶接による修理を受けておらず、インテリアもオリジナル状態。丁寧に乗られてきたに違いない。

中古車購入時の注意点などは後編にて。