【TikTokで再ブレイク】元チェリー☆パイ・大湯みほが語る“乾杯、おっぱい、チェリー☆パイ”が生まれた日。「『パイパイ』言いすぎたから軽く見られて、変な男しか近づいてこなかった…」

「乾杯、おっぱい、チェリー☆パイ!」そんなフレーズがTikTokでバズっているのをご存じだろうか? 元ネタを懐かしく思い出す人も多いかもしれない。「いっぱいおっぱいチェリー☆パイ!」の決めゼリフで一世を風靡した水着姿の女性お笑いコンビ――。15年ほど前には「ラジかるッ」(日本テレビ系)にレギュラー出演したほか、バラエティ番組にも数多く出演した、かっすんとみほの「チェリー☆パイ」だ。

「パイならおっぱいやろ」という一声で生まれた

「いまの肩書は、『ぬか漬けマイスター』です。野菜だけじゃなく、魚も肉もフルーツもなんでもぬか漬けにしちゃいますよ」

「黒ビキニのほう」の“みほ”こと大湯みほさん(41)は、“ぬか漬けタレント”に転身していた。

チェリーパイ(左・かっすん・右みほさん)/みほさん提供

「『チェリー☆パイ』の前にアイドルとか女優にも挑戦したんですけれど、鳴かず飛ばずで……。子どもの頃は、いじめられっ子だったんですよ。でも、服飾系の専門学校に通っているときに、地元・仙台のモデル事務所にスカウトされて、細々と活動していました。学生時代は人と目を合わせられないくらい暗いコで、当時の知り合いは芸人になった私を見て『あれは同姓同名の別人だ』と思っていたらしいです。

生保レディーと深夜の焼き鳥屋のダブルワークで軍資金を貯めて、上京するときには親族に、「女優になる!」って宣言しちゃってた。芸人になってからも、私は正統派のお笑い目指したかったので、水着は断固拒否していたんです。ところが、脱ぎたがったのが相方のかっすん。彼女はわたしより立派な“おムネ”もあったので(笑)」

2007年の春。ピンで活動していた「みほ」と大阪から上京したばかりの「かっすん」は出会った。つけたコンビ名はかわいらしい「チェリー☆パイ」。

「いわゆる即席コンビで、オーディションのために組んだら予想外にウケがよかったんです。当時のマネージャーが、『ネタに政治を絡めなさい』ってアドバイスするもので、『政治が心パイ!』とか『政治家は疲労困パイ!』とかアレコレ考えてはみたけれど、大阪ノリの相方が『パイならおっぱいやろ』という一声で生まれたのが、『いっぱいおっぱいチェリー☆パイ!』です。

即席コンビだった‼ /みほさん提供写真

いくらなんでもストレートすぎるでしょって思ってたんですけど、ふたを開けてみるとオトナも子どもも笑ってくれるからコレをメインのギャグでいこうって。やってみると自然とフリもついちゃうもので。

お笑いのオーディションに、服アリと服ナシの2パターンのネタを持っていくじゃないですか。そうすると服ナシのほうが受かるんです。求められているのは、“深夜枠”のセクシーさで、『エンタの神様』とか『爆笑レッドカーペット』とかお茶の間向きの番組はまったく受からなくて全滅でした。

ただ、コント赤信号のリーダー渡辺正行さん主催の『ラ・ママ新人コント大会」のオーディションだけは、出番で水着で出た瞬間に『合格っ!」って言われましたけどね、ネタやる前に(笑)」

江頭2:50から「お前の水着臭えな!」

2007年の年末番組では、いつもの水着姿なのに極寒の雪山で「いっぱいおっぱいチェリー☆パイ」を2008回繰り返し、「ラジかるッ!」(日本テレビ系)のレギュラー出演権をゲットした。

「基本、ネタ番組からは『服を着てください。水着ネタは封印して』と言われるばかりで。でも『ラジかるッ!』は生放送だから、ギリギリですよと言われつつ、ひとバズりすることが出来ました。きっとクレームもたくさんあったんでしょうけれど。

でも、芸人だけで生活できるっていう稼ぎにはいかなかったんですよね……。テレビ番組は一本1~3万円くらいだし、ライブは1日に2ステージこなしてもギャラ1000円とか。交通費がその日のギャラを超えてくることもしょっちゅうでした。水着をほとんど持ってなかったから、3日連続で同じのを着続けるなんてこともザラで、江頭2:50さんに『お前の水着、臭えな!』って言われたこともありました。お返しに江頭さんのタイツを嗅ぎ、『クサっ!』ってやったけど、実際の江頭さんは柔軟剤のすごくいい香りがしていました。

テレビ番組では水着ネタは厳しかった/みほさん提供写真

ちなみに私は昔から貧乏だったからぬか漬けを作ってたんですよ。ぬか漬けなら野菜の芯も皮もあますところなく食べられるから。のちのちマイスターになるとは思ってなかったですけれどね。

貧乏時代には、『クワバタオハラ』の小原正子さんが六本木で経営していたバー、モナリザでバイトさせてもらっていました。朝までバーで働いて、そのあと従業員全員が小原さんにすしざんまいに連れていっていただいたりもして。時折厳しく言われたりしたこともあったけど、いま思うとあのときに色々教わってありがたかったなぁ、と。芸能界で活かせること、たっくさん学びました」

――水着姿に軽妙なトーク力があれば最強ですね。モテてしょうがなかったのでは?

「これが全っ然! パイパイ言いすぎですよね。逆に軽く見られすぎてヘンな男しか近づいてこなかったもので、30代はずーっと相手いなくて。

家庭的に思われようと、合コンにお手製のぬか漬け持って行ってドン引きされたこともありますよ。今考えたら重いですよね、『一生わたしのぬか漬け食べてください』ってアピールみたいだし(笑)。

みほさんが漬けたぬか漬け

夫になかなか言い出せなかったチェリー☆パイ

そうした経験から学んだこともあって、いまの夫と出会ったときにはぬか漬けのコトは一切話さなかったです。

『仕事は……、食品関係です』くらいにとどめておいて、仲良くなってから『実は発酵食品専門』だって伝えて、実際に家にくるようになって初めてぬか床を見せる――。そうやって3段階踏むくらいの慎重さは身に着けていました」

慎重堅実な行動の結果、昨年1月に一般男性と結婚。いまは1歳半になる男児の母でもある。

「夫とは共通の趣味の場で出会ったんですけれど、『チェリー☆パイ』自体を知らなかったんです。でもウチから当時のグッズが次々出てきちゃって。極めつけにネタ帳まで出てきちゃったから隠し切れなくなって、『実はチェリー☆パイでした』と告白したら、ポカーンって」

――TikTokで『乾杯、おっぱい、チェリー☆パイ』がなぜか若者たちの間でまたバズっています。どう思いますか?

「私たちのギャグだっていう感覚ではなくてフレーズだけ残っていたんですかね(笑)。『YouTubeとかTikTokで見たよっ』て、最近言われるんですけど、絶対15年前のギャグは今さら流行らないだろと思っていて……でも嬉しいです。世の中に何かを残すっていうのはやってみたかったんですよ。ダンディ坂野さんの『ゲッツ!』とか志村けんさんの『アイーン』とかを見てカッコいいなと思っていたんで。

『乾杯、おっぱい、チェリー☆パイ』は、結婚式の二次会とかで使ってました。そういう営業が増えてきて、おめでたい席に呼ばれることが多くなったんで『じゃあみなさん、グラスを片手に、『乾杯、おっぱい、チェリー☆パイ、おめでパイ』とかやってたら盛り上がったので」

みほさんと彼女が漬けたぬか漬け

――ギャグの再ブームで、ご主人の周りでもマネするひとが出てきたりして?

「それは悪い影響ですねぇ。謝らないと。『ごめんなパイ』って!。でも子どもがマネたら絶対とめますね。『チェリー☆パイって何!?』って言ってやめさせます‼」

取材中みほさんの隣にはベビーカーで寝る愛息子がいた。瞬時に母の顔になるみほさんに、後編では「ぬか漬けマイスター」の極意を教えてもらおう。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 撮影/村上庄吾