【新型コロナ】塩野義製薬社長が語る「国産ワクチン・治療薬メーカーの役割」
インフルエンザと変わらない世界の実現
─ 自宅待機している患者の症状悪化にも貢献できるわけですね。その治療薬は、いつ頃できそうですか?
手代木 ちょうど今、フェーズ1が始まったところです。この薬は新型コロナウイルス用に初めてデザインした化合物になります。
アビガンやイベルメクチンなどがどれくらいコロナウイルスに効果があるかは別として、これらの薬は別の疾患を対象に人に投与した経験のある薬なので、転用という形で新型コロナウイルスへの効果の検証が進んでいます。
われわれが、いま開発している薬は新型コロナウイルス用にデザインした化合物なので、初めて人に投薬します。動物実験等で安全性を積み上げておりますし、塩野義は感染症薬の専門メーカでもありますから、現時点で積み上げてきた研究のデータから、人での安全性も一定以上は期待できると思っております。
人の身体は治験をやってみないとわからないことがありますが、今のところ順調に安全性の評価が進んでいます。
1回投与である程度の量を服用しても、安全性は問題なさそうだとわかってきたら、今度は頻回投与をして、血中濃度なども計りながら用量を絞り込み、感染者を対象とした試験を開始します。それを10月には開始したいと考えています。
ですから、健康な方に投与するフェーズ1を7月22日から始め、遅くても、それを2カ月弱で終えて、10月には感染者への投与を開始するフェーズ2に入りたい。
感染者が増え、無症状や軽症の患者さまは自宅ないしホテルで療養されている方が一定数おられます。こういった方が、自宅で簡便に服用できる安全性の高い経口の抗ウイルス薬が必要です。
われわれが開発している薬は、経口の抗ウイルス薬なので、インフルエンザでいうタミフルやゾフルーザのようにご自宅ないしホテルのような場所でも簡便に服用いただけます。
安全性の高い抗ウイルス薬があれば、例えば、今、PCR検査や抗原検査は比較的簡便に受けられますので、検査の結果が陽性の方は、医師が必要と判断した時点で抗ウイルス薬を数日間服用いただいて、もう一度検査を受けて、陰性になったら日常生活にお戻りいただくということが可能かもしれません。
その一方で、初期に抗ウイルス薬を用いた治療をおこなっても、症状が残ったり、重症化してしまったりすることはありますので、そういった方には、別の治療を提供することが考えられると思います。塩野義製薬で目指しているのは、そういったインフルエンザと変わらない世界の実現です。
制度が整えばワクチンも治療薬も年度内に
─ そうなれば行政や医療の混乱が緩和され、現場の負担も軽減できますね。
手代木 はい。
わたしどもとしては、当初はいくらかの混乱もあると思いますが、ワクチン接種が進み、免疫のレベルが少しずつでも上がる人が増える中で、感染者に対する治療法として、経口薬ができれば、インフルエンザとかなり近い環境で皆様方に安心をご提供できるのではないかと考えています。
緊急事態宣言下でも感染者が増え、国民の方々に負担や我慢を強いる状況が続いていますが、それも限界に近付いて、なかなか人流のコントロールだけで、感染症をコントロールすることが難しくなってきているのだと思います。
そうなると、何らかの新しい方向性が必要になると思います。
それは、現在進んでいるワクチン接種を進めることや、安全性の高い経口の抗ウイルス薬の開発を進めることだと考えています。
