菅の失政にほくそ笑む…安倍晋三いよいよ「3度目の登板」へ準備が始まった…!

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結局、参謀は将軍にはなれないのか。誰もがそう思い始めた矢先、例の男が計ったように存在感を増してきた。菅が「時間切れ」となる総裁選まで残り4ヵ月。三たび天下を取るには十分な時間だ。発売中の『週刊現代』が特集する。

絶好調の独演会

「ムリとはなんだ、ムリとは! ええ!」

官邸に菅の怒声が響くことが、4月から明らかに増えている。以前はもっぱら官僚たちが標的だったが、最近は閣僚相手でもお構いなしに怒鳴る。

議員や官僚がひっきりなしに菅のもとを訪れる。しかし菅は孤独だ。誰かが恐る恐る「それは難しいかと……」と反論しようものなら、罵声が飛ぶ。

人心が離れてゆく。菅はますます苛立つ。

いま、菅の頭にはワクチンしかない。ワクチンを打ちまくらなければ、この窮地は打開できない。東京五輪も開けない。

だから、全国から逐一状況を報告させる。遅いところは締め上げる。ほら、「7月には絶対に接種を終わらせます」という自治体が増えてきた―。

(やればできるじゃないか。その調子でお前ら、寝ずにやるんだ。こっちだって寝てないんだ)

明らかな無茶振り、そして忖度の強要だが、意に介さない。

菅が平常心を失っているのは、コロナ対策がどん詰まりのせいだけではない。「あの男」のニヤニヤがこのところ、何度も視界に入ってくるのが鬱陶しくて仕方ないのだ。

たとえば、自民党が北海道・長野・広島の補選と再選挙で全敗した翌々日の4月27日にも、その男は上機嫌で喋りまくっていた。

「(米国の前大統領トランプが)日本に来たとき、『拉致被害者の家族のみなさんと会ってください』と言ったら、彼は『何分でもいいよ。それはシンゾーにとって大切なのか』と言う。

だから『いや、私にとって大切ということではなくて、日本にとって大切なんですよ』と(答えた)」

衆院議員の木原誠二、平将明とともにネットの生放送番組に出演した前総理の安倍晋三が、こんな調子で1時間13分にわたって在任時の思い出を語り続けたのである。

「政局の話こそしなかったけれど、トランプ、メルケル、オバマと各国首脳との逸話をハイテンションで滔々と語り、まるで外交が苦手な菅総理に当て付けるようでした。

収録が終わった後も帰ろうとせず、さらに1時間も喋っていたそうです」(自民党中堅議員)

身振り手振りをまじえて、さながら「ひとり再現VTR」だ。

「伊勢志摩サミットの時に、お手水をするじゃないですか。私はみんなに言ったんです。『日本の宗教的行事ですから、やらなくても結構ですよ。私は神道だからやりますよ』と。

そうしたらオバマが『私もやるよ。どういう意味があるんだ』と聞くんです。『身が清められる、いろんな穢れが落ちるんです』と言ったら、オバマ大統領は『なら、俺たちは1トンくらい(水が)必要だな』って(笑)」

大統領たちとの「ツーカー」エピソードが次から次に出てくる。

しかし、一方の菅はこの番組の10日前、初めての訪米で大統領のバイデンにハンバーガーを1個出されてあしらわれた。

ファイザーのCEOには「忙しい」と会ってすらもらえなかった。わざわざ訪米前に安倍の事務所を訪れて教えを乞うたというのに、散々だ。

(なにがドナルドだ、シンゾーだ。どっちも過去の人のくせに)

ボクは役者が違う

憔悴しきった菅を尻目に、安倍はこの1ヵ月だけでも「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」「保守団結の会」「原子力リプレース推進議員連盟」と議連の会合3つ、自民党新潟県連の会合、さらに講演会「日本国憲法のあり方を考えるシンポジウム」で立て続けにマイクを握った。

安倍に近い自民党議員が言う。

「どこへ行っても会場は満杯。安倍さんとしても、党内と国民にどのくらい『安倍待望論』が広がっているか見極める意図があるのでしょうが、わざわざ確かめるまでもないという感じです」

1年前、体調不良で国会にも記者会見にも出てこなくなった弱々しい安倍の面影はもうない。この4月には、ごく親しい自民党関係者の前でこう豪語したという。

「もう体調は万全。これからはアップデートしたアベノミクスで、コロナ後の日本に貢献したい」

アベノミクス、それは「安倍政権の」経済政策を指す言葉にほかならない。「スガノミクス」、そんな言い回しをするつもりはハナからない。

「もちろん、自分が政権を取るとまでは言いません。しかし、一兵卒として政権を支える、という言葉とは裏腹の大言壮語です。

党内が失政続きの菅総理に倦んでいること、皆がカムバックを期待していることをわかった上で言っているんでしょう」(自民党関係者)

安倍は確信を抱いている。俺とスガちゃんではそもそも器が違う。格が違う。役者が違う。あんな草履取りではなく、みんな俺の帰りを待っているじゃないか―。

二度あることは三度ある。菅が失策を連発する様子を認めた安倍が、3度目の登板に向けて動き出したことは、もはや疑いようもない。

そして5月3日、安倍は菅に対して直接的なメッセージを送った。BSフジ「プライムニュース」で述べた「菅再選支持表明」だ。安倍の派閥、清和会所属議員が言う。

「番組の中で安倍さんは、『総理を支える』と何度も繰り返し、派内では『言いすぎでわざとらしい』とまで言われていた。

要するに、こういう意味です。『総理になれたのは俺のおかげだということを忘れるなよ』」

菅は、ますます腸を煮えくりかえらせた。

(こっちが必死な時に、図に乗りやがって)

元の上司がしゃしゃり出てきて、好き勝手なことを言うほど腹立たしいものはない。殴りたいくらいだ。

菅の「宣戦布告」

安倍が辞めたおかげで、菅が念願の総理の座を摑むことができたのは事実だ。とはいえ、安倍はコロナ禍の真っただ中で政権を投げ出した。

その尻拭いをしているのは自分ではないか。菅は思う。このボンボンが―。

自民党ベテラン議員が言う。

「菅政権の要職には、安倍さんの盟友である麻生(太郎財務相・副総理)さんの他にも加藤勝信官房長官、弟の岸信夫防衛相など、安倍印の人ばかりが就いている。

特に、菅さんは腹心の梶山弘志を官房長官にしたかったのに、安倍さんがどうしても加藤にしろと言うから呑んだ。そして案の定、加藤は機能していない。

東京五輪も、あの森喜朗さんですら当初は『コロナ終息には時間がかかるから、2年延期にしたらどうだ』と言っていたのに、安倍さんが自分の総裁任期に間に合わせようと1年延期にした。そうしたら、このざまです」

安倍はコロナの難局を菅に押し付けて逃走した。なのに、それを忘れたかのように菅をコケにし、自分の失敗は棚に上げて「なんなら、もう一回やってもいいけど?」と色気まで見せているのだ。

(許すべからず)

安倍が人前への露出を増やし始めたのと時を同じくして、不可解な事件が立て続けに起きた。それは菅による「宣戦布告」だと永田町で捉えられている。

ひとつめは、財務省が突如「赤木ファイル」の存在を認めたことだ。

安倍が中心となって起きた森友学園問題で、公文書の書き換えを命じられた近畿財務局職員の故・赤木俊夫さんが、経緯を文書に書き残していた。それが赤木ファイルだ。

安倍とその妻・昭恵の関与を示す証拠となるかもしれない、超のつく重要書類である。

「そんなものを出すか出さないかなんて、財務省単独では絶対に判断できない。

ファイルの隠蔽を指示したのは安倍氏か今井(尚哉前首相補佐官、安倍の最側近)氏、菅総理のうちの誰かと言われていましたが、今回、菅総理は情報公開を容認した。

明らかに安倍氏、そして麻生財務相に対する牽制です」(全国紙財務省担当デスク)

そしてもうひとつが、前経産相で衆院議員の菅原一秀に、新たに公選法違反疑惑が浮上したことだ。

菅原は昨年、選挙区内の有権者に香典を出したかどで捜査を受けたが不起訴になった。

それが先月、地元のイベントに祝儀を出していたことが寄付行為にあたるとして、東京地検特捜部の再捜査を受けたのである。

「菅原さんは菅グループのひとつ『令和の会』の会長で、菅総理が目を掛ける子分。この大変なタイミングで狙い撃ちされたのに、総理が彼を守ろうとしないのが不可解だ。今やる必要がある事件なのかどうかも謎だ」(自民党閣僚経験者)

どちらも一歩間違えれば、菅自身が巻き込まれかねない案件である。官房長官時代の菅であれば、どんな手を使ってでも握りつぶし、表沙汰にはしなかっただろう。

そんな爆弾を菅が野放しにする理由は、ひとつしか考えられない。

(俺をおちょくり、陥れようとするなら、どうなるかわかるよな。またモリ・カケ・サクラを蒸し返されたいか? 東京地検も動くかもしれないぞ)

これらは安倍と麻生に対するメッセージなのだ。

二階と小池の真意

夏までに何がなんでもワクチンを行き渡らせ、無観客だろうが東京五輪を強行する。菅が安倍、そして麻生を黙らせ退ける道は、それしかない。

五輪後の総選挙に敗れたら最後、9月に控える自民党総裁選で菅は戦えない。そこへ安倍が出てくる展開になれば、自動的に安倍の3度目の登板が決まるだろう。

まもなく清和会は細田派から安倍派に衣替えする。自民党最大派閥の領袖となる安倍に歯向かうのは、容易ではないからだ。

目下、菅にとって読めないのが党幹事長、二階俊博の動向である。二階はこのところ、東京都知事の小池百合子とあからさまに距離を詰めている。

表向きは五輪情勢について情報交換をしているというが、不穏なのは先月中旬に二階が「五輪中止」を視野に入れるような発言をしたこと、そして会談の時間が徐々に長くなっていることだ。

「いま最大の懸案は、小池が政府に先んじて『五輪中止』を言い出すのではないかということ。小池はそれをテコにして、国政復帰を画策する可能性が高いのです。

この状況では、むしろ開催強行よりも中止の旗振り役になるほうが支持を得やすい。小池が『中止の責任をとる』と言って都知事を辞め、二階さんが後見人となって国政に戻れば、菅さんも安倍さんも無視できない」(前出・自民党中堅議員)

過去に二階は小沢一郎らとともに自民党を割り、自由党や保守党を作って時の政権を揺さぶってきた。当時の二階は「5人いれば何でもできる」が口癖だった。

政治家人生最後の大政局となるこの夏に、かつての勘を取り戻すのではないか。小池を担いで大立ち回りを見せる可能性もある……。

小池との接近は、そう思わせるためのブラフかもしれないし、あるいは本気なのかもしれない。二階の真意を読み切れる者は永田町に、いやこの国に存在しない。

コロナが招いた未曾有の政局は、いよいよ大詰めを迎える。すべてが終わった時に笑うのは、安倍か、菅か、二階か。それとも―。
(文中一部敬称略)

発売中の『週刊現代』ではこのほかにも「スクープ ワクチン接種で死んだ日本人39人 遺族と医師の証言」「年齢別 申請すればもらえるおカネ 無料で受けられるサービス」「わがままに死ぬための教養」「トヨタvs.ホンダ 本当の勝者はどっちだ」「大手4社の100商品を全実名テスト 体にいいパン 悪いパン」などを特集している。

『週刊現代』2021年5月22・29日号より