元世界3位シェアのLGもスマホから撤退する! 激安時代の裏で進むサバイバルレースの行方

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ここ最近、5G対応スマートフォンでも2、3万円という低価格で販売されているモデルが急増するなど、市場では安価なスマートフォンが定番化しています。

その一方で、激しい価格競争によりスマートフォン市場から撤退するメーカーも出てきているようです。“値段”で大きな変化が発生しているスマートフォンの市場動向を追ってみました。


2、3万円台で高い機能・性能のスマートフォンが増加
2021年に入って以降、5Gに対応したリーズナブルなスマートフォンが増えています。

実際、
NTTドコモやKDDI(au)が販売しているシャープ製「AQUOS sense5G」
auが販売している韓国サムスン電子製「Galaxy A32 5G」
ソフトバンクのワイモバイルブランドが販売している中国ZTE製「Libero 5G」
これらは、いずれも最新の5G通信に対応しながら3万円台で販売されています。


「Libero 5G」はワイモバイルのオンラインショップで、3万1680円で販売されている

さらにソフトバンクが販売している中国シャオミ製「Redmi Note 9T」は、同じく5G対応ながら2万円台、税抜きでは2万円を切る低価格を実現して大きな驚きをもたらしました。

2020年は10万円を超える高額な5Gスマートフォンが多かっただけに、1年をまたずにこれだけ急速に価格が下がっていることには驚きもあるかもしれません。

ですが5Gに限らなければ、もっと安くて高い機能・性能を備えたスマートフォンは市場に多数のモデルが出てきています。
例えば中国レノボ・グループ傘下の米モトローラ・モビリティが提供する「moto g10」「moto g30」は、4G対応のSIMフリースマートフォンながら、2万円台でそれぞれ4800万画素、64000万画素のカメラを搭載した4眼カメラを搭載しています。

さらにシャオミの4G対応SIMフリースマートフォン「Redmi Note 10 Pro」は、1億800万画素カメラを搭載し、ミドルクラスの中では上位機種向けとなるチップセット「Snapdragon 732」を搭載するなど、高い性能を備えながらも想定販売価格は3万4800円とかなりお値打ち価格が設定されています。


「Redmi Note 10 Pro」は3万円台ながら1億画素超えのカメラを搭載する


新興国に強い中国メーカーが価格破壊をけん引
こうしたスマートフォン低価格の傾向を見ると、
「どうしてもiPhoneでないとイヤ」
こうした強いこだわりがない人であれば、
2〜3万円程度のモデルで十分に満足できる機能・性能を持つスマートフォンが手に入るようになったと感じることができるでしょう。

こうしたスマートフォンの低価格化は消費者にとっては、とても嬉しい状況であるのですが、低価格なモデルを提供するメーカー側にとっては、非常に大変な状況となっています。

スマートフォンの低価格化は、
チップセットや、カメラに用いるイメージセンサーなど、スマートフォンを構成する部材の高性能化や低価格化が進んだことが要因の1つです。

ですが、そもそも価格の安いスマートフォンは、販売しても得られる利益が少なく、十分な利益を得るためには、より多く販売する必要があります。
それゆえ安いスマートフォンを販売し続けるためには、スマートフォンを世界中にたくさん販売しなければなりません。

中国メーカーは、そこに大きな強みを持っているのです。
なぜなら中国メーカーは、お膝元に中国という巨大市場を有しており、元々新興国を主体に販売を拡大して世界シェアを伸ばしてきたため、低価格のスマートフォンを世界各国で、たくさん販売する商戦を得意としているからです。

例えばここ最近日本でも勢力を伸ばしているシャオミや中国OPPO(オッポ)は、中国本土や新興国を主体に販売を伸ばして成長してきた企業です。
また最近では、インドや東南アジアなどで人気を獲得し、さらにワイヤレスイヤホンなどのIoT製品で日本進出を発表したばかりのリアルミー、そして「Tecno」ブランドを展開しアフリカで人気を獲得している伝音科技など、日本ではほとんど知られていない中国メーカーも急成長し、世界的にも高いシェアを持つようになっているのです。


IoT製品で日本進出を図るリアルミーは、新興国のスマートフォン市場で高いシェアを持っている


老舗LGもスマホ撤退、中国外のメーカーは厳しい状況に
一方、先進国では既に多くの人がスマートフォンを手にしているため新規の販売台数は伸び悩み、落ち込んでいます。さらに基本性能がアップしたことで高額なハイエンドモデルでなくても十分満足できる性能を持つ低価格スマートフォンに対するニーズが高まっています。

こうした状況下で、かつて先進国向けにハイエンドモデルを主体に成長してきたメーカーは、現在、軒並み厳しい状況に追い込まれているのです。

実際、
2013年に、台湾のHTCが、
2014年に、ソニーモバイルコミュニケーションズが、
2015年に、韓国LGエレクトロニクスが、
スマートフォン事業で赤字に転落しています。
その後、いずれの企業も長年赤字に苦しんでおり、ソニーモバイルコミュニケーションズはスマートフォンの販売台数を全盛期の10分1にまで減らすなど、大幅な規模縮小を余儀なくされています。

そうした中、かつて世界トップ3のシェアを誇った老舗とも言えるLGエレクトロニクスが、
2021年4月5日に、携帯電話の事業において赤字解消の目途が立たないことから撤退を表明しました。

かつてスマートフォン市場において上位でシェア争いをし、スマートフォン市場を牽引してきたLGエレクトロニクスでさえ撤退しなければならい実情を見ると、スマートフォンの価格競争の激しさが理解できるのではないでしょうか。


LGエレクトロニクスは近年、ケースを装着して2画面で使えるスマートフォンに力を入れていた

そしてLGエレクトロニクスの撤退により、スマートフォンの世界出荷台数シェア上位企業において、中国以外の国や地域の企業は、世界トップシェアを維持する韓国サムスン電子と、iPhoneで独自路線を貫く米アップルのみとなってしまいました。

今後もスマートフォンの価格競争は一層加速し、それについていけないメーカーが脱落する傾向は続いていくと見られています。
日本ではiPhoneの人気が高いものの、今後、中国メーカー製スマートフォンの存在感はさらに大きくなっていくかもしれません。
執筆 佐野 正弘