村田雄浩、役者人生の転機に伊丹十三監督「言葉のセンスに感嘆」

「純朴で、ジャガイモのような顔の好青年」
山田洋次監督が、デビュー間もない村田雄浩(60)を評した言葉だ。村田は今も、「最大の賛辞です」と胸を張る。
映画デビューは、『思えば遠くへ来たもんだ』(朝間義隆監督、1980年)。武田鉄矢演じる臨時教師が、九州から秋田の高校に赴任し、柔道部の顧問として奮闘する物語だ。
「小学校から柔道をやっていたこともあり、僕が演じたのは、停学処分を受けた柔道部員。高校3年間はラグビー部だったので、最近もラガーマン役をいただきました(『不惑のスクラム』NHK、2018年)。なんでも、やっておくもんですよね(笑)」
埼玉県立三郷高校に第1期生として入学。ラグビーで汗を流しながら、初代生徒会長を務め、自主映画作りにも打ち込んだ。
「格闘あり、スタントありの8ミリ映画を撮りました。『危険が危ない』という、わけがわからないタイトルでしたね(笑)。ストーリーは、ぜんぜん覚えていないんですけど」
16歳のとき、新聞広告で見つけた「劇団ひまわり」に入団した。だが、在籍者も多く、自分で動かなければ刺激も得られない。
「ならばと、現在は脚本家として活躍している一色伸幸さん(映画『私をスキーに連れてって』、1987年など)が在籍していたので、脚本を書いてもらって自主映画を撮りました。作品は、一色さんが通っていた青山学院大学で上映。それが、本気で俳優を目指すきっかけになりました」
焼酎のグラスを片手に語る村田が訪れたのは、東京・自由が丘の「Kenny」。ハワイで買い付けたインテリアや雑貨と、今では珍しいネオン管が店内を彩るが、「料理は厚揚げ焼き、牛肉とニンニクの炒め物など、和洋中なんでもあり(笑)」と村田。
店主は、刑事ドラマや時代劇への出演が多い、俳優の青島健介。村田について聞いた。
「タケさんとは、もう36年のつき合いになります。とにかく優しい方。でも、酔うと『店閉めてカラオケ行こう』って(笑)。タケさん、斉藤和義とか、うまいんですよ」
デビューしてすぐ、“地方出身の純朴ないい人” 役として重宝されたが、じつは東京・祐天寺の出身。一時は自宅に、全国各地の方言を吹き込んだテープが山ほどあった。仕事は途切れなかったが、物足りなさも感じていた。そんな村田に、1992年、相次いで転機が訪れた。まず、伊丹十三監督作品への出演。
「ヤクザの民事介入暴力を題材にした『ミンボーの女』では、暴力団に立ち向かう、気弱なホテルマンを演じました。
伊丹作品には3作出させていただきましたが、監督の言葉のセンスがすごいんです。僕みたいな朴訥な風貌の役者に、おしゃれでアカデミックな台詞を言わせると、それだけで印象的なシーンとして、観客の記憶に残るんです」
『ミンボーの女』の演技が話題になっていたころ、もうひとつの “問題作” が公開された。『おこげ』(中島丈博監督)だ。
「ゲイの役で、ベッドシーンもありました。当時は同性愛の映画はまだ少なく、お蔵入りも噂されながらの撮影でした。
『ミンボーの女』が話題になって、上映館が決まった部分もあると思います。台本を読んだとき、『ほかの役者が演じたら、絶対に後悔する』と思いましたが、葛藤もありました。主宰していた劇団の仲間にも暗に止められて(笑)。
でも恋人役は、尊敬する中原丈雄先輩でしたし、監督も心の奥底の動きを撮ってくれた。役者として覚醒できたと思います」
これらの作品で村田は、1992年の報知映画賞助演男優賞や、1993年の日本アカデミー賞優秀助演男優賞などを受賞した。

三郷高校では柔道部を創設したが、没頭したのはラグビー
2006年からは、『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)にも出演。ベテランとなった村田も多くを学んだ。
「橋田壽賀子先生の “伝えたいこと” が台詞に詰め込まれていますから、一字でも間違えるとその思いが視聴者に届かない。しかも、台詞が長い(笑)。緊張感はハンパじゃありません。
先生は『私よりあなたのほうが、この役をわかってるんだから、好きに言っていいのよ』と言ってくださるんですけど……なかなか、そういうわけにはねえ(苦笑)」
同年、46歳で20歳年下の女性と結婚。49歳のとき、父になった。
「娘は今、10歳です。僕はおじいちゃんのような年齢ですから、本当にかわいいですね。
2020年3月から、春休み中の娘と、僕が乗馬の訓練を受けている群馬の乗馬クラブに滞在していたんです。そうしたら緊急事態宣言が発令され、しばらく帰京できず娘と厩舎の2階で暮らしました。学校から宿題が送られてきてもなかなか手をつけず、登校の日に『どうしよう、終わってないよう』と、泣き言を言っていました(笑)」
帰京して、久しぶりに足を運んだのがボウリング場だ。小学校2年から続け、2012年にパーフェクトも出した。2015年には、日本プロボウリング協会から「名誉プロボウラー1号」の称号を与えられた。
「でもね、『2号』はまだいないんですよ」
店内が爆笑に包まれた。「Kenny」にも、日常が戻りつつある。
むらたたけひろ
1960年3月18日生まれ 東京都出身 1980年、映画『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』での朴訥とした演技で強い印象を残し、以降、多くの映画・ドラマで活躍。22歳で出演した『徳川家康』(1983年)をはじめ、2020年放送の『麒麟がくる』など、NHK大河ドラマへの出演も多い
【SHOP DATA/Kenny’s Grill&Bar】
・住所/東京都目黒区自由が丘1-24-2 W SPACE 2F
・営業時間/18:00〜26:00
・休み/日曜、祝日
(週刊FLASH 2020年7月7日号)
