5月2日、上海のビーチには人が溢れかえっていた(写真:ロイター/アフロ)


 日本は悲しい「巣ごもりGW」になってしまったが、隣の中国のGW5連休(5月1日〜5日)は、「報復性消費」に沸いている。

 何だか恐そうな名称だが、これは「リベンジ消費」の中国語である。1月以来、新型コロナウイルスの影響で「巣ごもり生活」を強いられていた14億中国人がこのGW、一気呵成に「爆買い」「爆食」「爆旅行」に走っているのだ。

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久々のデパートに客が殺到

 まず「爆買い」に関しては、中国のテレビニュースを見ていると、5年前に銀座で「爆買い」していた風景を髣髴させる。久々にオープンしたデパートなどに、客が殺到しているのだ。「人山人海」(黒山の人だかり)という中国語でアナウンサーは形容していたが、まさに人が山や海のように広がっているイメージだ。

 例えば、中国最大の3200万人を擁する重慶市にある家電量販店「蘇寧」(ラオックスの親会社)の旗艦店。5月1日の朝10時にオープンするや、客が殺到し、わずか1時間で1000万元(約1億5200万円)を売り上げてしまった。

 近くにあるライバル店の「京東」も、この日だけで2万8000人もの来客があった。1日の来客数としては過去最高を記録したという。

 スーパーマーケットも、すごいことになっている。3月の株式時価総額で世界第6位に躍り出たアリババが、中国全土21都市で154店舗展開する「盒馬鮮生」(フレッシュ・フーマー)というスーパーがある。

 フレッシュ・フーマーは、新型コロナウイルスの発生源で、4月8日まで76日間の「封鎖」が続いた武漢がある湖北省を救おうという運動を始めた。その第1弾として、湖北省の名産品の一つであるザリガニ(中国人はエビの代わりに好んで食する)を、4月1日に10億元(約152億円)分も買い上げた。

 それを5連休最後の5月5日、売れ残った分を、通常価格の55%で販売するというのだ。フレッシュ・フーマーの「売り」は、「3km以内なら注文から30分以内で無料配達する」ことなので、ザリガニだけでなく他の商品も一緒に注文してもらおうという思惑だろう。

 アリババに関して言えば、自身のネットショップサイト「淘宝」(タオバオ)に、上海の老舗百貨店「百聯」を、4月30日から「登壇」させた。このデパートの商品を、「淘宝」上で自由に買えるようにしたのだ。すると、同日午前中の3時間で、「来客者数」が100万人を超えたという。

高級ホテルは予約がぎっしり

「爆食」に関しては、この3カ月余りのコロナ騒動で、多くのレストランやカフェなどが倒産の危機に瀕していた。それがGWで、ようやく息を吹き返した感がある。

 中国は、春と秋が短い大陸性気候のため、5月に入るともう真夏だ。例えば5月3日の北京は29度、上海は34度まで上がった。両都市のレストランで生ビールを飲む様子が、テレビで映し出されていたが、他の都市も推して知るべしだ。

「爆旅行」に関しては、4月21日に中国最大の旅行代理店「携程」(シートリップ)が、「2020『五一』旅行消費新趨勢ビッグデータ予測報告」を発表した。そこには、「今回は私たちの今年初めての旅行なのだ」と感慨深げに銘打っていて、自由に旅行に行けるようになったGWを待ち望んでいた様子が、ひしひしと伝わって来る。

 この「報告」によると、今年のGW旅行の特徴は「周辺遊」だという。諸外国のコロナ禍がまだ収まっていないため、海外旅行には基本的に行けない。そのため「半径300km以内で3泊4日以内」という「周辺遊」が主流だというのだ。ちなみに、旅行先の人気都市ベスト10は、上海、広州、北京、成都、深圳、杭州、南京、西安、重慶、長沙である。

 また今年のGWの特徴として、高級ホテルから先に予約が埋まっていることを挙げている。中国では全国のホテルを6種類に分類しているが、最も高級な「5つ星ホテル」は、4月15日時点ですでに、全国平均で5割以上の部屋が埋まっているという。また、ホテルの予約金額で見ると、「中国のハワイ」こと海南島の三亜が一番多いそうである。「この数カ月、お金を使うこともなかったから、ちょっと高い旅行に行くか」という気分なのだろう。

落ち込んだ第三次産業の回復のため政府も「報復性消費」を後押し

 中国のネットやSNS上では、「報復性消費」の話題が目白押しだ。ある人生相談のコーナーでは、大学生の青年が、「ボクの彼女が『報復性消費』に走って困っています。別れた方がよいのでしょうか?」と相談していた。識者が答えて曰く、「君が将来、彼女の『報復性消費』に耐えられるくらい稼げばいいではないか」。こうした大らかな雰囲気が戻ってきたのである。

「報復性消費」は、陰に陽に中国政府が後押ししていることも忘れてはならない。何と言っても、中国の第1四半期のGDPの成長率は、前代未聞のマイナス6.8%! 「2000万人失業時代」とも囁かれている。

 中国の昨年のGDPは、第一次産業が3.8%、第二次産業が36.8%、第三次産業が59.4%である。第二次産業は製造業であり、これは極論すれば工場の稼働だ。すなわち、工員が戻って来て工場が再稼働すれば、V字回復できる。第1四半期の全国規模以上(大企業)の工業増加値は、前年同期比で8.4%も下降したが、中国政府は「復工復産」(工業と産業の復興)を唱えており、3月にはマイナス1.1%まで「回復」した。

 ところが第三次産業はサービス業であり、なかなかV字回復というわけにはいかない。

 第1四半期の第三次産業の増加値は、前年同期比で5.2%下降した。3月の全国サービス業生産指数は、9.1%下降。1月〜2月、規模以上のサービス企業の営業収入は12.2%下降。社会消費品小売総額は19.0%下降。そのうち飲食業収入が44.3%下降、商品小売が15.8%下降である。

 そのため中国政府としては、今回のGW5連休を、サービス業と消費のV字回復の起爆剤にしたいのである。今月22日には、例年より2カ月以上も遅れて全国人民代表大会(国会)が開かれる。あまりもたついていると、国民の不満・不安が政府に向かってしまう。

日本からも爆輸出

 最後に、日本との関係で、興味深い話を一つ。在日中国人グループを仲介として、日本の化粧品を始めとする商品の「密かな爆輸出」が流行っているというのだ。


 日本は周知のように、デパートなどが軒並み閉店状態で、商品を売る場所がない。ところが中国人は「報復性消費」真っ盛りで、日本の商品を買いたい。というわけで、日本の商品が安く大量に、中国に流れているというのだ。

 機を見るに敏な中国人の「時差ビジネス」とでも呼ぶべき現象である。だが、中国人のビジネス手法は、基本的に現金オンリーなので、日本の業者としてもありがたく売っているはずだ。その意味では、日中ウイン・ウインの関係である。

「携程」のホームページには、富士山の写真が大きく掲載されている。多くの中国人が「早く日本に旅行に行きたい」と待ち望んでいることも事実である。

筆者:近藤 大介