中国「Xiaomi」(シャオミ)の圧倒的なコスパ戦略は、日本の消費者と家電市場まで変える可能性がある?

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●満を持して登場する中国の大手スマートフォンメーカー「Xiaomi」
12月9日、都内にて中国のスマートフォンメーカー「Xiaomi」(シャオミ)が製品発表会を開催しました。
シャオミが日本市場で直接商品展開を行うのは初めてとなります。

発表会では
・Mi Note 10:1億800万画素のカメラを含めた5眼カメラ搭載スマートフォン
・Mi Note 10 Pro:上記スマートフォンの上位モデル
・Mi スマートバンド4:最大20日間駆動のスマートバンド
・Mi 18W 急速充電パワーバンク3:10,000mAhのモバイルバッテリー
これらのモバイル製品が発表されたほか、

・Mi IH炊飯器:スマートフォンで外出先からも遠隔操作できる炊飯器
・Xiaomi メタルキャリーオンスーツケース:耐久性に優れた軽量のスーツケース
・Xiaomi スーツケース クラシック:上記スーツケースの小型モデル
このようなスマート家電製品や生活用品の展開も発表しています。


Mi Note 10を発表する、Xiaomi グローバル 東アジア地域 ジェネラルマネージャー スティーブン・ワン氏


●シャオミは日本市場にも価格破壊をもたらすのか?
シャオミの強みはなんと言っても「低価格」です。
中国国内でも
・圧倒的な安さ
・価格以上の高品質
この2つで若者の人気を集め、世界市場でも支持を集めてきた企業です。
今回日本での展開が発表された5シリーズ7製品についても、

・Mi Note 10:52,800円(税別)
・Mi Note 10 Pro:64,800円(税別)
・Mi スマートバンド4:3,490円(税別)
・Mi 18W 急速充電パワーバンク3:1,899円(税別)
・Mi IH炊飯器:9,999円(税別)
・Xiaomi メタルキャリーオンスーツケース:17,900円(税別)
・Xiaomi スーツケースクラシック:7,990円(税別)
このように、他社製品と比較しても、かなりコストパフォーマンスが高い低価格モデルを投入しています。
発表会では、高品質のアピールに多くの時間が割かれ、日本市場に価格破壊の波を起こそうとしているのは明らかです。


これらの製品は、すべてオンライン通販大手のAmazon.co.jpにて販売される

シャオミ製品の高いコストパフォーマンスについて、スティーブン・ワン氏は
「製品の品質だけではない。サービスの品質の高さ、洗練されたデザインなども重要な要素だ」
こう語るとともに、ハードウェア事業全体での純利益を常に5%以内に抑えることで、低価格と高品質の両立を図っている企業努力と企業スタンスを強くアピールしています。

しかしシャオミは、単に利益を削って低価格な製品を提供しているのではありません。
利益を一定に保ち、それ以上の利益を研究開発に投資することで、常に革新的で高品質な製品作りを目指していることをアピールしているのです。


低価格ばかりにフォーカスするのではなく、飽くまでも製品開発と品質追求が第一であると熱弁するスティーブン・ワン氏


●シャオミに吹く強い「追い風」
では、シャオミに日本市場での勝算はあるのでしょうか。

現在の日本のSIMロックフリー端末市場では、
・ファーウェイ
・OPPO
・ASUS
こういった、中国系および台湾系企業の製品が人気モデルの上位を占めています。

米中による貿易摩擦の影響は懸念されるものの、日本のスマートフォンメーカーの多くが市場撤退したこともあり、以前に比べてSIMロックフリー市場では中国系メーカーのスマートフォンに対する拒絶感や偏見を持つ消費者は少なくなってきています。

むしろ数年前からは、価格に対する性能や品質の高さから製品の評価が上がり、現在の市場人気を形成するに至っています。
もはや中国系メーカーなしでは、SIMフリースマートフォン市場を語れなくなったとも言えるかもしれません。

こうした現在のSIMフリースマートフォン市場の状況は、かつて1980年代に日本企業が自動車や家電製品で米国市場を席巻していた時代と酷似しています。
海外メーカーの低価格と高品質を両立した製品が、国内企業を撤退へと追い込んだのです。


米中の貿易摩擦に巻き込まれる形となったファーウェイだが、市場展開への野心は衰えることがない

シャオミに勝算があるとするなら、
・日本の消費者の中国製品に対する抵抗感が下がっている
・増税などによる負担から、低価格製品の市場訴求力が高い
・低価格というだけでなく、高品質である製品を選択する消費者が増えている
・製品開発への真摯な企業姿勢は、ものづくりに厳しい目を持つ日本人の気質に合う
・若者をターゲットとしたシンプルでブレのないブランドデザインがわかりやすい
こういった傾向が、シャオミにとって社会的な追い風となる可能性があることです。


企業全体としてデザインの統一感を高めることがブランドの醸成に寄与している


シンプルでプリミティブなデザインは21世紀の高級感への価値観として定着しつつある

また日本におけるモバイル業界全体の変化もあります。
スマートフォンの本体代金と通信料金の完全分離によって、スマートフォン本体の実質的な販売価格は高額化しています。
これも、シャオミのような高コストパフォーマンスと低価格を実現できるメーカーにとって大きな追い風と言えます。

これまで日本のモバイル市場では、移動体通信事業者(MNO)が様々な契約条件である、いわゆる「縛り」を設ける代わりに、高性能で高価なスマートフォンでも比較的安価に購入できる施策を展開していました。

しかしこれからは、かつてのような大きな値引き、キャッシュバックなどを利用した販売施策は難しくなります。

これからの消費者が、同じ性能や品質であれば、
・高額な製品より、低価格な製品を選択する
・同じ性能と品質で、安価な製品を探す
こうした消費行動にシフトするのは、自然な流れです。

シャオミの製品群は、まさにこうした消費者層を対象にしており、取り込んでいくものと思われます。


●市場展開への不安要素は若干あるが、ニーズを掴めば強みが活かせる
いくつもの追い風があるとはいえ、シャオミの戦略に不安がないわけではありません。

今回発表されたMi Note 10およびMi Note 10 Proは、いずれも比較的高性能なモデルで、ミドルハイからハイエンドクラスの製品です。
コストパフォーマンスの非常に高い製品であることは間違いありません。
しかし実売5〜6万円台という価格は、SIMロックフリー市場では高価格帯にあたります。

SIMロックフリー市場では、性能よりも絶対値としての価格の安さが評価、重視される傾向にあります。
市場全体を見たとき、もっとも売れている価格帯は、さらに安価な2〜3万円台のローエンドからミドルレンジのスマートフォンだからです。

シャオミが日本市場で成功するには、この2〜3万円台の価格帯が必要不可欠です。


今回のシャオミ製品のコストパフォーマンスは圧倒的だが、さらなる低価格を求める市場ニーズと現状では噛み合っていない

また、販売チャネルがオンライン通販サイトのみという点も、現状の大きな弱点です。
ファーウェイやOPPOは、ヨドバシカメラやビックカメラといった大手家電量販店との販売契約によって、知名度とシェアを延ばしてきました。
シャオミもまた、実店舗による販売チャネルの早急な開拓と確立が必要です。

とは言えシャオミの日本進出は、いまスタートしたばかりです。
ファーウェイやOPPOが行ってきたように、日本市場での戦略が早期に修正されることは十分に予想できます。

シャオミが「低価格と高品質の両立」という自社のポリシーとビジョンを崩さない限り、中長期での成功は十分にリアリティのある予測図だと思われます。

問題は、シャオミがどこまで日本人の心を掴めるのか?という点です。
戦略次第では、日本のモバイル市場の勢力図だけでなく、家電市場に至るまで、大きな変動をもたらすかもしれません。
執筆 秋吉 健