皮膚感触を持ち人をやさしく抱きしめることができるロボットが登場
ミュンヘン工科大学の研究グループが、全身に1万3000個以上のセンサーを備え、感触や温度だけでなく何かがボディの近くにあることさえ感じることが可能なロボット「H-1」を開発しました。これにより、安全性の高い介護ロボットなどが登場することが期待されています。
A Comprehensive Realization of Robot Skin: Sensors, Sensing, Control, and Applications - IEEE Journals & Magazine
Sensitive robots are safer - TUM
https://www.tum.de/nc/en/about-tum/news/press-releases/details/35732
Biologically-inspired skin improves robots' sensory abilities
https://techxplore.com/news/2019-10-biologically-inspired-skin-robots-sensory-abilities.html
以下のムービーを見ると、人間の皮膚と同様の仕組みでものを感じることが可能なロボット「H-1」が実際に作動している様子が一発で分かります。
Sensitive Skin for Robots - YouTube
これまでも、感圧センサーなどで人間の皮膚を再現しようとしたロボットは登場していましたが、「従来のロボットは数百個程度のセンサーで処理能力が限界になってしまう」という問題がありました。このため、皮膚に500万個の受容体を持つ人間の肌のような「感覚」を再現することは不可能だったわけです。
一方、H-1の全身には温度・圧力・加速度・物体の接近を感知するセンサーを備えた1260のセルが配置されており、合計1万3000個以上のセンサーによって人間のような感覚を得ることが可能になっています。
H-1が桁違いに大量のセンサーを内蔵した人工皮膚を持つことに成功したのは、「イベント駆動型システム」という新しいアプローチを導入したからです。
従来のロボットは、センサーの情報を全て処理してきました。一方、H-1は「新たな感触」だけを新規のイベントとして捉えて処理します。そのおかげで「人がシャツを着ると、肌が慣れてシャツの感触を忘れる」のと同様のプロセスで、最大で90%も処理能力を節約することに成功しました。
普通のセンサーは繊細なので、強い衝撃や荷重を受けると破壊されてしまいます。しかし、H-1の人工皮膚は足の裏に配置することができるほど丈夫で耐久性に優れているので、地面の感触を捉えてバランスを取ることも可能。
全身にセンサーを備えているおかげで、人をやさしく抱きしめることもできます。
これにより、介護に求められる「人体に密着して動作を補助する」といった動作を安全に行えるロボットが実現すると期待されています。
研究開発を主導したゴードン・チェン教授は「今後は、より小さくて大量生産が可能なセルの開発に取り組んでいきます」と語り、より人の肌に近い感触を持つロボットの開発に意欲をのぞかせました。