クライマックスシリーズ(CS)のファーストステージが終わり、セ・リーグはDeNAとの激闘を制した阪神がファイナルステージ進出を決めた。対する巨人は、投手三冠(最多勝、最多奪三振、勝率)に輝いた山口俊が、ファイナルステージ第1戦で先発に起用されることが濃厚。スタメンマスクは、シーズン中に山口を支えた小林誠司が被ることになりそうだ。

 今シーズンの小林は、FAで西武から移籍してきた炭谷銀仁朗、若手の大城卓三の台頭などもあり、出場試合数は昨年(119試合)を下回る92試合にとどまった。そんな激しい正捕手争いをしながらチームのリーグ優勝に貢献した小林に、CSと日本シリーズ、そして引退を発表した”大黒柱”阿部慎之助への思いを聞いた。


今季限りでの引退を発表した阿部の背中を見て成長した小林

――今シーズン、巨人は5年ぶりにリーグ優勝を果たしましたが、この1年を振り返っていかがですか?

「優勝の瞬間(9月21のDeNA戦で7回裏から途中出場)にマスクを被れていたことはうれしいですが、シーズンとしては出場機会が減り、100試合にも満たなかったので悔しい1年でもありました。とにかく1試合、1試合を必死でやったという記憶しかありません」

――昨オフにFAで西武から炭谷銀仁朗選手が移籍してきて、正捕手争いがより激しくなりましたね。

「大城(卓三)も力をつけてきましたし、過去にない競争があったシーズンでしたね。でも、目標はチームが勝つことですから、キャッチャー同士でしっかりコミュニケーションを取っていました。とくにFA移籍1年目の銀仁朗さんには菅野(智之)の特長を伝えたり、セ・パの投手について話しあったり。銀仁朗さんは経験豊富ですから、いろんなことを学ぶことができました」

――4年ぶりに指揮を執った原辰徳監督からは何か言葉をかけられましたか?

「ゲームの中のことになってしまいますが、とくにリード面について『強気でいけ!』という言葉を要所でかけてもらいました。自分では逃げているつもりはないのですが、リードを見直してみると、『確かに』と気づくんです。よく見てもらっていることを感じますし、すごくありがたいですね」

――菅野智之投手の今シーズンについてはどう見ていましたか?

「本人にとっては不本意なシーズンだったと思います。でも、配球や技術的なことではなく、体調面のコンディションが整わなかっただけなので、そこが万全になれば、またすばらしいピッチングを見せてくれると思います」

――今年は投手部門3冠に輝いた山口俊投手とバッテリーを組むことが多かったですね。その山口投手の活躍がカギを握りそうなCSファイナルステージには阪神が勝ち進んできましたが、どのような印象がありますか?

「山口さんに関しては、今シーズンの成績が物語っているように、信頼度は抜群です。ただ、ペナントレースの最後を6連勝し、ファーストステージも制した阪神の勢いは警戒しないといけない。リリーフ陣が安定しているので、先手を取って試合を進めたいですね。

 打者については、ルーキーにして盗塁王を獲得した近本(光司)選手はやはり気になる存在です。まずは出塁させないこと。塁に出た場合は簡単に盗塁をさせないことが重要になるんですが、シーズン中もそうだったんですけど、対戦する際に気持ちが熱くなる選手であることは間違いないです」

――CSでは、レギュラーシーズンとリードの仕方は変わるのでしょうか。

「大きくは変わらないんですが、”エサまき”のようなリードはできないですね。長いシーズンや第7戦まで可能性がある日本シリーズだと、打者に特定のボールを意識させるといったこともするのですが、CSはすぐに勝敗が決してしまう。なので、その試合を勝つためのリードをすることが必要になると思います」

――リーグ優勝を決めた数日後には、阿部慎之助選手が現役引退を発表しました。それを聞いた時に何を思いましたか?

「すごく驚きましたし、信じられませんでした。(9月27日の)東京ドームでの引退記念試合のホームランを見ても、まだまだ現役でやれるのに、と思いましたよ(笑)」

――小林選手にとっては、ドラフト1位で巨人に入団したキャッチャーの先輩でもありますが、阿部さんはどんな存在でしたか?

「同じドラ1捕手として、ルーキー時代から阿部さんと比較されることが多かったですね。それはつらかったというか……阿部さんが偉大すぎる方なので、比較される選手に見合うような選手になれない申し訳なさがありました。

 阿部さんには、毎年キャッチャーとしてのアドバイスをたくさんいただきました。捕球の時の構えや、リードなどもそうですね。よく覚えているのは、『自分を苦しめるようなリードをしないように』ということ。僕が、投手の得意のボールやインコース攻めにこだわりすぎている時に、それを生かすためにもいろんなボール、コースを使わないといけないと言っていただいたことを、今でも意識しています」

――そんな小林選手が目指すキャッチャー像とは?

「”勝てる捕手”ですね。理想は自分のチームのピッチャーが無失点で勝つことですが、たとえ10−9で辛勝した試合でも『勝ちは勝ち』とプラスに考える。苦しい時に我慢できるキャッチャーを目指したいです」

――CSファイナルステージでも、どんな形でも勝つことが必要になると思います。あらためて、意気込みを聞かせてください。

「僕がマスクを被る試合でも、そうでなくてもチーム全体の力で勝っていきたいです。そして日本シリーズに進み、日本一になって阿部さんを送り出したい。今の僕があるのは阿部さんあってこそですし、長く巨人を支えてきた大先輩のためにも、最高の形でシーズンを締めくくりたいです」