(ウーバーイーツの配達サービス)

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 飲食店が店内で提供する料理のテークアウトやデリバリー品を消費者と仲介するサービスが拡大している。10月に消費税は10%に増税となるが、店内で飲食しない持ち帰りや宅配は軽減税率が適用され8%に据え置かれる。これを機に夢の街創造委員会の「出前館」や「ウーバーイーツ」のほか、LINEなどのIT大手、スタートアップ企業も同サービスに参入して市場をさらに押し広げる。こうした中食仲介は何社が生き残れるのか。各社は個人経営の飲食店に寄り添うサービスで差別化を図る。(文=小寺貴之)

業務を効率化
 「(中食仲介は)5―10年で数社に絞られる。我々は個店と一緒にテークアウトならではの顧客体験をつくっていく」。TAPGO(タップゴー、東京都新宿区)の二ノ宮悠大朗執行役員は自社のサービスについて力を込める。テークアウト送客アプリケーション(応用ソフト)「menu」(メニュー)を10月に都内23区を主要エリアとして本格展開する。テレビCMも流してユーザーと加盟店を増やしていく。

 menuは事前に注文と決済を済ませ、飲食店でテークアウト品を受け取る仕組み。店舗が混雑していても行列に並ぶ必要がない。飲食店も業務を効率化できる。現在の契約店舗は約1000件。これまで個人経営の店舗を地道に開拓してきた。IT大手が飲食チェーンを押さえるのに対し、地元のおいしい店を紹介して差別化する。二ノ宮執行役員は「デリバリーに比べテークアウトは歴史が浅く、まだ“正解”となるスタイルがない」と指摘する。

“正解”模索
 同じカレーでも、自分のデスクでパソコンの前で食べるカレーと、お弁当持参の同僚と並んでお裾分けしながら食べるカレーでは、ルーの固さや盛り付け方、容器の“正解”は変わる。「オフィス街や住宅地など場所によっても食べ方が変わる。店とともにお客さんを感動させるテークアウトを模索する」(二ノ宮執行役員)。

 中食仲介サービスではエコシステム(協業の生態系)の構築が大切だ。「個人経営店とデリバリーは面白い共存関係をつくれる」。ウーバーイーツなどの利用を前提に、SENTOEN(セントウエン、東京都渋谷区)の山口大介社長はこう呼びかける。同社はシェフにキッチンと設備を貸すシェアリングサービス「キッチンベース」を展開する。昼間はデリバリー用、夜間は仕込み用に調理場を貸す。

 都内で店舗を構えるには数百万円から1000万円以上の投資が必要になる。山口社長は「キッチンベースは数十万円。商圏も店舗で客を待つだけだと1キロメートルもないが、デリバリーだと約3キロメートルに広がる」と説明する。都内の中目黒拠点では4ブース7ブランドが稼働する。地方の店の都心進出や個人店の立ち上げに利用される。全地球測位システム(GPS)情報と連動したエリア広告や仕込み管理も支援する。

 山口社長は「デリバリーは宣伝量よりも味の勝負。リピーターを獲得しないと生き残れない」という。そのため拠点の入居者同士の試食会では異なるジャンルのシェフらがノウハウを交換しあう。デリバリーとシェアリングは相乗効果が高い。「海外のクラウドキッチンと連携し、日本の店の海外進出を手助けしたい」と力を込める。3年以内に100店舗の出店を目指す。

IT大手も参入 飲食店の業務省力化へシステム開発
 IT大手も中食仲介の開拓に乗り出す。ただグルメ検索サイトのような顧客接点となるサービスが乱立すると、CMや仲介手数料などの体力勝負に陥るリスクがある。宿泊施設や旅行プランの仲介サイトでは、宿泊施設側から複数の仲介サイトへの露出を一括管理する「サイトコントローラー」が浸透した。

 中食市場も飲食店側から仲介サービスを一括管理するニーズは強い。人手不足から店舗は外国人スタッフに支えられており、仲介サービス用の注文管理端末を何台も置く余裕はないためだ。黎明(れいめい)期のいまは、仲介者自身が仲介を束ねるポジションをとるチャンスがある。カギとなるのは販売時点情報管理(POS)システムとの連結だ。

 LINEはテークアウトサービス「LINEポケオ」のPOS連携を進める。柿沼誠LINポケオプロジェクトリーダーは「店舗業務の省力化は、送客数と同じくらい強く飲食店から求められる」と明かす。そして旧来のPOSやSaaS(サービスとしてのソフトウエア)型レジアプリにとっても差別化になるため、ポケオと連結したいという引き合いが多い。

 「ポケオの注文が店舗ですでに稼働している注文管理システムに直接入るのが理想」(柿沼リーダー)だ。店舗のスタッフが普段の発注伝票とレジ作業で、来店客と仲介サービスからの送客をさばける。

 出前館を運営する夢の街創造委員会もリクルートと業務提携した。リクルートライフスタイル(東京都千代田区)のPOSレジアプリと出前館の注文情報を連結する。

 デリバリーとテークアウトの両方のサービスを手がけるLINEは、さらに仕組みを充実できる。デリバリーは配送員を抱えるビジネスで、テークアウトは個人と店のエリアマッチング。ビジネスモデルは大きく異なる。ただ消費者にとってはデリバリーかテークアウトかで店の探し方を変えるのは不便でしかない。中食対応の店を探し、料金を払って届けてもらうか、自分で店に行くか選べれば十分だ。加えてLINEは外食用の店舗予約や電子決済、対話アプリでの広告やクーポン発行とも連結できる。

 10月の消費増税に向けて中食仲介サービス各社は露出を増やして顧客接点を取りに行く。同時に飲食店へはデリバリー、テークアウト向けのメニューや業態の開発を支援し、店舗業務を効率化するシステム開発を進めている。飲食業界は多様で新陳代謝が早い。仲介サービスもユーザーの不満が表出しやすく、顧客接点を取りに行くだけでは特定の事業者が寡占し続けるのは難しかった。それだけに店舗向けの業態開発から情報インフラまでを抑えられれば、強固なプラットフォームに育つ可能性がある。