デビュー20周年のm-floとダンス・ミュージックの20年を振り返る

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ローリングストーン本誌に掲載された、デビュー20周年を迎えるm-floの歩みとダンス・ミュージックの20年の流れを対比させながらインタビューした今回の企画。聞き手はDJのTOMO HIRATA。今・イズ・ファンタスティック(by LISA)な記事全文を公開する。

2000年、1stアルバム『Planet Shining』でm-floが考えていたこと

ーm-floの1stアルバム『Planet Shining』(2000年)を聴いていたら、「Radio Show: Interlude 4」でドナルド・トランプの名前が出てきて驚きました。

VERBAL:そうだ!

☆Taku:ラップの中で出てくるんだよね。

ー近未来のラジオ番組ということで、その他にはCDという媒体が昔のものとされていてレコードでみんなが音楽を聴いているということや、携帯電話の代わりに耳にイヤホン的なものを装着しているとか、今を予知したようなやり取りが出てきて。

☆Taku:僕ら自身がちょうど21世紀目前(1998年)に結成したじゃないですか。それまでは凄い未来が待ってると思っていたけど、実際はそんなに21世紀感を感じなくて。もっと明るい未来を目指したい気持ちがあったから、ああいうインタールードが出来上がったんじゃないかなって分析します。

ーサウンド的にはどうだったんでしょう? 未来っていうのは当時のm-floにとって大事なキーワードだったんですか。

☆Taku:サウンド的には好きなものを全部入れていこうと。未来というよりは、当時のJ-POPにないものやダンス・ミュージックで好きな要素を入れていくんですけど、LISAのヴォーカルとVERBALのラップが海外のトラックに乗せてもカッコいいものになるから成立したんだと思うんです。とはいえ、その頃の僕は間違いまくってるんですよ。2ステップを作ろうとしてウッドベースを入れたり、ドラムの音色もこのジャンルだったら定番のキックとかスネアの音を使ったりするところを間違えてる。でもそれが面白さにつながったのかもしれない。

VERBAL:デビュー当時は右も左も分からなかったから、とりあえず自分が分かる範囲のことを思い切りぶつけていたというか。というのも、自分はもともとアンダーグラウンドなヒップホップが好きだったので、そういう世界観やラップのフロウとかデリバリーを意識しながら、☆Takuが持ってくるトラックやLISAのメロディが乗った曲に対して当てていくんですけど、「これ、自分が思い描いているヒップホップじゃないぞ」っていういい意味での違和感があったんです。葛藤もあったんですけど、作っていくうちに☆Takuも言ったようにアクシデントがあって新しいものが生まれていったので、それはそれでいいなと思うようになってきて。当時は”ヒップホップはこうじゃなきゃいけない”っていう固定概念が強かったので、☆Takuとはヒップホップの定義について討論しましたね。

☆Taku:m-floを始めた当初は特に多かったよね。

VERBAL:あとはデビューした人たちにありがちなんですけど、今までやりたかったことを1曲に全て詰め込もうとしたり、自己主張がその頃はもっと強かったかもしれないと今の話を聞いて思い出しました。だから結果、良かったのかもしれないんですけど。


m-floのディスコグラフィー|Rolling Stone Japan vol.02掲載

ー本当にやりたかったヒップホップとは違うものだった?

VERBAL:覚えているのが、m-floのステージで自分のヒップホップ感をお客さんにぶつけたい、俺のリリックを聴け!ってアプローチしたときに、お客さんが喜んでいるポイントが「刺さってほしいポイント」とはまったく違って、僕が狙っているところと違うところにアピール・ポイントを感じてもらっているなって、ステージ上や曲を出していくごとに感じたり。m-floっていうグループはアルバムごとに進化を遂げ、新しい景色を見て、生意気な意味じゃなく大きい世界にだんだん突入していったので、当時のヒップホップっていう枠の中では収まり切れないことを僕たちはしてたんだなと。そっち(ヒップホップ)はそっちで最高なんですけど、僕はそもそも違っていたのかなって、今になって思いますね。

☆Taku:でも実際にヒップホップ的なことをやると、めちゃくちゃ締まるんですよ。最近、PKCZ®とスヌープ ・ドッグが「BOW DOWN (feat. CRAZYBOY)」でコラボしたときも、ミュージックビデオではVERBALとスヌープが同じ場所に立ってラップをしているんだけど全然しっくりくるし。

VERBAL:ヒップホップの人たちってストリート感があるじゃないですか。そういう場所にいると、僕だけポツンと浮くことが多いんですけど(笑)、それはそれで味だからいいのかなと。いい違和感が味があるというか。m-floは音楽業界全体の中でもいい違和感を持ったグループだという気がして、変わったことをしているし、お互いが同じ方向を向いているんですけど同じ方向に行かなかったり(笑)。

ーLISAさんは当時、m-floの中でどういう役割だと自覚してましたか?

LISA:やはり歌うだけでは私は活きないので、自分のメロディは自分で作って、自分の歌詞は自分で書いて、☆Takuは音で表現して、VERBALはラップで表現して、私は歌なのでメロディも全てやることが私にとってのインポータントなこと。今もそのようにしています。

☆Taku:LISAはライティングにこだわるよね。

LISA:すごくこだわる。唯一の女子だからって「You just a singer」と言われるとNO!って。ただ歌っているだけの人に見えるのかな?

☆Taku:そういう意味で言ってはないと思うけど。

LISA:でも伝わらないよね。何でだろう。

VERBAL:LISAの話から余談なんですけど、日本って例えばファッションデザイナー=髪型がちょっとボサボサで神経質そうな人が本物、みたいな見方だったり、固定観念というかステレオタイプがあって、何でファッションデザイナーがウキウキしていちゃダメなのって。そういうのと一緒で、LISAは見た目も派手だからそういう人は表に出るだけの人なんでしょ?って勝手に決めつけられる傾向があるなと。僕たち3人はデビュー当時に、多国籍寄せ集めグループって言われて(笑)。いや、インターナショナルスクールに行ったらみんなこんな感じですって(笑)。朝、学校に行ったら黒人が少年ジャンプを読んでいたり、今はもう普通ですけど、20年前の日本だったら何それ?みたいな感じだったんですよ。

LISA:でもこういう場では言っておきたいんだよね。自分のところは自分で作ってるってことは、当時からどうにもこうにも外に出ない情報だったので、それもきっかけの一つでm-floをやれなくなっちゃったっていうのはありました。でもこれからは自分でももっと言っていきたいと思うし、自分の歌は自分で書いてますっていうのは分かってほしいです。

ーm-floが1stアルバムと2ndアルバム『EXPO EXPO』(2001年)を出したときのいわゆるダンス・ミュージックというのは、アメリカとイギリスで事情が違いますけど、1997〜98年くらいの話で言えばプロディジーとかケミカル・ブラザーズが注目され始めたタイミングですね。

☆Taku:プロディジーは当時のA&Rが好きでしたね(笑)。僕はXLレコーディングスの「チャーリー」しか聴いてなくて。

ー91年とかじゃないですか。

☆Taku:そう。だからプロディジーは全然通ってないんですよ。

LISA:意外。

ー確かに、m-floのサウンドには初期のレイヴ・ミュージック的なものはあるかもしれないけど。

☆Taku:むしろ今の方が影響を受けてるかも。

ープロディジーとロックがクロスオーバーした頃の感じはm-floにはないですよね。

☆Taku:でも共通するところは、これはLISAが入る前の話だけど、高校生のときにVERBALと僕でそういうロックなラップ・グループを組んでたんですよ。

ーミクスチャー?

☆Taku:しかもダンス・ミュージックも混ざった感じ。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの前にやってたし、レイジにもっとダンス・ミュージックが混ざったようなスタイルで。

VERBAL:音楽をやってた周りの人たちを集めたらそうなっちゃったみたいな。☆Takuがいてドラムを叩きながらシーケンサーから音を流して、ギタリストとベーシストはもろメタリカとかメガデスが大好きです!みたいな。僕はラップだけして。あれは凄かったよね。

☆Taku:うん。DJもしてるから4つ打ちのサンプリングを乗せちゃったり。そういう意味ではクロスオーバー感は昔からあったのかもしれない。

ーデビューした当時ってヒップホップはもちろん人気があったんですけど、ハウスとかトランスが出てきた時期だと思うんですよ。そういう影響はなかったんですか?

☆Taku:ドラムンベースはありました。四つ打ちはDJでかけてたけど、四つ打ちを自分たちの音楽で触りだしたのは『EXPO EXPO』(2001年)以降なんです。それまで四つ打ちはやってなくて。ドラムンベースは特にロニ・サイズとかレプラゼントとか。あとはR&B。m-floがデビューする前からずっと、「私はR&Bがやりたい! billboardチャートに入ってるようなR&Bがやりたいの!」ってLISAに言われ(笑)、VERBALからは「ヒップホップがやりたい!」と言われ、どっちも好きでやってるんだけど途中で違う方向に行っちゃいましたね。UKの方に。


1990年代後半、ドラムンベース人気を牽引したロニ・サイズ。英ブリストル出身のDJ/プロデューサーで、ドラムンベースを核にヒップホップやジャズにも接近。2000年には自らが率いるグループ、ロニ・サイズ・レプラゼントとして来日ライブを行った。(Photo by Getty Images)

ー☆Takuさんは基本的にはフラットな。

☆Taku:フラットというかR&Bもヒップホップも好きだし、でもイギリスの音楽に影響を受けてる。

ープロディジーも初期からドラムンベースの流れってあるじゃないですか。

☆Taku:XLレコーディングスからジャングルにつながっていきますよね。その流れに自分もいた感じなんです。

ードラムンベースってUKのヒップホップですもんね。

☆Taku:UKのストリート・ミュージックですからね。今はグライムに移行しちゃってるけど、当時はそうですよね。

ーその関係もあってサウンドは2ステップっぽいところに。

☆Taku:2ステップはテイ・トウワさんに教えてもらって、何か面白いものありますか?って聞いたら「2ステップっていうのがあってさ」と言われて。そこでクレイグ・デイヴィッドも知ったんですけど。

LISA:彼は衝撃的だったよね。

☆Taku:2ステップは速いR&Bだよって言われて。

ーそうですよね。

VERBAL:確かに。ソー・ソリッド・クルーとか流行ってたよね。

☆Taku:流行ってた。僕ら好きだったよね。

VERBAL:当時はさ、あのテンポでラップするのって少し邪道みたいに思われてたんですよ。

☆Taku:イケてるラッパーがすることじゃなかった。

VERBAL:だからソー・ソリッド・クルーはいい例だったというか、こんなテンポでカッコいいラップができるんだ! でも世の中的にはそれでラップすんの!?みたいな。

loves時代のステージングに影響を与えた、ベースメント・ジャックスの存在

ーベースメント・ジャックスからは影響を受けてますか?

☆Taku:受けてます。でもベースメント・ジャックスに影響を受けてる部分はライブの演出です。

ー本人たちもライブで楽器を弾くじゃないですか。そこにダンサーとかヴォーカリストが入ってくる感じが特徴ですよね。

☆Taku:生楽器が最低限でパーカッションだけで、残りが打ち込みのライブが一番好き。あれにはすごく影響を受けてる。

ーとなると2000年代中盤くらいですかね。

☆Taku:特にloves時代(2003〜08年)のライブの演出で参考にしたんじゃないかな。それこそLISAとYOSHIKAとRyoheiとエミリと日之内絵美とで回ったツアー(m-flo Tour 2005 BEAT SPACE NINE)があって、当時のベースメント・ジャックスもヴォーカリスト3人くらいと一緒にツアーしてたんですよ。


ベースメント・ジャックス。左がサイモン・ラトクリフ、右がフィリックス・バクストン。2007年、デンマークの音楽フェス「Roski ldeMusic Festival」での写真。ライブではDJ だけでなく、自らギターやマイクを持ちパフォーマンスをするのも特徴の一つ。(Photo by Getty Images)

ーダフト・パンクはどうですか?

VERBAL:ダフト・パンクってデジタルなイメージなんですけど、意外と温かいじゃないですか。ディスコっぽかったり、見た目はメカだけどヒューマンな感じというか。☆Takuもいろんな要素を混ぜていくっていう意味でダフト・パンクっぽいかもしれないですけど、音がそのまま直結しているかといったらそうじゃなくて、コンセプトというか考え方が似ているなと。

☆Taku:世界観の作り方とか、それこそ松本零士さんを呼んでストーリーを作ったりするといったところは影響を受けていると思うんです。でも、ダフト・パンクで影響を受けている曲って、どちらかと言うとトッド・エドワーズが参加している曲とかで。ダフト・パンクのアルバムだと『ディスカバリー』が大好きなんですけど、あれほとんどサンプルじゃないですか(笑)。

ーそうですね。

☆Taku:サンプリングは好きなんだけど、サンプルのネタは彼らはソウル系が多いじゃないですか。でもm-floのサンプルソースはソウルじゃない。それも間違えてるんですよ。


ダフト・パンク。トーマ・バンガルテルとギ=マニュエル・ド・オメン=クリストによるフランスのエレクトロ・デュオ。☆ Taku が語っている「音楽的に影響を受けたのは、トッド・エドワーズが参加している曲」は「Face to Face」「Fragments of Time」の2曲。(Photo by Getty Images)

ー間違えてるというか、そこがユニークさになってるってことですよね。

☆Taku:何が言いたいのかというとFPMの田中さん(田中知之)だったら頭の中でちゃんと鳴っててしっかりと狙ってやってると思うんですよ。僕の場合は狙えない。マグレなんです。僕の場合は狙ってない。針を落としてハマるか、ハマらないか。それだけ。

☆Taku:うん、ラッキーを待つ。

VERBAL:ラッキーを待つっていいね。

☆Taku:全部想定外なんですよ。こういう曲を作りたいって思うじゃないですか。それをVERBALとLISAに話して、2人とも分かったって言って全然違うものがくるんですよ。それが面白いんです。

ー独自のサウンドにつながると。

☆Taku:そうそう。m-floのマジックかな。

2000年代のエレクトロムーブメントで
強まったDJとしての表現欲求

ー2000年代中盤ってけっこうエレクトロな時代だったと思うんですよね。例えば、「サティスファクション」のベニー・ベナッシとか、LCDサウンドシステムもいて、そういう時代にはエレクトロの方向に行っていたように見受けられたのですが。

☆Taku:たぶん僕とVERBALはエレクトロに行ってた。LISAは行ってなかったよね。

VERBAL:エレクトロムーブメントがありましたよね。ダフト・パンクがちょうど来日した頃、今までのヒップホップに飽きた人、今までのロックに飽きた人、ファッションも今までのファッションに飽きた人たちがみんな集ってごっちゃで楽しく盛り上げていこうみたいなムーブメントがあった気がして。そのときに僕は全部を同時に体験したので、そこからエレクトロと言われる音楽家にもハマっていった感じですかね。

☆Taku:エレクトロがあってフィジェット・ハウスとかが生まれてくる時代になるけど、そのときはm-floから一番離れていたタイミングだったんです。その時代がいろいろなものを変えた典型として挙げられるのが、ウィル・アイ・アムがDJを始めたこと。VERBALが言ったことが記憶に残ってるんだけど、ウィル・アイ・アムがDJをしていたときにフィジェット・ハウスを流してたよって。

VERBAL:青山のル・バロンのように実験的なことにウェルカムな空間があって、ウィルと同じように僕もノリでDJを始めたんですけど、当時はトム・ヨークがDJで「ラッパーズ・ディライト」をかけて超盛り上がったり、そういうふうにお客さんのノリを感じながら、自分の次の作品のインスピレーションにしてるのかなとは思いましたね。

☆Taku:うん。ブラック・アイド・ピーズの「アイ・ガッタ・フィーリング」とか、ウィルがフィジェット・ハウスをかけてなかったら生まれなかった曲じゃないかって思ったりする。

VERBAL:めちゃくちゃDJ意欲が強い時代でした。どこでもいいからDJをさせてくれるところないかなって。渋谷のトランプルームでもやってたんだよね。

☆Taku:へえ。

VERBAL:時代的にみんな制作意欲があって、新しくてクリエイティヴなことをしたいっていう雰囲気だったのかも。

ー3rdアルバム『ASTROMANTIC』(2004年)と4thアルバム『BEAT SPACE NINE』(2005年)の流れ、一連のlovesシリーズを振り返るとどんな時期でしたか?

☆Taku:m-floにとってのエレクトロ期って、lovesの最後のシングル「love comes and goes」(2008年)に当たるんですね。で、エレクトロ期とともに僕はm-floをやりたくなくなったんですよ。何でかと言うとDJをもっと本格的にやりたいなと。そのままでもDJをやればお客さんは来てくれるけど、エレクトロの曲をかけると「m-floの曲をかけて」ってなっちゃうから。

VERBAL:一度、パレットクレンジングしたかったんです。

☆Taku:そうそう、キレイに言うとパレットクレンジングなんだけど、そのときは一生懸命だから下手くそなんですよ。不器用というか。だからm-floという名前に頼らず、DJで勝負したいんだと思ってm-floという名前を外したり。当時はある意味でm-floを拒絶していたタイミングではあるのかな。

ーblock.fmを立ち上げたのもそのタイミングですもんね。

☆Taku:確かに。アーティストの延長でDJをやっているのが嫌だったんですよ。今は正反対の考え方をしていて、自分のことをDJだと思っていない。

ー☆Takuさんはカルヴィン・ハリスと一緒にやってましたけど、呼んだのは……

☆Taku:僕です。

ー今では呼べないレベルの。

☆Taku:ですよね。僕とTJOがカルヴィン大好きで、なんとかして呼びたいねって言ってマネージャーとも相談して呼んだみたいな。面白かったのが、そのときは代官山のAIRでやって、こんな長蛇の列あるかっていうくらいの行列で、ヨッシャー!って言ってたら翌日の大阪公演は大コケで(笑)。

LISA:そうなの!?

☆Taku:当時はまだ認知度が低くて大阪まで浸透してなかった。

LISA:何年前?

☆Taku:2009年かな。何でカルヴィン・ハリスかというとBBCだったの。BBCが大好きで、アニー・マックっていうDJの番組でエレクトロの中でいきなりトランシーなシンセを使った曲が流れて、でも最初はすごくロック調の曲で。


カルヴィン・ハリス。スコットランド出身のプロデューサー/DJ。2009年の『Ready for the Weekend』が全英1位を記録。2011年、自身が手がけたリアーナのシングル「We Found Love」が全米で大ヒット曲となり、見事トップDJ の仲間入りを果たした。(Photo by Getty Images)

ー「アイム・ノット・アローン」?

☆Taku:そうです。「アイム・ノット・アローン」のアルバム『レディ・フォー・ザ・ウィークエンド』でハマったっていう。

LISA:今でもすごい好きだよね。

☆Taku:好き。あの頃って実験的なものがオープンだった時代じゃないですか。今って両極端で、テクノにはテクノの作法があって、トップ40にはオールミックスの作法がある。この両極端だと思う。そこにクリエイティヴィティをあまり感じなくて、だったら自分で好きなものをやっちゃえと。

ーそこでまたm-floに力が入ってきて。

☆Taku:いろいろあって、m-floを聴く機会がたくさんあったんですよ。過去の曲を聴くのって、嫌で嫌でしょうがなかったんです。大丈夫なタイプ?

VERBAL:自分はレコーディングしたら聴かないタイプ。トラックダウンでは聴きますけど、その後は歌詞を覚えるために聴く感じかも。作るまでにもう過程を楽しんでいるから。

☆Taku:聴き返すことで「やっぱり、ああするべきだったんじゃないか」って引きずっちゃうタイプなんですよ。古いものを聴きたくないと否定するところがあったんだけど、一昨年くらいから『Planet Shining』と『EXPO EXPO』をめっちゃくちゃ聴くようになったんですよ。

VERBAL:逆に今の自分たちにないものがあるから新鮮に聴こえるのかも。

☆Taku:そうそう!

VERBAL:最近だとフレッシュに感じないけど、それこそLISAに昔のリリックの方が面白かったって言ってもらったときに、過去のリリックノートを掘り返したり。確かに『Planet Shining』を聴いてると、☆Takuの音とLISAのヴォーカルと自分のラップの融合がフレッシュで、狙っていたつもりなんですけど全然違うものができた感覚が新鮮というか。だから今になっても何回も聴ける。何でこんなふうにしようと思ったんだろう?って、いい意味で思うアルバムだったかな。

☆Taku:うん。友達とかが流してるのを聴かされて、”あ、思ったより悪くないな”って思ってそれから聴き始めて、素直に向き合えるようになった。それが今にもつながっているんじゃないのかなと。
 

ダンス・ミュージックの世界を一変させたEDMの熱狂の中、見つめ直したm-floの原点
 
ー今の時代、プロデューサー・ユニットがヴォーカリストを使うことって多いじゃないですか。でもEDMが出て、2010年代以降はDJ出身のダンス・ミュージック・アーティストじゃなくて、逆パターンになってきている。ダンス・ミュージックのアーティストがDJをしていて、DJの下積みがいらなくなったっていう状況で、プロダクションの需要がより増していると思うんです。

☆Taku:いかにいい弾を持ってるか。

ーどれだけ威力のある曲を書いて作っているのかが勝負で、さっき☆Takuさんが話してくれたテクノとオールミックスの例はDJのスタイルとしては昔のままなんですよね。だからそこにクリエイティヴィティを感じないというのは僕も分かるんです。今はカルヴィンにしたって、ヒット曲があるからラスベガスのクラブで高額なギャラでプレイができるわけじゃないですか。そういうふうにEDMは賛否両論はあったけれど、構造を変えた感じがします。

VERBAL:分かりやすい方程式ができたので。要はカルヴィンだったらラスベガスのクラブで半年契約するとギャラがいくらみたいな。そうしたら客も入るし分かりやすいですよね。彼らが新しいロックスターというか、レジデント・ロックスターみたいな。ビジネスの方程式にすっぽりとハマる形態の音楽で、しかもドロップで盛り上がるという音楽的にも分かりやすい。だからさっき話したベースメント・ジャックスのライブの演出にしても、面白かったのに何でみんなやらなかったかというと、独自のやり方で彼らにしかできないものだったから。それに対してEDMはヘンな意味じゃないですが、誰でもできる。今日DJを始めた人が、明日クラブでやったらそこそこいい選曲をすれば盛り上がっちゃう。分かりやすい感じはあるかもしれないですよね。


ウィル・アイ・アム(左)とデヴィッド・ゲッタ(右)。ゲッタはEDMブームの立役者の一人だが、そんな彼にブラック・アイド・ピーズの大ヒット曲「I Gotta Feeling」のプロデュースを頼んだのはウィル。アメリカのポップ・シーンにEDMのテイストを広めたという意味で重要な一曲である。(Photo by Getty Images)

ーそこで差別化できるのは、マーティン・ギャリックスとか、自分のヒット曲があるからですよね。

☆Taku:僕はEDMは黒船だと思っていました。必要なもの。EDMはどうやって生まれたかというと、エレクトロやトランスなどいろんなアーティストが実験的なことをして、それが集まって大きくなっていったものがEDMというムーブメントで。日本にとってダンス・ミュージックというものを知ってもらうためにも、時計の針が進むものとしていい影響を与えると思っていたから、もっともっとEDMに影響を受けたポップスが出てきてほしいと思ったし、世界に近付くために日本にとって重要なものだと思っていたけど、ちょっと作法になりすぎちゃったところが残念なところではあります。

ー違った形で固まりましたよね。

☆Taku:何が皮肉かと言うと、もともと進化して生まれたものだったんだけど、固まっていっちゃった。実験的なものとして生まれたんだけど、実験的じゃなくなっていってしまったというか。じゃあ、実験的なことをしてるアーティストがいないのかと言ったらそんなことはないんだけど、そういう音楽はあまり評価されない。トレンドなんですよね。

ー2010年代に入ってからは、特にそういう流れが日本では強いのかなと。

☆Taku:m-floで言うとEDMに関して面白いのが、去年アメリカに行きまくったんですけど、そのときにm-floが好きでずっと聴いてた人に、「お前らがEDMをやったことに非常にがっかりしてる」って言われて(笑)。何が言いたかったというと、EDMに対してどうこうじゃなくて、俺らは違うものが聴きたいんだと。アメリカでこういう音楽はしょっちゅう流れてるから、『Planet Shining』や『EXPO EXPO』、lovesシリーズでやってた頃のもっとぶっ飛んだものを俺たちは求めているんだって言われて。僕はそのとき、EDMを日本に少しでもたくさん広めたいし、面白い音楽だと思っていたし、自分らがやりたいことでもあったんだって言ったんだけど、内心ではそうなんだと思いながら聞いてて。そういうこともあって過去の作品を聴いていたら、やっぱり面白かったなって思うことがあって。

VERBAL:あとはDJをするときに自分たちの曲をかけたいよねっていう思いがEDMが出てきた頃はあった気がします。『Planet Shining』『EXPO EXPO』って曲はいいけどフロア向けの曲じゃないと思うし、実際に☆Takuも「come again」のDJ用のトラックを作ってたりしたよね。そういう意図もあったんだけど、外面的には「ああ、そっちの方向に行っちゃうの?」って思われたってことでしょ?

☆Taku:いいふうにハマれなかったね。だけどすごく大事なことだったと思うし、EDMを広めたかったってことだけじゃなくて僕らがやりたかったことだし。

VERBAL:実際にフィーチャリングさせていただいた人たちも本当にフレッシュだったしね。海外のヴォーカリストを入れたり、いろんなミックスをしたりしたから、ポップなものから変わったものまでやってみようっていう意図や気持ちはあったけど、そのマインドは思っていたほど伝わらなかったのかもしれないね(笑)。

LISA:私には伝わったよ。カッコよかったし、冒険してるなって思った。m-floこう来るか!っていうのは正直あったけど、でもそれが逆に面白かった。

ー海外のEDMと同じ感じではなかった。

VERBAL:そうそう!

☆Taku:そうなんだけどね。

VERBAL:ちょっと”側(がわ)”に捉われていたよね。lovesの次は何なんだ?ってときにm-floの名前すら出さない戦略とか。あと当時はすごくテクノロジーにハマってたので、モーションキャプチャーを使って何かやろうみたいな、これは僕だけかもしれないけど新しいものを突き詰めることに捉われすぎて、面白さとかワクワク感を忘れ始めちゃったのかなって気はします。要はマッピング自体にみんな凄いと思うんじゃなくて、内容じゃないですか。例えば、ディズニーランドのホーンテッドマンションの銅像にプロジェクションされているのも一応マッピングだけど、昔はマッピングすげぇ!って思っていたわけじゃなくて、銅像が歌ってるってところがポイントなわけです。だから、そういう視点を忘れ始めちゃったのかなって感じはあります。やっていたことは悪いことじゃなかったんだけど。

☆Taku:当時は一生懸命やってたしね。

VERBAL:僕たちなりにがむしゃらだったんですけど、そもそもの根幹を忘れていたというか、そこからズレてしまったのかもしれないですね。

☆Taku:m-floってジャンル分けされちゃいけない、カテゴライズされちゃいけないグループなんだなっていうのをつくづく感じていて。例えばヒップホップのマインド、R&Bのソウルフルな魂、ロックやパンクのスピリットはあるんだけど、どこにも属さないのがm-floなんじゃないのかなと。そう再認識して3人で一緒にやってて思うのは、みんなめちゃくちゃ息が合ってる。3人が持っているものをいい感じに出し合っているんです。

VERBAL:昔、不器用なときに作った音楽があって、今は器用になりすぎちゃったから一回リセットしようというのが今年の年始のセッションで。もう一度不器用になることはできないですけど、リセットして新しい感覚でやろうっていうのはLISAが入ってきたことによってまた実現可能になった感じがするけど、どうだろう?

☆Taku:まったく同意見。

LISA:刺激し合えるのが止まらないので。

VERBAL:LISAの刺激が強すぎるっていう(笑)。

☆Taku:それも同感かな(笑)。

LISA:でも大事よね。

☆Taku:フィールすることが大事。
 

☆Taku、VERBAL、LISAの3人の等身大を収めた最新シングル

ーEDMブームも一段落しましたけど、ポップフィールドの方でメジャー・レイザーだったりカイゴだったり、リスニング重視のエレクトロミュージックがより注目されるようになって。

☆Taku:ワーイ!というお祭りしている曲の反動が来てますよね。もうちょっと空間が空いてるサウンドとか。

ーm-floの新作も聴かせてもらって、どちらかと言うとそういうリラックスした方向に。

☆Taku:うん。でも音圧は出しているつもりです。特に「No Question」は今と昔との結婚みたいな。

ーそうですね。ちょっとトラップっぽいところがあったりフューチャーベースな部分もあったり。一曲の中で場面が移り変わっていく。

☆Taku:今時こんな高速ラップしないよっていうか(笑)、VERBALは普通にやってるけどBPM150であれだけの高速ラップって難しいと思う。あとLISAの”それさえ許さない世の中なら/全て投げ出して/自由になるまで”って歌詞がすごく好きで、社会の窮屈な部分に対して「違うよ、オルタナティヴもあるよ」っていうメッセージが入っていたり。VERBALのリリックでも”命かけてふざけてますけど/その点について誰か何か気になる人がいたら/是非そのまま黙り続けて頂けますか?/それだと幸いです”って、低姿勢にパンクなことを言ってるのもいい(笑)。

VERBAL:英語にはできない日本語ラップなんですよね。英語だとアグレッシヴになりがちなんだけど、日本語だと”幸いです”っていう言い方があったり。”幸いです”は美しい言葉だからよく使うんですけど、ヘンなことを言って”そうしていただけると幸いです”と言うとミスマッチ具合が面白くなる(笑)。

LISA:でも今回、本当に良かったよ。

VERBAL:怒られないで済みました(笑)。

LISA:”ヘイターの声聞こえないです”って、最高だねアレ!

VERBAL:みんなと話していたのを覚えてるか分からないけど、フリースタイルバトルってお互いに罵声を投げてディスり合ったりするじゃないですか。でもお互いを褒め合うフリースタイルバトルがあったらウケるよね、それだったら俺もフリースタイルできるかもって冗談で言ってて。褒めてる風で褒めてない感じってどうなんだろう?って頭をよぎって、このラップを書いたと思うんですけど。

LISA:最高! レコーディングでは、立ち上がってファンタスティック!って感じでしたもん。

ー本当にいい感じに仕上がっていると思いました。今はどっちの方面を見てますか?

☆Taku:お互いそれぞれあると思うんですよ。いろんな経験をしてるしたくさん曲も作ってるけど、僕の場合は素直になる! カッコいいと思ったら、そういうことをやりたいなって素直に思う。手グセがあるんだったら手グセを出す。先輩だろうが後輩だろうがカッコいいサウンドを作っていたら自分もそれを取り入れちゃう。昔はそれがやりやすかったんですよ。だってみんな違うシンセを使ってたから同じ音にならない。

ーそうですよね、アナログだし。

☆Taku:そんな当時をシミュレーションしながら、誰々がカッコいい!という衝動は抑えないっていうのが今の僕のスタイルです。

ーいま気に入っているアーティストは?

☆Taku:いっぱいいますよ。それこそトーフくん(tofubeats)も好きだし、今回リミックスで呼んでいるWONKのサウンドも大好きだし、先輩の大沢伸一さんのアルバムもすごく良かったし、海外だとMURA MASAが好きだったり、3曲目「MAKE IT BREAK IT」のドラムンベースはMURA MASAの影響を受けてるなと思ったり。今は何でも吸収しちゃう。長年やってるとプライドが出てくるじゃないですか。先輩になってきて周りは後輩ばかりだし、彼らより劣っていちゃダメだみたいなところがあったりするけど、そういうの関係なくLISAがよく言う”ぶっ飛ばされた! やられた!”みたいな気持ちがすごくエネルギーになっているのかな。

VERBAL:僕は自分の人生においていろんなものが交差しているポイント、リセットしたいなっていう時期でもあって。30代後半にかけてはいろんなものを買って持っていったんですけど、39歳になったとき、何のためにやってるんだろうと。それで40歳になってどんどん減らしていくというプロセスを経て。あと2016年末に事故があって、何かのメッセージだなと思っていろいろと一新したいなと思っていたこともあり、音楽ももう一度聴き方を変えたいと思っているんです。もちろん流行っている音楽も聴くんですけど、普通に好きなものは好きだ!っていうのでいいんじゃないかなって。吸収もするけど、無理矢理それを好きになろうとしなくてもいい。いまだに新譜で刺さったのは、メイヘム・ローレン&DJマグスとかゴリゴリなんですけど(笑)、そういうものが好きだったりしちゃうのは僕のDNAなんで、そこは突き詰めていけたら。

m-floに関しても根本は『Planet Shining』から始まってるんだから、それでいいじゃんって。☆Takuとは違う表現かもしれないけど、僕も素直に好きだって思うものは好きだし、Spotifyでも新しい曲は何があるんだろう?って聴いたら、結局はSUPERCARの「WHITE SURF style 5.」ばっかり聴いてたり(笑)。BONNIE PINKの昔のアルバムとか、最近だと水曜日のカンパネラがいいなとか、好きなもののゾーンは決まっているので、そこは素直になって聴く方がインスピレーションにもつながっていいのかなっていうところですかね

☆Taku:僕とVERBALは近いけど、LISAは常に素直だよね。

LISA:フィール・ナウですから(笑)。

VERBAL:無理矢理フィールしようとしていた自分がいたんですけど、フィールできないものはできないんだよって、そんな自分も認めてもいいんじゃないかなっていうふうになってきたのかな。

☆Taku:フレッシュに感じることは大事で、自問自答もするんですよ。昔の音楽が好きっていうのは、自分がおじさんになったからか、もしくは自分にセンスがあって一周してそれがカッコいいものだって判断できるようになったからかって。おじさんになってるのは間違いないけど(笑)、その中でセンスがあったらいいなって。

VERBAL:リル・パンプが好きな若い子たちは、みんなインスタを見ながらとかそういうカルチャーで育ったから入り方が純粋なんですけど、僕たちの場合、インスタグラムというSNSが…っていう先入観で入ってるので、こういう若者がいるのかっていう見方をしちゃうんです(笑)。昔に自分らがパブリック・エナミーを聴いたときとか、ノーティ・バイ・ネーチャーを好きになったときって、来日ライヴを観てカッコいい!っていうところから入ったり。やっぱり音楽って体験型じゃないですか。だからフェスは思い出深かったりすると思うんだけど、とにかくフィールすることが大事。だから音楽にハマるためには体験しに行くのがやっぱり一番いい。勉強みたいな聴き方はやめようと。

☆Taku:楽しくなきゃね。

VERBAL:コーチェラ・フェスティバルに行ったときも、流行りのDJを観に行こうと思ったら結局はランシドを観に行っちゃって、お客さんは50人くらいしかいないけど最高!みたいな(笑)。おじいちゃんが踊り狂ってたんですけど、その人と一緒に超暴れちゃって。でもそれでいいのかなって。

ー最後はLISAさんに締めてもらいましょう。

LISA:m-floは、もう一度このように3人でやれること自体がミラクルだと思っているので、このフィーリングをずっと忘れないで進んで行きたいですし、今も過去も未来もイッツ・オッケー。今・イズ・ファンタスティックっていうところはより一層素直にやっていきたいです。


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the tripod e.p.2

m-flo
1998年にインターナショナルスクールの同級生だった☆Taku TakahashiとVERBALの2人で活動をスタート。のちにLISAが加入し、m-floとして本格的に始動する。同年にインディーズからリリースした「The Way We Were」が驚異的なセールスを記録。99年7月に1stマキシシングル「the tripod e.p.」でメジャーデビュー、オリコン初登場で9位をマークした。その後も快進撃を続け、シングル12枚、オリジナル・アルバム2枚をリリース。2ndアルバム『EXPO EXPO』は80万枚のセールスを樹立し、J-POPシーンに強烈なインパクトを与えた。2002年にLISAがソロ活動に専念するため、惜しまれながら脱退を決断。03年、VERBALと☆Takuの2人となったm-floは、さまざまなアーティストとコラボしていくという「loves」シリーズで日本音楽史に”featuring”という概念を定着させた功績が大きく評価されている。05年に日本武道館でワンマンライブを、07年に横浜アリーナ公演をかつてないほどのスケールで大成功させる。また、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」といったで音楽フェスのステージにも登場するなど、アンダーグランドからオーバーグラウンドまで、縦横無尽な活動を展開。08年、41組とコラボレーションを実現した「loves」シリーズに終止符を打ち、新たな可能性を求め、プロデュースやリミックス、DJ、また自身ブランドや別ユニットなど個々活動で活躍していた。2017年12月、オリジナルメンバーのLISAが復帰し、LISA・VERBAL・☆Taku Takahashiによる最強トライポッド「m-flo」が15年振りに復活。2018年にデビュー20周年を迎えるm-floが再び日本のメインストリームに新風を吹き込む。

掲載:Rolling Stone Japan vol.02(2018年3月25日発売)