有機野菜・無添加食材の宅配ネットスーパー「らでぃっしゅぼーや」。安全で、しかも美味しい。と食材宅配の中でも注目されている。しかし、いち食材宅配がここまで成長することができたのはなぜか? なぜ「らでぃっしゅぼーや」の野菜は高くても売れるのか? テレビ東京「カンブリア宮殿」で放送された内容をもとに、「らでぃっしゅぼーや」が変えたものを探る。

野菜の前に、まずは「農家との関係」を変えた

「らでぃっしゅぼーや」は宅配サービスだ。注文はネットやカタログを使って行なう。そこには全国の契約農家が有機栽培し、無農薬、低農薬で育てた野菜がこれでもかと載っている。

農家との契約数はおよそ2600軒。

取り扱っている野菜は多岐にわたり、珍しい品種や生産に手間がかかるもの多い。また有機栽培へのこだわりもある。薬については無農薬、もしくは最低限におさえるのが「らでぃっしゅぼーや」のルールだ。しかし、なぜ安心安全という高い付加価値がついた商品を安定して提供できるのだろう? その答えは、農家と「協業」する姿にあった。

生産者とらでぃっしゅぼーやでタッグを組む

「らでぃっしゅぼーや」では作られたものをただ仕入れるのではない。農家とタッグを組み、農作物を【作る】ところからマネージメントしているのだ。その中には農作物に製品の品質管理・生産性向上のためのアドバイスやサポートもある。実際に生産者と安全性を保ちつつ生産性を上げるには?といった話をすることも。

こうして、農家と「らでぃっしゅぼーや」とは二人三脚で取り組むことで安心安全、そして品質にこだわった農作物を生産し、提供できる体制を整えたのだ。

3割高くても売れる。「野菜の価値」を変えた

「らでぃっしゅぼーや」の注文は一品からでも可能だが、一番人気が「ぱれっと」という旬の野菜詰め合わせ。客は中身を選べず、らでぃっしゅぼーやにお任せ。野菜や果物が10種類入っているタイプで2841円からと、一般的なスーパーと比較すると強気の価格だ。しかし、そこには「らでぃっしゅぼーや」の付加価値が加えられている。

リミットは36時間。安全で顔が見える野菜を

収穫した野菜は農家から直接、全国5ヶ所の配送センターに送られる。全国から集められた野菜は新鮮なまま箱に詰められ、いよいよ出荷となるのだが、最後に箱に【紙】が挟まれた。

紙に書かれていたのは農薬の使用状況だ。

ほとんどは「無」だが、中には使っている物もある。さらには生産者の名前に、住所の番地まで書いてある。そして野菜は生産者から出荷され、36時間以内に利用者に届けるというのも、「らでぃっしゅぼーや」のルール。そこには「顔の見える野菜」「安全のわかる野菜」としてのブランディング構造が形成されている。

独自性のある「お宝野菜」を掘り起こせ

「らでぃっしゅぼーや」では独自性のある地方野菜を積極的に発掘し、販売している。さて、以下の野菜を聞いたことがあるだろうか?

・赤キュウリ「モーウィ」

・大阪の「黒門キュウリ」

・北海道の巨大キャベツ「札幌大球」

・東京の「亀戸大根」

これらは一部の地方で古くから栽培されてきた伝統野菜だ。その地域以外には出回らず、見慣れないものが多いが、「らでぃっしゅぼーや」はこうした野菜100種類を全国から発掘。「いと愛づらし」シリーズとして販売している。

見たことのないほど大きな葉っぱの野菜「大型山東菜」もそのひとつ。白菜の仲間だが玉にならず、夏に採れる。この地域では室町時代から食べられてきたと言うが、メジャーな野菜ではないのでスーパーなどでは扱ってもらえず、生産する農家も激減した。しかし、「いと愛づらし」シリーズに選ばれ、1個230円で販売を始めると、なんと大人気となったのだ。こうしてこだわり野菜の価値は少しずつ浸透する。

消えかかってはいれども、実はとてもおいしい野菜は日本各地にある。「らでぃっしょぼーや」はそれらを発掘し消費者へとアピールした。地方に埋もれていた野菜は、まさにお宝として新たな価値が加えられて掘り起こされたのだ。

ドコモによる買収がクルーの「モチベーション」を変えた

携帯電話のドコモショップの店内にも「らでぃっしゅぼーや」のディスプレイがある。実は4年前から、NTTドコモのグループに入っている。今ではドコモの通販サイトからも「らでぃっしゅぼーや」の野菜が買えるようになり、客層も広がった。これは同時に、「らでぃっしょぼーや」で働く人間にも大きな改革をもたらした。

食卓のために。一生懸命作ったから…はNO

ある配送センターで詰められていたのはふぞろいの野菜。中には小さすぎたり、虫がついているものもある。一定の基準を明らかに満たしていなかったのだ。現場を見ていたらでぃっしゅぼーや代表取締役社長・国枝俊成がそれを指摘すると、こう答えが帰ってきたという。

『農家が一生懸命作ったモノですから。これくらいは……』

この出来事をきっかけに、国枝が始めたことがある。それが顧客の【声】を聞くことだ。

クレームは紙での報告ではなく、生の声を聞くことにこだわるという。月に1回の役員会議で流されたとあるクレームに役員全員が耳を傾ける。それらは【自分に向けられた声】として、役員から現場へ。その隅々まで情報を共有させ、いち早く対応できる仕組みを作った。

スキルとモチベーションアップに繋がるしくみを

配送クルーに対してのモチベーションアップのしくみも強化された。「らでぃっしゅぼーや」の配送クルーはセールスマンの顔も持つ。定期的に開かれる勉強会で野菜に関しての知識を身に付ければ、自分の武器となる。そうして注文が取れれば、利益の一部はクルーに入るのだが、国枝はその割合を以前より増やしたのだ。

女性クルーの大澤菜穂子は、接客のやり方を自分で考え実践している。傷みやすいトマトは新聞紙にくるんで渡す。箱の中身を袋に移し替えることもある。段ボールを持ち帰ればゴミにならない。こうしたちょっとした気配りが客の心を掴む。彼女は自分が行なったサービスについてこう語った。

『自分が会員だったらこうしてほしいな、ということをやっています』

そして今年から配送クルーに対し、営業成績や無事故などの5部門の賞で表彰するようにした。自分なりの接客を実戦した大澤さんは、顧客から届いた「喜びの声」が評価され優秀賞に輝いた。待遇アップにくわえてこうした影の努力も表彰されるのだ。クルーのモチベーションが上がればきっと顧客満足度も上がるに違いない。

事実、国枝改革は数字にも表れ、社長就任後、業績はV字回復している。

そして日本の農業を変えた。「らでぃっしゅぼーや」の挑戦

生産する。仕入れる。食す。

昔からあったこの構造だが、「らでぃっしょぼーや」はこのしくみは壊していない。あくまでも「らでぃっしょぼーや」は食材宅配、販売業。この構造の中では「仕入れる」の場所だ。だが、このしくみの中にいつつも、農作物の売り方を変えたのだ。

生産者との協業し、一緒に作物(製品)を作っていくというクオリティ・コントロールを行なった。誰も知らない野菜を発掘して価値を加えるバリュー戦略も導入した。そして販売者が自由にスキルを伸ばして実行できる、成果主義も強化した。「らでぃっしょぼーや」は流通のしくみの中にありながらも、農作物の売り方、いうなれば農業のあり方を変えたのだ。

海外のオーガニック市場は巨大だ、EUや北米には4〜5兆円の市場があるという。一方で日本の現状は約1,500億円。しかし、健康ブームや食の安全性への関心は年々高まり、まだまだ伸びしろはある。

安全で美味しいオーガニック野菜を食卓へ。

新しい農業を武器に、「らでぃっしょぼーや」は世界の規模へと挑んでいる。

〜村上龍の編集後記〜 

「らでぃっしゅぼーや」の成果の象徴、それが「いと愛づらし名菜百選」ではないかと思う。

地方・地域の、希少な伝統的野菜を紹介し販売する。生産そのものが困難になりつつある野菜をよみがえらせる、それは貴重な資源の再発見と維持につながる。

野菜は「生きもの」で、生産が止まると、その種は絶えてしまう。

国枝さんは元エンジニアだが、有機農法へ正統な敬意を抱き、その重要性を正確に把握している。

領域は違っても、優れた技術は、人々の幸福に貢献することを熟知しているからだろう。

 

文/小暮ひさのり

 

テレビ東京「カンブリア宮殿」

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出典元:まぐまぐニュース!