誰が見てもわかる恥ずかしさ。「いらない」と宣言するために、バーキンを持つ必要がある
日本に留まらず、世界中の女性たちを魅了する高級ブランド・エルメス。
そんなエルメスの代名詞といえる存在であるバーキンやケリーの価値が、ここ数年、局地的バブルかのように高騰し続けている。
なぜ女性たちは、バーキンに惹かれるのか?
現代の女性たちの間で、バーキンを持つ意味について、東京カレンダーでは、4人の女性たちに話を聞いた。
そこからは、もはやファッションアイテムを超えた驚くべき世界と価値観が見えてきた...。

File3.某サービス企業宣伝部・ミナミさん(31)
「バーキンになぜそこまで女性が熱狂しているのか、わかりませんでした。」
待ち合わせ場所に現れたのは、品川にある某サービス企業宣伝部に在籍しているミナミさん。派手さはないが、透明感があり、上品な出で立ちで男性受けしそうな女子アナ風の女性だった。
我々が「あれ?」と思ったのは、バーキンの取材なのに、手には、ヴァレクストラの白いバッグを持っていたこと。(バーキンを持ってきて欲しいと頼んでいたのだ。)我々の戸惑いに気付いたミナミさんは、大きな白い紙袋から直にバーキンを取り出した。
「こんなこというと感じ悪いと思うんですけど、正直、全然つかってないんです。バーキンもケリーもあまりにも、ぱっと見でわかるでしょう?アイデンティティーが強すぎるというか...高校生の頃に流行った某ブランドのモノグラムどーん!的な恥ずかしさがあります。」
今までエルメスへのポジティブな感情の女性ばかりだったため、若干面を食らう編集部が「じゃあ、なぜ...」と喉元まで出かかった言葉を察するように、ミナミさんはバーキンについて語った。
彼女がバーキンを持つのが恥ずかしい理由とは?
市民権を得過ぎたアイテムであるがゆえの、ダサさ。
「あまりにも市民権を得すぎたブランドバッグって、総合的なスタイルをいびつにするというか、ファッションを一気に凡庸にすると思うんです。なんというか、バーキンに持たれているという印象が強いですよね。D&Gのロゴベルトなんかを恥ずかしくて持てないという感覚に近いです。」
たしかに、あまりにもぱっと見でわかりすぎて、もはや持つのが恥ずかしいアイテムが存在するというのは理解できる。ミナミさんはそれに近いものが、バーキンやケリーにあるという。
「かっこつけでもなんでもなく、どちらかというとヴァレクストラの構造的な美しさや、まだ持っている人が少ないデルヴォーのブリヨンの方がよっぽどハイセンスにファッションを締めてくれると思います。それに品も良いですし、街中を見ていても、素敵だなと目を奪われる人のおしゃれは引き算が上手です。」
そう言って、ミナミさんを見ると、確かにセンスが良い。カッティングが綺麗なYOKO CHANのアイスブルーのワンピースに、TASAKIのバランスのネックレス。靴は、マルニで少しモードに。腕には、カルティエのベニュワールのアンティーク時計。
「じゃあ何で、持ってるんだ?って思われましたよね。それは、女性の世界がとても生きづらいから、サバイバルの道具として恋人が贈ってくれたんです。」
現在ミナミさんには、投資家として自ら事業を行っている恋人がいる。バーキンは、30歳の誕生日に恋人から贈られたものだという。その時に彼はこう言ったそうだ。
「とりあえず、さくっと手に入れちゃえばいいんだよ。そのあとで、いらないって堂々と言えばいい。」

恋人が誕生日にホテルのスイートルームで贈ってくれたというエルメス。
とかくこの世は住みにくい?蔓延るルールをクリアできない女性に、発言権はない。
「女性同士って本当に生きづらいんです。わたし一度離婚しているんですけど、そもそも、正直結婚願望は全くありませんでした。
でも、適齢期の女性の独身がどれだけ肩身がせまいかわかりますか?結婚に興味がない、と言えば、同情の目。結婚式に出れば、私は焦ってもないのに、あなたも早くできるといいね、って優しさに似せた優越感を持ってして、土足で心に侵入してきます。
余計なお世話だ!って何度心の中で叫んだことか...だけど、自分の人生、自分の価値観で、ってほど、残念ながら私は強くありません。」
そうして、ミナミさんは、28歳のとき、1周り年上の弁護士とさくっと結婚。
「そもそも、周りを黙らせるための結婚だったんです。バカみたいだという人もいますが、自由でいるためには、この世界に蔓延るルールに則ってまずは、勝たないといけない。そうじゃなきゃ、ただの負け犬の遠吠えになりますから。
1回結婚すれば、あとは放っておいてもらえるでしょう?結婚してみてから、やっぱり必要なかった、って言えばいいんです。」
仕事でもそうだという。上司のやり方が気に食わなかったとしても、否定する前に、まずは、上司の手となり足となり上司の想像以上の成果を出す。
文句を言ったり、自分の流儀を通すのは、そのあとだ。成果を出せば、あとは、信頼を勝ち得て、自由に仕事を任せてもらえるという。
そして、ミナミさんは、2年後に離婚した。
彼女が語る、年頃の女性が生きづらい理由。東京の女性が求める、3つのBとは?
「いらない」と発言する自由を得るために、バーキンを得る?
常々、女性の生きづらさに辟易してきたミナミさんに、恋人は、女性の人生の生きづらさを理解した上で、その女性達のマジョリティの価値観にはまらない、いや、はまれないミナミさんを自由に解放するためにバーキンを贈ったという。
「最高の恋人だと思いませんか?いらないって発言する自由を与えるために、バーキンをくれるって、普通の男性ならなかなかできません。(笑)」

東京で豊かな女性が手に入れたい「3B」とは?
ミナミさんは、結婚同様、東京で暮らす豊かな女性が幸せであるために必要とされている3つの条件について話し始めた。
「その3つは、2017年の東京の裕福な女性たちの間では、“手に入れるべき”とされているものです。キーワードとなるワードを3Bって揶揄して言っています。Bride、Baby、Birkin。結婚に、子供に、バーキンです。
だけど、個人に落とし込んで見れば、皆が皆これらを欲しいと思っているかはわかりません。思考停止して、欲しい気になっているだけかもしれません。結婚だって、しなくていいし、子供だって、産まなくていい。そういう自由な時代に生きているわけですから、好きに選択すればいいんです。
だけど、そういう無言の圧を一蹴できるほど皆強くない。結局私も女性の世界に蔓延るゲームから降りるわけにはいかないので、さくっと早めに経験して、あとは外野で自由にお酒でも飲んでいたいなって思いますよ。」
たかがバッグ、されどバッグ。バーキンに女性達が振り回されて、地球が回る。
年頃の女性が、「(その状態に)あるべき」とされる世間のプレッシャー。
結婚に、子供に、バーキン...ちょっと行き過ぎた価値観な気もしないでもないが、一部のハイクラスな女性達の間では、バーキンは、手に入れてこそ一人前という空気感があるのかもしれない。
ちなみに、皆があれほどまでに苦しんで購入したバーキン。ミナミさんの彼はどうやって手に入れたんだろう?
「エルメスの専門店があるみたいですよ。市価の倍以上するみたいですけど、お金をだせば、好きな色、好きな形、好きな大きさでほぼ手に入るって言ってました。」
彼曰く、購入金額は230万円だったという。(市価は一般的に150万円と言われている。)しかし、女性たちが言うエルメス直営店から買う価値を感じていないのだろうか?
「全く感じませんし、彼も感じていないと思います。直営店で買うために、数年待って、さほど欲しくもない商品にお金を落として、その挙句、好きな色も指定できないって、どんなプレイだよ!って突っ込みたくなります(笑)」
そう言って、ミナミさんは笑う。たしかに、本当に、バーキンという商品が欲しいなら、ユリアさんのように時間をかけて顧客になったり、何度も店を訪れる手間暇をかけるより、非常に効率的だ。お金さえあれば。だが、それでいいような気もする。
「たかがバッグなのに、女性たちは、バーキンを買うために直営店で血眼になってる。あくまで、主役は自分。自分を輝かせるための道具に、振り回されるなんて、バーキンって本当不思議な力がありますよね。
もちろん、「バーキンなんていらない!」そう一蹴することはできます。だけど、そんな女性に「プレゼントするよ。」と誰かが言ったとしたら...その甘美な誘いを本当に拒否できる女性はどれくらいいるのでしょう?
欲しいけど、強がっている人もいるんじゃないですか?やっぱり、手に入れて初めて堂々と言えることってあると思いますよ。」
そう言ってミナミさんは笑った。
▶︎NEXT:3月25日日曜日更新予定
最終回:「本当のお金持ちはバーキンを買わない」名士に嫁いだ美女が、義母から叩き込まれた知恵
【これまでのバーキンの秘密】
vol.1:この世で一番偉いのは、バーキンを売るエルメスの店員?150万のバッグに女が熱狂するワケ
vol.2:ママが私にくれたのは19歳のとき。エルメス店員も驚いた、慶応幼稚舎卒女性が持つバッグ
