「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。「潤う」、「潤滑」「潤沢」の「潤」。大地が潤い、命を育む季節です。今回は「潤」に込められた物語を紹介します。



「潤」という字はさんずいに門がまえ、その中に「王」と書きます。

白川文字学でおなじみの白川静博士は、この「王」を「壬(ジン)」という字、カタカナの「ノ」のような字の下に「土」と解釈しました。

「壬」は、中央が太くふくらんだ工具を表します。

たとえば女へんに「壬」と書くと「妊娠する」の「妊」。

女性のおなかがふくらんで「はらむ」という意味の漢字です。

つまりこの「壬」とは、ものが肥大することを表すのです。

そこで「潤す」という漢字の中にこの「壬」を使い、水がしだいにしみ込んで広まり、ゆたかになる状態、

「うるおす、うるおう、ゆたかにする」という意味を示したというのです。

長い長い、雨の季節。

田植えを終わったばかりの稲の様子を見るために、大人たちは雨の中を歩いて出かけます。

青葉をしっとりと濡らし、輝かせる雨。

風景をぼんやりとけむらせる霧雨。

空から激しく吹き降りる、篠突く雨。

豊かな雨の表情は、見慣れた風景を新しくします。

外で遊べない子どもたちが楽しむのは、雨の音。

ちゃぷちゃぷぴったん、ぽつぽつ、ざあざあ。

いつしか誰かが、雨に合わせて歌い出す。

恵みの雨はゆっくりと、人の心も潤してゆくのです。

ではここで、もう一度「潤」という字を感じてみてください。

雨が世界を潤す季節は、私たちもまた、魂を潤すチャンスです。

草木のように、特別なことなど何もしない。

出かける予定も約束ごとも入れず、今いる場所で、静かな時を過ごします。

子どもと一緒に、絵本の世界へ旅に出る。

手間をかけない料理と美味しいお酒を、親しい人とゆっくり味わう。

ひとり湯船にのんびりつかって、好きな歌でも口ずさむ。

そのうちきっと、枯れていた心の土地がふっくら潤って、美しい花が咲き、豊かな果実が実りはじめます。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

6月18日の放送では「袖」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/