学生の窓口編集部

写真拡大

海などで溺れた人を救助し、応急処置などの一次救命処置を行うライフセービング。みなさんは、このライフセービングの「部活動」があるのをご存じでしょうか? 知られざるライフセービング部の活動内容などを、日本体育大学ライフセービング部に聞いてみました。

■ライフセービング部では実際に夏の監視活動も行う

日本体育大学ライフセービング部は、2014年の学生プール競技選手権優勝、2015年 全日本学生選手権 男子総合優勝(海の大会)に優勝するなど、全国トップクラスの強豪です。そんなライフセービング部の活動などを、体育学部体育学科4年の大竹達士さん、小椋隆継さんに伺いました。

――ライフセービング部の活動内容を教えてください。

小椋さん ライフセービング部の活動は大きく三つに分けられます。一つ目は中心となる夏の期間に行う監視活動。二つ目にスポーツとして行うライフセービング、いわゆる競技。三つ目はライフセービングの普及と発展のために行う教育活動です。

――実際に海などに行かれて監視をするのですか?

小椋さん グループに分かれて各地域の監視場所を担当します。例えばですが、私たちは東京都の神津島に行ってライフセービング活動を行ったりしました。

大竹さん 他にも、千葉県の内房・外房に分かれても活動しています。

――普段どんな練習をしていますか?

大竹さん 朝のプール練習と、夕方の陸上トレーニングといった、泳ぎ込みと走り込みが基本です。どちらも長距離だけでなく、スプリント系も織り交ぜながら体力の強化や、ライフセーバーとしての救助技術の向上を目指しています。

――例えば、ライフセービング部ならではの練習などはありますか?

小椋さん 例えば、350メートルを全力で走った後に人を背負って50メートル走り、その後心肺蘇生法を行うトレーニングがあります。ライフセービング部ならではの練習ですが、最も過酷でした。他にも、水を入れると40キロくらいの重さになるマネキンがあり、これを使ったトレーニングは他の部活にはないものです。

――過酷なものですと、他にどのようなことが大変でしたか?

小椋さん 練習というより、僕も大竹も泳げない状態で入ったので、最初の泳ぎの練習は二人とも大変でした(笑)。

――日本体育大学は数々の大会で優秀な成績を残されていますが、この大会ではどんなことを行うのでしょうか?

大竹さん 大会は大きく分けて「海の大会」と「プールの大会」があります。どちらも「実際の救助」を想定したもので、溺水者を想定したマネキンを素早く救助して戻ってくる、といった競技が行われます。

小椋さん 他にもフィンを装着しての救助やビーチフラッグスなども行います。いずれにしても、「勝利の先に救う命がある」という本質の下に行われているものです。

――やはりプールと海では違うものですか。

小椋さん ライフセーバーは海がメーンの活動場所になるので、全日本ライフセービングプール競技選手権などの大きな大会は海で行われます。やはり海は波の高さなども一定ではなく、「自然の驚異」といえる環境ですね。

――実際と同じシチュエーションで、ということなのでしょう。

■命の重み、命を救う困難さを学ぶ

――お二人がライフセービングに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

大竹さん 高校2年生の終わりに東日本大震災が起こり、そこから消防士になりたいと強く思うようになりました。高校卒業時に消防士になるという道もありましたが、大学に入りさらに見聞を広めたいと思い、日本体育大学に入学しました。入学時にさまざまな部活動を見たのですが、その中でライフセービング部の存在を知り、「人命救助など命に関わることが学べるこの部で、4年間やり通すことができれば成長できるのでは」と思い入部しました。

小椋さん 僕は高校までは野球をやっていたのですが、途中で挫折しまして、教員になろうと思って日本体育大学を目指しました。そのときにパンフレットでライフセービング部が紹介されており、そこに「あなたは愛する人を救えますか-?」と書かれていました。それを自分に問いただしたときに「自分は何もできないじゃないか」と思い、何かあったときに何かができる自分になりたくて入部しました。

――お二人とも強い志を持って入部されましたが、このライフセービング部の活動の中でどんなことを学ばれましたか?

大竹さん 「自分のした努力が誰かの役に立つ」ということが、学んだことであり、またライフセービングの魅力だと思っています。また、「命の重さ」はもちろんですが、練習などを通して「諦めないことの大切さ」も学ぶことができました。

小椋さん 僕も大竹と同じく「命の大切さ」や「諦めないこと」ですね。どんなことでも諦めずに尽くさなければならないことを学びました。他には人を救うことがこんなに困難なことなんだということも学びました。私たちライフセーバーが諦めるということはつまり、要救助者の死を意味します。どんな困難な状況であれ、助けにいかなければならない、心肺蘇生を続けなければいけません。ライフセーバーは諦めないという強い精神力を備える必要性があります。

――人命救助に関わることですから、「命の重み」は痛いほどに学ぶのでしょうね。お二人の今後の展望を教えてください。

小椋さん 自分は卒業後は東京都の消防士になります。入庁後の最初の目標は「特別救助隊員」になることです。もともと消防士になりたいと思ったときからレスキュー隊に強い憧れを抱いており、東京は災害なども多い都市なので、一人でも多くの助けを求める人に手を差し伸べたいです。

大竹さん 自分は地元の静岡市で消防士になります。静岡市の火災発生件数は年間200-300なのですが、この数字は努力次第でさらに減らしていけると思っています。消防士としてこの件数を0に近づけられるよう努力します。他にも、ライフセービングの普及にも力を入れたいです。特に地方はまだライフセービングが知られていないところもあるので、その普及・発展に貢献したいです。

――最後に、読者の大学生や大学進学を目指している高校生に一言お願いします。

小椋さん 自分自身の目指すものがあるのならば、そこに必ず覚悟が要ります。覚悟を持って決断したからには、どんなことがあっても諦めないでほしいです。それは就職、部活、学校、社会に出ても同じです。「諦めないこと」が成功につながると思います。

大竹さん 大学では「経験すること」を重視して、さまざまなことにチャレンジしてください。このライフセービングも人の命に関わることですから非常に厳しいことがたくさんあります。しかしその分、他では味わえない貴重な経験ができました。皆さんももし興味があればライフセービングを体験してみてください。

――消防の道へ進むお二人の今後の活動が楽しみです。ありがとうございました。

水泳の得意な人が多いイメージのあるライフセービングですが、日本体育大学のライフセービングではお二人をはじめ、入部時に全く泳げないという人も多いそうです。「ライフセービングに興味はあるけれども泳げないし……」という人でも、強い気持ちを持って望めばすぐに泳げるようになり、一流のライフセーバーになれるかもしれません。興味がある人はぜひ日本体育大学のライフセービング部の門をたたいてみては?

写真提供:日本体育大学 ライフセービング部

(中田ボンベ@dcp)