写真・時事通信

「当時は、高嶋りえ子ママの熱烈なファンだったんです。でも彼女に、志村けんさんの “コロナデマ拡散” に協力するように言われたとき、さすがに戸惑いました。本当はあのとき、私が彼女を止めるべきだったと後悔しています」

 そう懺悔するのは、専業主婦のA子さんだ。

 志村けんさん(享年70)は、3月20日に体調不良で緊急入院し、同23日には新型コロナウイルスの陽性が判明、同29日に逝去した。国民的スターの突然の死は、日本中に衝撃をもたらした。

 現在でも、志村さんの感染経路は不明とされている。だが、感染が報じられた当初から、とあるまことしやかな噂が、ネット上に流れていたことをご存じだろうか。

「2月に志村さんの誕生日会が、白石明日香ママの運営する銀座のクラブ『Blair』で開かれ、スペイン旅行から帰国したばかりの北新地のクラブの藤崎まり子ママも参加し、志村さんにコロナをうつしたというものです。

 さらに『クラブ藤崎』でも、ほかの従業員からコロナの陽性患者が出て、お店は営業停止させられた、というデマが流れたんです」(A子さん)

高嶋氏がスタッフに投稿させた、というツイートのひとつ

 上の投稿は、「Akira_watanabe1」なる人物のツイートだが、まさに志村さんの感染の原因が白石氏にあることをにおわせ、『クラブ藤崎』の名前も思わせぶりに書かれている。

 ネット上では、こうした “デマ” がブログなどに引用されて拡散されているうちに、藤崎氏と白石氏に批判が殺到する事態となった。

 だが、この投稿の裏には、「わざとデマに火をつけた、“炎上犯” がいるんです」とA子さんが続ける。

「りえ子ママによると、デマツイートの投稿者のひとり『Akira_watanabe1』は、お店のスタッフだそうです。『あれは、うちのスタッフに馬鹿っぽく書いてもらったの』と言っていました。

 りえ子ママは、志村さんの死去に際して、“同業者” である藤崎ママと明日香ママを炎上させようとしていたんですよ」

 このりえ子ママとは、いったい何者なのか。A子さんと同じく「りえ子ママのファンだった」という、B子さんが語る。

「『銀座クラブ高嶋』で、ママを務めている方です。自身の名前を冠した化粧品で、年商40億円を売り上げていると自称しており、敏腕経営者としてバラエティ番組への出演歴もあります。

 2020年の1月には、JAL機内でエルメスのバーキンを床に置くように注意した客室乗務員の名前と顔を自身のSNSで晒し、炎上しました。この騒動は『週刊新潮』でも取り上げられ、いまでは、銀座界隈でも有名なオーナーママです」

 B子さんも、SNSでセレブ生活を披露する高嶋氏に憧れていた。

「りえ子ママが通信販売している、化粧品ブランドを愛用していました。あるとき、りえ子ママと10数人の熱心なファンが参加するLINEグループに、私も入れてもらえることになったんです。

 そのLINEグループでは、ママの気に入らない人物をSNS上で攻撃するよう、ママから指示が飛ぶことがありました。指示どおりに悪口を書き込んだことを報告すると、『お礼をしたいから食事をしよう』とか、『着ていたドレスをプレゼントする』などと言ってくれましたね。実現したことは1回もありませんが……」

 高嶋氏は、とくに同業者に目をつけており、“セレブな生活を披露するクラブのママ” として、SNS上で人気だった藤崎氏と白石氏が、高嶋氏のライバルとして標的になったというわけだ。

「私は、彼女たちが『偽ブランドバッグを使っている』とか、『美容整形をしている』といった内容を書き込みました。りえ子ママに気に入られたい一心で、こんな悪口はどうでしょうかと、提案したりすることもありました」(B子さん)

 そして、志村さんのコロナ感染が報道されると、高嶋氏はこれを利用しようとしたわけだ。実際A子さんは、高嶋氏から具体的な指示を受けていたという。

「私は3月27日に、りえ子ママからLINEで、『クラブ藤崎にコロナ感染者が出たという噂がいいかも』と、言われました。

 今回も、これまでどおりに、りえ子ママの指示を守るつもりでしたが、志村けんさんという大スターにまつわるデマを書き込んだら、大問題になるのではないかと思って、寸前でやめたんです。

 でも結局、りえ子ママは、自分のお店のスタッフに指示して、“クラブで感染デマ” を投稿させていました」

藤崎氏はデマのせいで誹謗中傷を受けた

 こうして拡散したデマで、「志村を殺した女」として批判を浴びた藤崎氏が、その苦しみを語ってくれた。

「あのデマが流れたとき、4〜5日は泣いてばかりいました。『死ね』『人殺し』『志村けんを返せ』などのメッセージが毎日、山のように来ました。

 私は、そもそも志村さんにお会いしたこともありません。海外旅行に行ったのも、2年前のベトナムが最後です。店は営業停止ではなく、自主判断で休業しているだけでした。

 私には家族や友人、そして私を信じてくださる方がいたのでなんとか耐えられましたが、負のスパイラルに陥ってしまったら、自殺もあり得たと思うぐらい、つらい体験でした」

 同じく被害を受けた白石氏は、現在デマの投稿に対処するため、発信者の情報開示請求をおこなっているという。

「志村さんは、確かにうちのお客様でしたが、ご来店をいただけたのは年に数回。誕生日会の会場が当店とされて、非常に迷惑でした。

 コロナの感染源という風評被害は、いまだに払拭できていません。開示請求が認められたので、今後、法的措置を進めます」

 白石氏は、こうした法的な対応をおこなうことを、SNSで宣言している。折しも、『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが逝去。SNS上で誹謗中傷にさらされていたことが発覚し、匿名の “卑怯者たち” が問題となっている。A子さんが語る。

「直接、志村さんのデマ発信に加担したわけではありませんが、私も、明日香ママや藤崎ママを誹謗中傷していたのは事実です。木村花さんの件もあり、『もう逃げられない』と思い、直接2人にも謝罪したくて、今回の炎上騒動の真相をお話ししようと思ったんです」

 では、当の高嶋氏はどう話すのか。A子さんら、みずからのファンに対してデマの拡散を呼びかけたことや、スタッフにデマの拡散を指示したのは事実かと質問状を送ると、高嶋氏の秘書から「お金を払えば記事を取り下げられますか」と電話がかかってきた。その後、電話を通じて高嶋氏本人から直接回答があった。

「そもそも、藤崎さんがコロナの感染源であるという話は、すでにネットで広まっていたものですよね。もちろん私が誰かに、志村さんのデマの情報を拡散するように指示したこともありません」

 スタッフに投稿を指示した件については、「当時の従業員に、コロナへの注意喚起の意味合いで、投稿を呼びかけただけです」と弁明。さらに、「私がそんなことをやっていないという証拠があるから、来てほしい」という。

 そこで翌日、本誌が取材に行くと、同席する弁護士から「質問内容は事実無根である。証拠はあるが、今すぐに答える緊急性がない」との不可思議な通告を受けた。

 ある日突然、SNSで降りかかる、いわれなきデマ。藤崎氏も白石氏も、高嶋氏とは面識すらないという。みずからの死を利用したデマ騒ぎを、泉下の志村さんも、さすがに「だいじょうぶだぁ」とは笑ってくれないだろう。

(週刊FLASH 2020年6月16日号)