「たたく」「蹴とばす」「壊す」…子どもの”許しがたい行動”に効く「正しいペナルティ」の与え方
落ち着けない、こだわりを抑えられない、気持ちを切り替えられない……発達障害を抱える子には「できない」ことが多く、保護者の悩み・教師の負担となっている。“いずれはきちんと自立してほしい”そう考えると少しでも「できること」を増やしておきたいところだが、どうすればいいのか。発達障害の臨床に長年携わる医師2人が総力を挙げてつくった著書『発達障害を抱える子どもの「できる!」を増やす作戦事典』から、とっておきの知恵をご紹介する。
「最後のチャンス」を子どもに与える
今回の記事では、発達障害の子どもが「好ましくない行動」をどうしても続けてしまうとき、あるいは、社会的に容認できない「許しがたい行動」に及んでしまったときの対応(作戦)をご紹介します。
好ましくない行動をやめないとき、許しがたい行動を起こしたときに使える作戦「警告」「制限」について説明します。
まず警告とは、ラストチャンスの提示です。つまり、好ましくない行動を自ら修正する「最後のチャンス」を子どもに与えることです。
くり返し言葉をかけたり、働きかけたりしても子どもが行動をあらためないときは、まずCCQ でやめてほしい行動を伝えたうえで、警告としてなぜいけないのかを説明します。さらに子どもにしてほしい行動を伝え、子どもが警告によって与えられた指示に従えた場合は、必ずほめてください。
警告しても子どもが指示に従わなかった場合は、従わないという選択をした結果として、子どもの行動に次に述べる「制限」を加えます。
「正しいペナルティ」タイムアウトとは
「制限」は、行動(したこと/しなかったこと)によって起こった結果を受け、子どもにその責任をとってもらうことです。体罰など不適切な方法ではない、配慮のもと行われる正しいペナルティだと言えます。警告を受けても指示に従わなかった場合や、下のような他者への責任が問われる行動をした場合は、しかるべき制限をかけます。
制限が必要と判断された場合は、行動の解消と修正のため、迷わずすぐ対応する必要があります。たとえば教室で騒ぐなどの迷惑行為には「タイムアウト」を試してみてください。タイムアウトとは、迷惑行為が起きている環境から一時的に子どもを遠ざける方法です。
具体的には、目や耳からの刺激がなく、話す相手もいない静かな空間で落ち着いて考える機会をつくり、自分の行動への気づきと反省につなげることを目指します。制限の方法のひとつとして、行動の修正を図る目的で広く活用されています。
ここで例として取り上げている「教室で騒ぎ続ける」という行動をもとにもう少し詳しく説明します。
大人が何度か働きかけても、子どもが騒ぐのをやめない場合は、「もう一度騒いだらタイムアウトですよ」と警告し、それでもまた騒いだらその場から子どもを移動させ、以下の手順に沿って人や事物からの刺激を一定時間断つという対応をします。
【タイムアウトの手順】
(1)子どもと事前に話し合い、他者の迷惑になる行動をしたらタイムアウトをするというルールを決め、よく教えておく。
● 突然タイムアウトを実行すると子どもが混乱するので、納得を得られなくても事
前に伝えたほうがよい。
(2)迷惑行為が続くようであれば、まず「やめないとタイムアウトですよ」と警告する。
● 子どもがその行動をやめたら、タイムアウトは中止。
(3)警告に耳を貸さないときは、「タイムアウトします」と言って、別室へ連れ出す
● 連れ出す場所は、静かで刺激がなく、遊びに使えるもののない、大人の目の届く安全なところであれば廊下などでもよい。
● 怒ったり叱ったりせず、黙って冷静に連れ出すこと。
● 幼稚園、保育園などでは大人の目の届く場所にすること。
(4)「○分タイムアウトします」と予告し、子どもに心づもりをさせたうえでタイムアウトに入る。
● 時間は、年齢×1分程度を目安に設定するとよい。
(5)時間になったら「終わります。戻りましょう」などと伝え、元の場所や動に復帰させる。そして行動の修正を行う。
● 復帰させるときも、ねぎらったり説教したりしないようにする。淡々と連れ戻すように心がけたい。
タイムアウトから行動の修正へ
タイムアウトのあとは少し時間をおき、子どもが落ち着いているときに、好ましい行動への修正を図ります。まず「さっきしたことは、いいこと? 悪いこと?」と問いかけ、自分の行動に向き合うよう、促してください。
大人のほうから子どもに向き合うことで、子ども自身が家族、先生、そして自分に向き合おうと思えるよう、方向づけていきましょう。「怒られたからやめる」のではなく、「周囲から気遣われ理解されたことにより、自分で気づける」ようになることを目指します。
その際は、「行動をたしなめて、人格を責めず」が鉄則です。
「クールダウン」とは、気が立ったり興奮したりしているときに感情の沈静化を図ることです。所定のスペースで子どもに深呼吸させたり、拳を握って10 数えさせたりすることで気を落ち着けてもらいましょう。
ぬいぐるみを置いておき、その手を握ったり目を見つめたりして「がまん、がまん」と唱えてもらうなど、大人が落ち着ける方法を提案する場合があってもいいと思います。
クールダウンできる空間も活用する
最近はクールダウンに使える「クールダウンスペース」「カームダウンスペース」「センサリールーム」などの専用スペースを設けている幼稚園・保育園、学校が増えています。
クールダウンは心身が限界に達する前に一時避難し、シンプルに頭を冷やすことなので、ペナルティである制限とは異なりますが、そのクールダウン用のスペースを、タイムアウトのために活用するのもいいと思います。
施設内、あるいは家庭内に、少し暗めで何もない、静かな専用スペースをクールダウンのために設けておくのがおすすめです。しかし現実には、そのような場所を設定する空間的余裕がない場合も多々あることと思います。
専用スペースを設けられない場合は、たとえば学校であれば、階段脇の空きスペースに椅子と机を置いてかわりに使ったり、人のいない廊下を短時間使ったりする、といった方法も一案です。この度上梓した新刊『発達障害を抱える子どもの「できる!」を増やす作戦事典』に分かりやすいイラストとともに掲載しましたので、宜しければ参考にしてください。
なお、階段脇のスペースを使う場合も、廊下を使う場合もそうですが、他の人も通る(あるいは使う)場所を利用するときは、他人(とくに年下の子)の視線を気にせず静かに落ち着いて過ごせるようにしてあげてください。
具体的には、低学年の教室付近を避けたり、廊下を通る人の視線を遮ることができるように、あらかじめ衝立を立てておく、などの配慮をすることが望まれます。
【後編を読む】ときには「住み分け」も必要です 小児科専門医がすすめる「発達障害」の子を“いじめ”から守る方法
