舘ひろしが明かす、撮影現場でのアドリブと西野七瀬への絶大な信頼感

舘ひろし×西野七瀬
舘ひろしと西野七瀬が、映画『免許返納!?』(6月19日公開)に出演する。舘ひろしは免許返納を迫られるスター俳優・南条弘、西野七瀬は、彼を時に冷徹に突き放しつつ支えるマネージャー・川奈舞を演じる。映画『帰ってきた あぶない刑事』での共演も記憶に新しい二人が、今度は「ベテラン俳優とマネージャー」という、より密接で、少し風変わりな関係性でスクリーンに帰ってくる。タイトルは『免許返納!?』。かつて舘が主演した名作コメディ『免許がない!』から30余年。運命に導かれるようにして生まれた本作の、撮影の裏側について2人に話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)
僕を見下せば見下すほど、この映画は面白くなると確信
――舘さんは企画段階から携わっていたというお話も伺いましたが、どのような経緯だったのでしょうか。舘ひろし素晴らしい脚本だったのですが、少し過去と現代が入り乱れていたので、「もう少し時系列をスッキリさせよう」ということだけを話しました。セリフなどは現場で西野くんを頼って、いろいろとやらせていただきました。――西野さんは、舘さんとの再共演が決まった際、どのようなお気持ちでしたか?西野七瀬
『帰ってきた あぶない刑事』でご一緒した直後だったので、またこんなに早く、しかも今度は「俳優とマネージャー」という、より距離の近い関係で共演できることが純粋に嬉しかったです。――舘さんの新しい一面も見られましたか。西野七瀬
前回ご一緒した時はクールな役でしたし、私自身も緊張していたので、「初めての舘ひろしさん」という感じだったのを覚えています。私が演じる川奈という役は物怖じしないという設定なのですが、現場で舘さんが「ここはこんな風に言ってみるのはどう?」などとセリフをいろいろ提案してくださって、コミュニケーションは前作よりもたくさん取れました。――西野さんが演じるマネージャー・川奈舞は、スターである南条に対してかなり当たりが強い、いわば「鬼教官」のような役どころですね。西野七瀬
そうなんです。最初は「南条さんに振り回されて困ってしまう」という方向かなと思っていたのですが、本読みの時に舘さんから「もっと冷たく、見下していいよ」「遠慮しないで」とおっしゃっていただいて。舘ひろし
今回はとにかく彼女に「拠って立つ」部分が多かった。西野くんが僕をコテンパンに見下せば見下すほど、この映画は面白くなるという確信が僕の中にありました。西野七瀬
舘さんは本当に心が広くて、私が冷たい目線を送ったり、強い言葉で罵倒したりしても、すべてを包み込んでくださる。だからこそ、私も「この役じゃなかったら絶対に言えない!」というセリフを全力で楽しませていただきました。――劇中では、舘さんの代名詞である「ダンディズム」が面白いように崩れていきます。舘ひろし
僕はどの作品も結局、自分自身のような気がするんです。例えば『あぶない刑事』の場合は、割とハードボイルドな部分を膨らませてその作品に向かっていく。今回は、僕の中にあるコミカルな部分を膨らませてやっているような感覚なんです。あまり、何をやっても変わらないという気がしています。演じることがそんなに上手くないので、自分自身としてやるしかない(笑)。
南条に対する愛情が“あのシーン”で明確になる
――現場でのアドリブも多かったと伺いました。特に印象に残っているシーンはありますか?舘ひろし南条が古希祝いで着ていた衣装に八つ当たりして蹴飛ばすシーンです。空振りをして転んでしまうのですが、それを見た西野くんが「え?空振り?」と言ったり、足を広げて転がっていた時のセリフも現場で足した演出だったりして、印象に残っています。西野七瀬
転んだ舘さんに、普通ならマネージャーとして「大丈夫ですか!」って心配して駆け寄るところなんですが、舘さんが「来なくていい、そこは冷たく突き放して!」とおっしゃって(笑)。舘ひろし
あの瞬間に二人の歪(いびつ)な、でも面白い空気感が完成した気がします。それから、駅前でヤクザと喧嘩になるシーン。あそこも、元々は西野くんはただ見ているだけの予定だったのですが、それでは南条への愛情が伝わらないと思い、川奈も突っ込んでいくことを提案したんです。西野七瀬
急に「膝にサポーターを入れてください!」と言われて驚きました(笑)。足にしがみついて必死に止める芝居は、やっていて本当に楽しかったです。舘ひろし
あそこで川奈が必死にならないと、彼女の立つ瀬がないというか。「一体、彼女は何だったんだろう。ただ文句を言っているだけのマネージャーで終わってしまう」と思ったんです。南条に対する愛情が、あのシーンで明確になるんじゃないかと思いました。とはいえ、西野くんのアクションシーンは憎めないと言いますか、何をやっても可愛いんですよ。西野七瀬
(笑)。こういった役はあんまりやったことがなかったので、観る方によっては新鮮に感じてもらえるんじゃないかなと思っています。舘ひろし
ただ、二枚目女優としての仕事がなくなっちゃうかもしれないけどね。それをちょっと心配してます(笑)。西野七瀬
(笑)。役の幅を広げていただいた、とても良い機会になりました。舘ひろし
あと、僕がタクシーで移動するシーンで、川奈が南条のフェラーリで追いかけてきます。そこで怒られるんですけど、僕が「うるさいから窓を閉めちゃおう」と言ったのもアドリブでしたね。――南条、かわいいですね(笑)。舘ひろし
その後の川奈が「バカヤロー」と叫ぶのもかわいかったなぁ、、、ちなみに西野さんから見て、「このシーンの南条は愛おしかった」と思えたところはありましたか。西野七瀬
ありました。南条さんが子供みたいに怒るのですが、今までの舘さんでは見たことがなかったなと思い、最高の瞬間でした。
舘ひろし、西野七瀬が手放したくないものとは?
――ところで撮影現場に、舘さんと西野さんはどんなものを「差し入れ」されたのか気になります。舘ひろし僕はドーナツを差し入れました。全種類……とはいかないけれど、たくさんね。西野七瀬
私は暑い日の撮影だったので、水分補給をと思い、冷たいドリンクのケータリングをお願いしました。――ちなみに舘さん、ドーナツがお好きなんですか?舘ひろし
砂糖がまぶしてあるやつが特に好きなんですよ。――本作では「年齢を重ねたら、やるべきことにしっかり向き合うことが大事」というメッセージもあると思います。舘さんが思うカッコいい大人とは?舘ひろし
それは僕が聞きたいくらいですよ(笑)。ただ、僕が信念を持って向き合っているものは、舘家のモットーで“男子たるもの、紳士たれ”ということかな。――西野さんは、本作の舘さんの姿を見てどんなことを感じましたか。西野七瀬
舘さんは常に現場を明るく盛り上げて、新しいアイデアを出し続けてくださる。何歳になっても楽しそうに過ごされている姿を見ると、私も舘さんのように素敵に歳を重ねたいなと憧れます。――逆に舘さんから見た西野さんはいかがですか。舘ひろし
西野くんは、出会うたびに成長していて驚かされます。『帰ってきた あぶない刑事』の時とは全く違う顔を見せてくれましたし、これからもどんどん良くなっていくんだろうなと感じています。――本作では免許返納に奮闘することになりますが、お二人が向き合っていることで、「これは返納したくない」「手放したくないもの」はありますか。舘ひろし
ゴルフです。その中で体力は手放したくないですね。ゴルフだけはずっとやり続けたいです。西野七瀬
私はゲームです。現場にも持っていきますし、『ポケモン』の新作が出たらすぐにチェックします。ゲームのストーリーで泣いてしまうこともあるくらい、私にとっては大切な世界の一つで、手放したくないものです。――ちなみに舘さんは「ゲーム」と聞くとどんなことを想像されますか。舘ひろし
僕の人生そのものが「先が見えないゲーム」のようなものかもしれません。西野七瀬
舘さんが主人公のゲーム、やってみたいです!
「挑戦し続けること」の格好良さを感じてほしい
――この映画は免許返納という社会的なテーマを扱いながら、笑って泣けるエンターテインメントに仕上がっています。若い世代にはどう届いてほしいですか?舘ひろし何かに「挑戦し続けること」の格好良さを感じてほしいかな。環境の変化に抗うことも、時には大事なんじゃないかと思います。西野七瀬
私たちの世代だと、まだ免許返納は先のことだと思いがちですが、この映画を観ると「いつか自分にも訪れる大切な決断」として、身近に考えられるようになると思います。舘ひろし
とはいえ西野くんの世代が返納を迫られる頃には、きっと車は自動運転になっていて、免許そのものが必要なくなっているかもしれないよね。(おわり)
