中国が新造「異形の巨大潜水艦」の正体めぐり乱れ飛ぶ憶測
中国が建造したとみられる「異形の巨大潜水艦」が軍事専門家の間で波紋を広げている。米軍事専門メディアThe War Zone(TWZ)と海軍専門誌Naval Newsは今月初め、上海の江南造船所で建造中の新型潜水艦を捉えた衛星画像を相次いで公開した。そこに写っていたのは、従来の潜水艦では当たり前だった「艦橋(セイル)」がほとんど見当たらない、奇妙な姿の大型艦だった。
公開された画像によると、この潜水艦は全長約120メートルに達すると推定される。中国海軍の現用攻撃型原子力潜水艦に匹敵する規模でありながら、艦首から艦尾まで極めて滑らかな流線形を描いている。艦尾には最新型潜水艦で採用例が増えているX字舵が確認され、推進装置も従来のスクリューではなく静粛性に優れたポンプジェット方式の可能性が指摘されている。
最も注目を集めているのは、やはりセイルの消失だ。
通常、潜水艦のセイルには潜望鏡や通信マスト、各種センサー類が収容される。これを極端に小型化、あるいは事実上廃止すれば、水中抵抗や騒音を低減できる可能性がある。一方で機器配置や運用面では大きな制約も生じるため、各国海軍は長年採用を見送ってきた。今回の艦艇は、その常識を覆そうとしているようにも見える。
では、この潜水艦の正体は何なのか。
現時点で中国当局は一切説明しておらず、憶測だけが先行している。
TWZは「高速迎撃型潜水艦」の可能性を指摘した。冷戦期に旧ソ連が研究した高速潜航構想の現代版で、米軍の原潜や無人潜水艇を追跡するための専用艦ではないかとの見方だ。
一方、Naval Newsは中国が過去にも同じ造船所で小型のセイルレス実験艇を建造していたことに注目し、長年にわたる研究計画の延長線上にある可能性を指摘している。無人潜水艇の母艦や次世代攻撃型原潜の技術実証艦との見方も浮上している。
(参考記事:【写真】「ひっくり返るしかない」金正恩”戦略原潜”の異形の姿)
さらに中国軍ウォッチャーの間では、「第6世代潜水艦」と呼ぶ声まで出始めた。船体規模からみて原子力推進が有力視されるが、中国が近年研究を進めている小型原子炉と通常潜水艦技術を組み合わせたハイブリッド方式ではないかとの推測もある。もっとも、現時点でそれを裏付ける証拠は存在しない。
今回の発見で改めて浮き彫りになったのは、中国海軍の潜水艦建造能力の急拡大だ。専門家の間では、中国はすでに米国を上回るペースで潜水艦を建造しているとの見方もある。近年は次世代攻撃型原潜095型や戦略原潜096型の建造も進んでいるとされ、水上艦だけでなく水中戦力でも急速な近代化が進行している。
衛星写真に写った奇妙なシルエットは、単なる試験艦かもしれない。しかし、それが将来の中国海軍の姿を先取りした存在だとすれば、インド太平洋の海中勢力図を大きく変える前触れとなる可能性もある。
