【藤 和彦】民間AI人材には海外渡航制限、富裕層の資金移転にも規制…それでも止まらぬ「中国脱出」のワケ

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ついに民間も規制強化

中国政府は人工知能(AI)分野の人材流出の防止に躍起になっている。

ブルームバーグは5月26日、「中国政府が、アリババグループやディ―プシークなどの民間企業に勤務する人工知能(AI)分野の主要な人材に対し、海外への渡航を制限している」と報じた。

中国政府はこれまでも有力大学の研究者や核関連の技術者、国有企業の幹部などに対して渡航制限を講じてきた。ただ、民間企業にまで渡航制限を広げるのは異例のことだ。

今回対象となったのはAI分野のスタートアップ創業者や研究者などであり、国家にとっての重要性に基づいて選定するという。こうした動きは、AI技術者が中国にとって戦略的な資産とみなされていることの証左だ。

中国政府が27日、「4月の工業部門企業利益が前年比24.7%増加し、3月の15.8%増から伸びが加速した」と発表した。AI分野の活況が主な要因だ。実際にハイテク製造業の利益は前年同期比で44.8%増とされている。薄利多売に苦しむ製造業の中にあってAIは「希望の星」なのだ。

中国政府が貴重なAI人材の流出を食い止めたい気持ちはよくわかる。だが、中国のAIの進歩が米国との研究交流で実現したことを踏まえれば、今回の措置は中国の今後のAI発展を阻害する可能性があると言わざるを得ない。

マネー流出を防げ

中国政府はマネーの流出阻止にも力を入れ始めている。

中国証券監督管理委員会(証監会)は22日、国内の資金を海外の証券、先物、ファンド商品の越境取引に対する取り締まりを発表し、海外市場に資金を送ったとされる証券会社に罰則を科す方針を示した。

金融当局は2022年末に海外機関による本土投資家向けの口座開設を禁止して以降、監視体制を強化してきた。今回の規制は、厳格な資本規制によって通貨防衛を図る中国の下で、富裕層が海外市場で取引するための抜け道として長らく利用してきた慣行までも封じ込めた形だ。

金融当局が規制を強化した背景には、マネーの流出が拡大していることがある。

ブルームバーグなどの報道によれば、昨年における投機的な資金、いわゆるホットマネーの中国外への流出額は約1兆ドルに上るとされる。これは2006年にデータ集計が開始されて以来、過去最高の記録だ。

危機感ばかりが募る国内

海外への流出とは対照的に、中国国内の資金の流れは停滞している。

ロイターは28日、「中国人民銀行(中央銀行)が今月、銀行に融資を拡大するよう指示したことが関係筋の話でわかった」と報じた。エネルギー価格の上昇と内需低迷に加え、融資の焦げ付きの増加のせいで銀行が企業への貸し出しを厳格化していることを危惧していることの表れだ。

不動産バブル崩壊以降、不景気が続く経済に嫌気がさした富裕層の海外への資金移転の動きを止めなければ、事態はさらに深刻になるとの危機感が中国政府にあったことは間違いないだろう。

不景気続きで資金流出は止まらない。まさに弱り目に祟り目といった中国経済。だが後編記事『636億の対外純資産で日本を抜き世界2位もその実態は「赤字」…そして中国がひた走るデフレ経済への道』で見ていくように、とある指標でついに日本を抜き世界第2位となった。しかしながら、決して明るい話題というわけではないようだ。

【つづきを読む】636億の対外純資産で日本を抜き世界2位もその実態は「赤字」…そして中国がひた走るデフレ経済への道