絵本作家・葉祥明さん 関西初の大規模展 「作品から平和の大切さを感じて」 神戸市立小磯記念美術館
青い空に地平線、愛らしい動物や小さなおうち。神戸市立小磯記念美術館(神戸市東灘区)で、特別展「絵本作家・葉祥明の世界―メルヘンから平和へ」が開かれている。画家・絵本作家である葉祥明さん(1946年〜)の画業初期から近年までを約100点で紹介する関西初の大規模展で、絵本原画や油彩画などを通して、その創作世界の広がりをたどる。8月16日(日)まで。

葉さんは熊本市出身。1970年代、やなせたかしさん(1919〜2013年)に見出され、雑誌『いちごえほん』や『詩とメルヘン』で挿絵を担当、「メルヘン画家」として人気を集めた。青空や草原、地平線、水平線を大胆に配したシンプルで洗練された構図、透明感ある淡い色彩が特徴で、作品には「優しさ」「思いやり」「希望」といったメッセージが込められている。1980年代後半以降は、戦争や地雷問題など社会的テーマにも向き合い、メッセージ性の強い絵本作品を発表してきた。

展覧会は「北鎌倉葉祥明美術館」(神奈川県鎌倉市)が協力し、4章で構成。第1章「画業のはじまりから『メルヘン画家』になるまで」では、ファッションイラストレーターを志していた若き日の人物画をはじめ、絵本デビュー作『ぼくのべんちにしろいとり』(1972年)などの原画を展示。『いちごえほん』などに掲載されたイラスト原画も並び、独自のやさしい画風が形成されていく過程を知ることができる。さらに、70年代後半から80年代、大流行した葉さんのイラスト入りグッズや90年代、表紙の絵を手掛けた全日空時刻表なども紹介。


第2章「多彩な絵本の世界」では、葉さんが1980年代以降に取り組んだ絵本作品を特集する。牧歌的な子ども向けだけでなく、社会問題や人生観をテーマにした作品も。代表作の1つである『地雷ではなく花をください』(1996年)原画も見どころで、ウサギのキャラクターを通して地雷問題を訴えた同作からは、平和への強い願いが伝わってくる。そのほか「ハロー!ジェイク」(絵本『ジェイクと海のなかまたち』)=1998年=など、環境問題について発信する作品も。やさしい絵柄の中に深いメッセージを宿す葉祥明アートの真髄に触れられる章となっている。


イラストレーションの枠を超えた芸術表現を紹介するのは、第3章「油彩画の世界」だ。1980年代後半から本格化した油彩画制作では、地平線を基調とした構図を発展させ、極圏や宇宙など壮大で神秘的な風景を描いた。「蒼い黄昏」(1991年)、「ロマン的な夕暮れ」(同)などの静けさに満ちた画面には、「われわれは何なのか」という作家自身の哲学的問いが込められ、詩情豊かな表現とあいまって唯一無二の世界をつくりあげている。

最終章「ことばと絵の世界」では、詩人としての側面に光を当てる。葉さんは1990年代後半から、絵とともに詩を発表する連載を続けており、人生や日々の暮らしに寄り添う平明な言葉で多くの読者を励ましてきた。本章では、心を穏やかに包み込むような詩と絵の作品群が並び、癒やしに満ちた空間が広がる。
開幕に先立つ記者説明会に登場した葉さんは、7月で80歳になることを明かし、「僕のこれまでの50年を見てもらうとともに、前を向いてともに進むような展覧会になれば」とあいさつ。その上で、「世界を見回すとたいへんな時代だ。平和でなければ物事は何も始まらないし、絵画も音楽も楽しめない。作品を通して平和の大切さを感じてほしい」と話した。


