クルーザーを購入、海外旅行で豪遊…海外ファンド違法出資で870億円を集めた容疑者の”組織運営術”
秘密保持契約書にサイン
カメラの放列から無数のフラッシュを浴びても、日焼けしたその男は表情ひとつ変えないどころか、むしろ堂々としているように見えた──。
無登録で海外金融商品「スターリングハウストラスト」への出資を勧誘したとして5月13日、警視庁生活経済課は金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで情報提供会社『Global Investment Lab(グローバルインベスティメントラボ、以下GIL社)』(東京・’24年8月解散)の実質的経営者で会社役員の大坂陽司容疑者(50)ら男女6人を逮捕した。
大坂容疑者らは’14年から’24年の約10年間で約7300人から約870億円もの出資金を集めたとみられている。
「6人の直接的な逮捕容疑は、’18年5月から’23年10月ごろまでに無登録で20代から60代までの男女14人に対し、海外金融商品への出資を勧誘した疑いです。『元本保証で、毎月出資金の1%にあたる年利12%の配当を行う』などとうたい、計5億4000万円を出資させたといいます」(全国紙社会部記者)
金融商品取引法では、株や外国為替証拠金取引(FX)といった金融商品を取引する業者は国に登録しなければならないと定められており、無登録での投資勧誘や取引契約は違法行為となる。
同社を巡っては’24年6月、証券取引等監視委員会が「無登録で海外金融商品の勧誘をした」として会社と役員3人に違反行為の禁止・停止を命じるよう東京地裁に申し立てていた。それから2年、ようやく逮捕に漕ぎ着けたというわけだ。
大坂容疑者らの勧誘手法は次のような流れだった。
「GIL社は投資情報やオンラインセミナーを提供する有料会員制コミュニティで、月額・年額の会費を支払って会員になると会員限定レポートや動画、勉強会などにアクセスできるようになります。この約1000人の会員たちが勧誘を担当していました。
会員たちは学生時代の友人や投資セミナーなどで知り合った人に『自分たちは海外に顧客名義であるペーパーカンパニーを設立し、その法人名義の口座で出資金をまとめて運用している』などと話し、『元本保証』や『12%の配当』といったワードを巧みに使って出資金を集めていました。
配当金は当初から支払われていましたが’24年6月にストップ。その際も、『海外法人に金融監査が入り、すべての顧客が出金手続きできなくなっている。しかし、問題ない』などと説明していました」(前出・社会部記者)
GIL社は違法行為が表沙汰にならないよう手を打っていた。
「投資者は会員になる必要はありませんが、1年未満に解約する場合は出資金の20%、1年以上2年未満なら10%を徴収すると説明。解約しづらい決まりを作っていたのです。契約時には『商品などの詳細を口外すると損害賠償請求の対象になる』と伝えて、秘密保持契約書にサインさせていた。
出資者を獲得した場合、勧誘に成功した会員の上司にあたる会員にも一定の割合で成功報酬が支払われるマルチ商法のような仕組みになっており、逮捕された容疑者らはいずれも会員ピラミッドの上位にいました。組織の頂点に君臨していた大坂容疑者は計約65億円を得ていたとみられており、クルーザーを購入してパーティーを開催したり、海外旅行三昧の日々を送ったりと豪遊していたようです」(同前)
10年を超える長期の実刑判決も
今回の逮捕容疑は金融商品取引法違反(無登録営業)だが、今後、詐欺罪など罪状が加わる可能性はあるのだろうか。弁護士法人『ユア・エース』正木絢生代表弁護士に話を聞いた。
「まず考えられるのが詐欺罪(刑法246条1項・法定刑10年以下の拘禁刑)です。人を欺いて財物を交付させた場合に成立します。今回、最初から配当を払う意思がなく、また配当が出る見込みがないと知りながら出資を募っていたのであれば、詐欺罪が成立する可能性があると言えます。
捜査の結果、GIL社の一連の行為が組織的・計画的に行われた詐欺であると認められれば、組織犯罪処罰法の組織的詐欺罪(組織的犯罪処罰法3条1項13号・法定刑1年以上の有期拘禁刑)が適用され、通常の詐欺罪よりも刑が重くなります。勧誘の際に『元本保証』や『年利12%の配当保証』をうたって資金を集めていた事実が認められれば、出資法違反にも該当すると思います」
今後、どのような捜査が行われるのだろうか。
「今回の金融商品取引法違反(無登録営業)での立件は、あくまで“捜査の入り口”であると言えます。報道によると、現時点での被害者は14人、被害総額は5億4000万円に上るとされています。今後の焦点は、詐欺罪や組織的詐欺罪の立件の可否です。詐欺事実の解明に加えて、被害者何人分(いくらの金額)を具体的に立件できるのか。逮捕された6人の関与度や利益の分配などの役割分担を割り出し、いかに“組織性”を立証できるかが鍵となります」
詐欺罪などが立件された場合、どのくらいの量刑が科されるのか。
「金融商品取引法(無登録営業)のみで起訴された場合は、拘禁刑2〜3年と罰金が想定されます。執行猶予がつく可能性もあります。詐欺罪や組織的詐欺罪でも起訴された場合、立件された被害者数・被害額にもよりますが、今回の被害額(5億4000万円)を前提とすれば、10年近い実刑判決が下される可能性も十分にあり得ます。組織性が認められ、組織的詐欺罪として処罰されることになれば、10年を超える長期の実刑判決が現実味を帯びてきます」
捜査の行方を注視したい。
正木絢生(まさき・けんしょう)弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや交通事故・労働問題・相続・詐欺事件・薬物事件など民事事件から刑事事件まで幅広く多数手掛ける。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeの『マサッキー弁護士チャンネル』にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、ユア・エース公式チャンネル『ちょっと気になる法律相談』では知っておきたい法律知識を配信中。
