天の川の向こうできらめくスターバースト銀河 不規則銀河「IC 10」
こちらは、アメリカ・アリゾナ州のキットピーク国立天文台(KPNO)にある口径4mのメイヨール望遠鏡で観測した不規則銀河「IC 10」。カシオペヤ座の方向、地球から約250万光年先にあります。

混沌とした美しさが魅力の「スターバースト銀河」
画像を見ると、天の川銀河やアンドロメダ銀河のような整った渦巻状ではなく、無数の星々や塵が入り乱れた混沌とした姿をしています。このような決まった形を持たない銀河は「不規則銀河」と呼ばれています。
NOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)によると、IC 10は天の川銀河が属する局所銀河群(局部銀河群)のなかで唯一の「スターバースト銀河(爆発的星形成銀河)」として知られています。
画像に広がる赤く鮮やかなガスの複雑な構造は、巨大で冷たい水素ガスが凝縮し、新たな星が次々と誕生している証拠です。この爆発的な星形成によって生まれた若い星々の輝きが、IC 10の混沌とした姿をひときわ色鮮やかに際立たせています。
巨大な星々とブラックホールが織りなす過酷な環境
また、IC 10は特異な天体の宝庫でもあります。NOIRLabによれば、この銀河には表面温度が太陽の数十倍にも達する非常に高温で巨大な「ウォルフ・ライエ星」が数多く存在しています。また、大質量星の死によって形成されたブラックホールも隠されています。
興味深いことに、このブラックホールの周囲を回るウォルフ・ライエ星が、ブラックホールから放たれるX線を定期的に遮る現象も観測されています。近年のChandra(チャンドラ)X線宇宙望遠鏡のデータを用いた研究などによれば、IC 10はこうした若い大質量星とブラックホールや中性子星がペアになった「X線連星」を詳しく調べるための絶好の実験場として、天文学者たちの注目を集めています。
観測をはばむ「天の川」のベール
これほど活発で魅力的な天体でありながら、IC 10の観測は決して容易ではありません。なぜかというと、地球から見たIC 10は「天の川」、すなわち天の川銀河の分厚い星や塵の帯のちょうど背後に位置しているからです。
画像の全体に散らばった「回折スパイク」と呼ばれる十字の光芒を放つ明るい星々は、実はIC 10ではなく手前にある天の川銀河の星々です。これらの星々は観測の障壁にもなりますが、それと同時にこの美しい不規則銀河をさらに引き立てているようにも感じられます。
冒頭の画像はNOIRLabから2020年6月18日付で公開されました。
本記事は2020年6月27日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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