《「毒舌の教科書」と評価も》『鬼レンチャン』は「ただのカラオケ番組」と言われながらも業界内で「『イッテQ』より凄い」と称えられるのはなぜか?日曜ゴールデン2時間化に成功
数あるバラエティ番組の中で、視聴率の獲得とともに業界内で高い評価を受けるのが『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)だ。「『イッテQ』よりも凄い」とも称えられる納得の理由についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
【写真】前回、“テンパりキャラ”が可愛いと話題になったラブワン藤咲碧羽や歌手のchayなど。他、圧倒的な歌唱力を披露するTravis Japan・松田元太やAぇ! group・佐野晶哉なども
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今、最も業界内で評価されているバラエティは、「ファミリー層の支持」「緊張と緩和」「発掘と供給」「コスパ」の4点で『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)と言っていいでしょう。
同番組のコンセプトは「番組から課されたお題を何回連続成功できるのか?そのレンチャン数を千鳥&かまいたちが予想対決するチャレンジバラエティ」。なかでも音程を外さずに名曲のサビを歌い切る「サビだけカラオケ」が放送の半数以上を占めています。
しかし、カラオケや名曲を使った企画は多いためか、「どこが面白いのかわからない」「ただのカラオケ番組」などの厳しい声も少なくありません。はたして『千鳥の鬼レンチャン』が業界内で評価されている理由は何なのか。さらに長年、日曜ゴールデン帯のシンボルとして君臨してきた「『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)より凄い」とまで称えられるのはなぜなのか。
同番組が日曜ゴールデン帯で放送をはじめた2022年春以降、業界内で見聞きしてきたことを踏まえて、人気番組ながらあまり知られていない称賛の理由を掘り下げていきます。
「親子で見たい番組」として定着
同番組のスタートはコロナ禍まっただ中の2020年10月。金曜の2時間ゴールデン特番として放送されました。翌2021年には、金曜の3時間ゴールデン特番、日曜の3時間ゴールデン特番、水曜の4時間半ゴールデン・プライム特番として放送。
いずれもパイロット版のような位置付けでしたが、好結果を得たことから2022年5月に日曜ゴールデン(20時台の1時間)でのレギュラー放送がスタートしました。さらなる好結果を受けた2025年4月には日曜ゴールデンの放送時間が2時間に倍増。パイロット版から現在まで順調に支持を獲得してきた様子がうかがえます。
業界内で評価される前提となるのが、視聴率獲得であることに変わりはありません。その点でまだまだ『イッテQ!』は時間帯トップであるものの、『鬼レンチャン』が個人視聴率全体やスポンサーの好むコア層(主に13〜49歳)の個人視聴率でトップを記録することもあるなど好結果を残しています。
特筆すべきは「数字だけでなく内容もいい」とみなされていること。「サビだけカラオケ」で言えば、名曲が親子の会話につながり、音程バーをめぐるハラハラドキドキを親子で楽しみ、千鳥とかまいたちのガヤやツッコミを家族で笑うなど、ファミリー層の支持が評価を高めています。
なかには「子ども主導で見はじめた」「子どもが声を出して笑っているのがうれしい」という親もいるほか、土曜ゴールデン帯の『新しいカギ』も含めて「『土日の夜はフジテレビを見る』という家族が増えている」とのこと。フジテレビは昨年の騒動から苦境が続いていますが、『鬼レンチャン』と『新しいカギ』の奮闘で「未来は暗くない」とみる関係者は少なくないようです。
参考にされる「毒舌の教科書」
番組の内容に目を向けると、「サビだけカラオケ」は決してよくあるカラオケ企画ではありません。
「一音でも外したらそこで出番終了」「自分次第で賞金100万円だけでなく日曜ゴールデンの出演時間を増やせる」というガチンコの緊張感と、ツッコミやボケで笑いを誘う緩急はこの番組ならではでしょう。
なかでも千鳥とかまいたちの4人が挑戦者に繰り出す毒舌は、マツコ・デラックスさんや有吉弘行さんですら毒を吐く機会が減る現在のバラエティでは希少性が高くなっています。4人がかわるがわる挑戦者に毒を吐き、イジリを繰り返しても大きな批判につながらないのは、「それが相手を生かし、合意もしている」ことが視聴者に伝わっているから。
なかでも、かまいたち・山内健司さんは強い毒を吐くこともありますが、自分が辱めを受けるようなシーンを織り交ぜるなどバランス感覚に長けています。挑戦者のファンたちも4人の毒を受け入れていることから、あるテレビマンは「『鬼レンチャン』の4人は"毒舌の教科書"」と言っていました。他のタレントにとってトークの参考になるという点も業界内で評価されているポイントの1つです。
「番組発のスター」を次々に発掘
さらに『鬼レンチャン』の強みとしてこのところ称賛されているのが、知名度の低いタレントの起用。これまで、ほいけんたさん、MOON CHILD・ササキオサムさん、徳永ゆうきさん、STU48・池田裕楽さんなどを起用し、番組発のスターとして定着させてきました。
また、松浦航大さん、よよよちゃん、たむたむさんなどモノマネタレントの美声と新たなキャラクターを引き出すこともうまく、「歌唱力日本代表クラス」と言われる城南海さん、May J.さん、BENIさん、Novelbright・竹中雄大さんらアーティストも含め、他のバラエティでは見られないキャスティングで勝負。しかも単純計算で1人あたり30分前後の出演時間が与えられるため、挑戦者にとっては大きなチャンスです。
ちなみに17日放送のゲストは、FIELD OF VIEW・浅岡雄也さん、カトリーナ陽子さん、キンタロー。さん、FRUITS ZIPPER・仲川瑠夏さんの4人。やはり日曜ゴールデンのゲストとしては異質な人選ですが、「『鬼レンチャン』の出演から他番組に活躍の場を広げていく」という登竜門として業界内の注目度が高くなっています。
「サビだけカラオケ」以外では、「400m走サバイバルレンチャン」「女子300m走サバイバルレンチャン」「4×200mリレーサバイバルレンチャン」など陸上系の人気が高く、腕相撲トーナメント、ボウリングサドンデス、クレーンゲームレンチャンなども時折放送されています。現在は「サビだけカラオケ」とその他のレンチャンを交互に放送していますが、後者のヒット企画を増やすことができれば、本当の意味で『イッテQ!』超えも夢ではないでしょう。
当初は不安視する声もあった日曜ゴールデンでの2時間レギュラー化も大きな問題はなく、どの企画も挑戦者の努力が求められる一方で制作費が抑えられるコスパの良さも含め、今のところ死角は見当たりません。少なくとも向こう数年間は『イッテQ!』と視聴率や話題性を競いながら日曜の夜を盛り上げてくれるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
