関連画像

写真拡大

福島県郡山市の磐越道で起きたマイクロバスの衝突事故は、修学旅行や部活動の移動における安全確保のあり方に一石を投じました。

ガードレールが車体を貫通し、男子生徒が死亡するという凄惨な事態に、SNS上では子どもの部活送迎をする保護者らから「自分も、もし事故を起こしたら、重い責任を負うことになるのか」と不安の声が広がっています。

もし事故が起きた場合、運転していた保護者はどのような法的責任を問われるのでしょうか。

●「善意で乗せたから賠償が軽くなる」は通用するか

無償・善意で他人を自動車に乗せた場合に、事故が起こったからといって、損害を受けた同乗者やその遺族が運転者に全ての損害を賠償させるのは、運転者に酷すぎないかという考え方は以前からありました。このような考え方を「好意同乗減額」といいます。

以前は、無償・好意で同乗させたという事情だけでも比較的緩やかに賠償額が減額された時代がありましたが、近年の裁判実務では、「単に無償で乗せただけ」では賠償額の減額などは非常に認められにくいのが実情です。

減額が認められるケースは、同乗者が自ら危険をつくったなどの特殊な事情があるものに限られています。たとえば、飲酒運転だと知りながら乗った、スピード違反をあおったといった事情です。

部活の車出しは、こうした特殊な事情がない限り「単なる便乗・同乗」であり、好意同乗を理由にした減額は期待しにくいといえます。

●被害者側には有利な「運行供用者責任」

また、被害者が運転者に損害賠償を求める際には、一般の不法行為責任(民法709条)より有利な、自動車損害賠償保障法(自賠法)3条の運行供用者責任も主張できます。

通常の不法行為責任であれば、被害者が、運転者側の故意・過失などを主張・立証しなければなりません。

しかし自賠法3条の運行供用者責任では、被害者は運転者側の故意・過失などを主張・立証する必要はなく、運転者の側で「自分たちに過失がなかった」「第三者の故意や過失があった」「車に欠陥がなかった」といった点を立証しなければ責任を負う、という非常に厳しい内容になっています。

●任意保険の意外な落とし穴

このような損害は、基本的には自賠責保険に加え、対物・対人無制限の任意保険に加入していればカバーできると思われます。

強制加入の自賠責だけだと、対人賠償について、たとえば死亡の場合1人3000万円までしか補償されませんし、対物賠償は補償されません。部活送迎をする場合には必ず任意保険に加入しておくべきでしょう。

ただ、任意保険では、約款上、運転者の父母・配偶者・子どもが被害者となる場合には保険金が支払われないという親族間の免責規定があります。ご自身の子どもに関しては任意保険からの支払いは行われないことに注意が必要です。

自分の子どもについても保険でカバーするためには、人身傷害保険や搭乗者傷害保険を別途つけておく方が良いでしょう。

(※なお、上の解説は一般的な任意保険を想定したものであり、補償範囲は各社の約款や特約で細かく異なることにも注意が必要です。)

●刑事責任も別途問われうる

刑事責任も別途問われます。事故で人を死傷させた場合、過失運転致死傷罪(自動車運転死傷行為処罰法5条、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)に問われます。

●保護者の不安は「無理もない」

民事上の賠償額は、死亡事案や重篤な後遺障害が残った場合、数千万円以上になることもあります。

「今まで大丈夫だったから」という慣習のまま車出しを続けることには、大きなリスクがともないます。保護者の不安は、法的にみても根拠のあるものです。

監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)