月収100万超え続出! 急増する「ブルーカラー・ビリオネア」タクシー運転手がバブルに沸くワケ
月収100万超えの謎
「ブルーカラー・ビリオネア」という言葉が注目を集めている。これは、建設、製造、物流などいわゆる“ブルーカラー”と呼ばれる労働の分野で大金を稼ぐ人たちを指す言葉だ。“キツイ割に稼げない”というイメージを持たれがちだが、近年では人手不足の影響もあり、この分野の賃金が上昇傾向にあるようだ。
その中でも、とりわけ“ビリオネア”が増えている業界がタクシーだ。物流、建設、製造分野の求人サイト「クロスワーク」を展開するX Mile(クロスマイル)株式会社(東京都新宿区)のアンケート調査によると、特に東京都内のタクシードライバーの61%が「月収100万円」を達成しているという結果もあり、タクシードライバーは稼げる業種として認知度を上げている。
また、同調査では都内のドライバーの約50%が「年収1000万円を狙える」と答え、平均月収50万円以上の割合が約37%となっているなど、都内のタクシードライバーの稼ぎが多くなっていることがうかがえる。
配車アプリが生んだ空前バブル
一方、東京以外に目を向けると、月の総支給額40万円以下が約60%を占めるなど、東京と地方との賃金格差も浮き彫りになっている。
要因として考えられるのは東京の人口の多さだ。インバウンドの増加にともなってタクシー利用者が増えたことも大きい。さらなる要因を、調査を実施したX Mileでリクルーティングコンサルタントを務める本間氏が教えてくれた。
「UberやGOといったタクシー配車アプリによって利用者が増えたこと、車を持たない人が増えたこともタクシー利用増の後押しをしています。そのため、東京都外、千葉県や群馬県から東京のタクシー会社へ通いで働く人もいます」
インバウンド、アプリ、自家用車への意識の変化などによって、東京で近年のタクシーバブルが生み出されているようだ。
現場が明かす月収100万の罠
だが、都内のあるタクシー会社に勤務する男性に話を聞くと「月収100万円? 法人タクシーでは聞いたことがないですね」と否定。別のタクシー会社に勤務するドライバーからも「月収100万円稼ぐとなると、月の売り上げ200万、1日あたり15万円が必要なので、ほぼ不可能ですよ」という答えが返ってきた。
アンケートと現場との感覚に乖離があるようだが、この差を生んでいるのが「法人タクシー」と「個人タクシー」の違いだ。
タクシー会社に勤務する法人タクシードライバーの場合、売り上げの約6割が収入となる。さらに勤務日数は月11〜13日となっていて、法律で13日以上の乗務は禁じられている。
前出の法人タクシードライバーは「月曜9:00〜翌2:30勤務、火曜休み、水曜9:00〜翌2:30勤務、木曜休み、金曜9:00〜翌2:30勤務」という勤務形態で、勤務中は3時間の休憩が義務付けられていた。1日の売り上げは平均して4〜5万円ほど。13日乗務したとしても、売り上げは65万円で収入は39万円になる。平均の倍売り上げたとしても78万円だ。
一方、個人タクシーの場合は売り上げから経費を引いた額が収入となる。件(くだん)の法人タクシードライバーの月最高売上額が110万円だったことを考えると月収100万円の実現は可能だ。
法人でも年収1000万は可能か
そこで再度アンケートを振り返ると、回答者の内訳は〈回答者177名のうち70名、約40%が個人タクシードライバー〉となっている。このうち何名が100万円を達成したと答えたかは不明だが、個人タクシーの回答が「月収100万円」の割合を大きくしているのではないか。
それでも、全国で100万円を達成した割合が約46%となっているので、法人タクシードライバーの約6%が達成していることになる。
「法人タクシーでも月の総支給が80万円、手取りが60万円ほどで、年収にすると1000万円というドライバーも多くいます。年収1000万円を目指せる業種であることは間違いありません。今、タクシーは稼げる業界といえます」(本間氏)
前出の法人タクシードライバーは転職1年目にして年収は約500万円、別のドライバーも転職1年目で「収入は上がった」と実感しており、やればやるだけ稼げる業種として注目を集めている。本間氏は言う。
「配車アプリで利用者が簡単にタクシーを呼べるようになったことで、ドライバーも安定してお客さんを見つけられるようになりました。アプリの配車だけでも手取り35万円は稼げるといいますし、このアプリの影響が売り上げに大きく影響しているとタクシー会社の採用担当の方もおっしゃっていました。近年の“カスハラ”対策の強化もあり、労働環境もよくなっている」(本間氏)
若者や女性が殺到
そんな背景もあり、タクシードライバーへの転職希望者が増えているという。
「現在、当社のサイトに登録されているタクシードライバー希望者は、’24年、’25年比で2.3倍となっています。また、タクシー業界への転職希望者の男女比率は女性が約12%となっていて、ほかの物流ドライバーの6.8%と比べて女性の割合が多くなっています」(本間氏)
20代のドライバー希望者も増えているという。タクシードライバーといっても、その働き方や動機はさまざまだ。
「朝からスタートなのか、昼からなのか、日勤か夜勤か時間帯が自由に選べるのも魅力の一つ。子育て世代のママが子どもを預けている間に働いたりしています。
20代前半の方でも手取り40万、50万円が可能で、同世代と比べると2倍近く稼げる。起業したい人や夢を追いかけている人が、タクシーで資金を稼ぐというケースもあります。
ある68歳の女性の方は『孫と海外旅行に行くんだ』といって、月50万円を稼いでいました。年齢性別関係なく稼げるのが魅力なんだと思います」(本間氏)
また、法人タクシーでもハイヤーの場合は、一般タクシーと条件が変わる。
あるハイヤーのドライバーによれば「ハイヤーは乗務時間の規定がないので残業代で稼げる。手取り100万円は難しいが、80万円、年収1000万円なら目指せます」という。法人タクシーやハイヤーで経験を積んでから、個人タクシーで月収100万円を目指すのも「ブルーカラー・ビリオネア」への一つのステップといえるだろう。
前出の法人ドライバーは「1日働けば翌日は休み。時間に余裕があり、好きなことができますし、稼げば稼ぐほど収入が増えるのでやりがいがあります。手取り100万円を目指さなくても、普通に営業していれば35〜40万円くらいにはなりますから」と言い、別のドライバーも「勤務時間中の休憩をいつ取るかなど、自分のペースで働けるので自由度は高い」とメリットを強調。
デメリットとしては「労働時間が長いこと、有給休暇がないこと(休むとその分収入が減る)、事故のリスクが高いこと」を挙げた。
アメリカや中国では自動運転のタクシーも登場している。日本にも近いうちに自動運転のタクシーが登場するだろう。ただ、今現在、もっとも“ブルーカラー・ビリオネア”の可能性が高い業種の一つが、個人タクシードライバーであることは間違いなく、法人タクシーも安定した収入が見込める。
先の見通しが立たない現代において、タクシードライバーが稼げる仕事の一つとしての地位を確立しつつある。
取材・文:高橋ダイスケ
