記事のポイント

Qoo10のビューティーブランド支援プログラム「メガデビュー」は、売上平均15倍・フォロワー20倍といった成果を背景に、成長モデルとして実証段階に入った。
2年目に入り、プロモーション期間の延長やインキュベーション、メガコラボなど支援を拡張。オフライン拠点の開設も進め、成長支援はEC外へ広がる。
韓国政府機関との連携による越境EC支援の構造も背景にあり、日本市場向けに最適化されたブランド育成モデルの横展開が進む。



eBay Japanが運営するECモール「Qoo10」は4月14日、韓国・ソウルで「2026 Qoo10 メガデビュー アワード」を開催した。2025年に始動したビューティーブランド支援プログラム「メガデビュー」で紹介した約200ブランドの中から、11ブランドを表彰した。

メガデビューの前後で売上が平均15倍、フォロワー数が20倍以上に増加するなど、新興ブランドの成長を後押しする成果が明確に表れている。Qoo10が構築してきたブランド育成の仕組みは、再現性の高い成長モデルとして機能しはじめている。

開始から2年目に入り、プロモーションの拡張や支援内容の高度化に加え、オフライン拠点の開設など新たな展開に踏み出す。

3部門・5カテゴリーで11ブランドを表彰



eBay Japanは2025年、「企業価値1000億円規模のブランドを20社、100億円規模を100社育成する」という目標を掲げ、「Qoo10 Beauty支援プロジェクト」を始動した。メガデビューは、その起点となる施策で、毎週火曜日に4つの新興ブランドを紹介する取り組み。大型セール「メガ割」と連動した販促強化、ライブコマース「メガデビュー LIVE」による認知拡大、クーポンや限定セットによる購買促進といった支援を提供してきた。

アワードは、著しい成長を見せたブランドを表彰するもので、売上高や成長率に加え、デビュー後の定着率といった実購買データをもとに多角的に評価。「ライジングスター」「ベストパフォーマンス」「グランドプライズ」の3部門で構成し、インナービューティー、ボディケア、ヘアケア、メイクアップ、スキンケアからそれぞれ1ブランド、グランプリを加えた全11ブランドを選出した。

デビュー後に急成長を遂げた新興ブランドを評価するライジングスター部門では、インナービューティーでNE:AR、ボディケアではbaren、ヘアケアではLa ferme、メイクアップではRISKY、スキンケアではCICIBELLA BEAUTYが受賞。各ブランドには副賞として50万円が贈られた。ライジングスター部門で受賞したブランドの多くが日本市場への強い意欲を示し、RISKYのブランド担当者は「日本市場でより挑戦的なメイクアップ製品を展開していきたい」とコメントした。

売上実績を軸に選ぶベストパフォーマンス部門では、単発的なヒットではなく、継続的な販売実績を築いた点を評価した。インナービューティーではVeganery by d’Alba、ボディケアではYtning、ヘアケアではLOVEPASSPORT SINORU、メイクアップはAOU、スキンケアはEIoMが受賞。副賞として150万円相当の広告パッケージ利用券を贈呈した。

グランプリに選ばれたのはスキンケアのCHARDEだ。「肌に真剣なブランド」を掲げ、SNSやインフルエンサーを起点に認知を拡大。約250万ウォンの売上からスタートし、メガデビュー期間中に約10億ウォン規模へと成長した。単なるヒット商品ではなく、プラットフォーム上での継続的な成長プロセスを評価した。



ECを超えた「ブランド育成プラットフォーム」へ





今回のアワードが示したのは、Qoo10が単なる販売チャネルではなく、ブランドの成長を支援するインキュベーション機能を強化している点だ。

メガデビューでは、毎週4つの新ブランドを投入する仕組みに加え、大型セール「メガ割」と連動した販促強化、ライブコマース「メガデビュー LIVE」による認知拡大、クーポンや限定セットによる購買促進といった支援を提供してきた。

こうした施策を組み合わせることで、認知から購入、その後の定着までを段階的に促す仕組みをつくっている。結果として、売上だけでなくレビューやフォロワーといった指標も伸びている。

今回のアワードが韓国で開催された背景には、メガデビュー参加ブランドの約94%が韓国発である点がある。韓国政府や関連機関との連携のもと、現地でブランドを発掘・育成し、日本市場へ展開する構造が形成されている。中小ベンチャー企業振興公団による約200億ウォン規模の支援も、それを下支えしている。授賞式には韓国メディアも多数招待されており、Qoo10の成長モデルを現地ブランドに訴求する側面もある。メガデビューが日本市場における「ブランドの登竜門」として機能していることも強調された。

特に韓国ブランドにとって、日本市場での検証とスケールを同時に実現できる場となっている。実際、受賞ブランドのうち9ブランドが韓国発であり、メガデビューは、日本市場参入の入り口としての役割を強めつつある。受賞ブランドNE:ARでグローバルマーケティングを統括するメイ・ミナミ氏は、Qoo10を日本での販売チャネルに選んだ理由について、「若年層でトレンドに敏感なユーザーが多いから」とした。

代表取締役のグ・ジャヒョン氏は、Qoo10が単なるECプラットフォームではなく、ブランドを発見し成長させるための成長インフラを構築したことが最大の成果だと話した。

アワードの先にある戦略 成長モデルの実装



メガデビューは、ブランドの成長を支援する取り組みであると同時に、Qoo10自身の競争力を高める戦略にもなっている。同社はメガデビューアワードの開催にあわせて、今後の戦略も明らかにした。

「メガデビュー」プログラムの開始から1年で約200のビューティーブランドを日本市場に投入し、総売上は35億円規模に達した。メガデビューを通じて販売を行ったブランドは、デビュー前後で売上が平均15倍に成長。フォロワー数も20倍以上に増加した。デビュー直前の月と比べて7倍の成長を達成したブランドがあること、3カ月で売上高1000万円以上を達成したブランドが50以上にのぼることなどを明らかにした。

こうした成果の背景について、マーケティング本部長キム・ジェドン氏は、3つの要素を挙げた。

まず、売上の90%以上を占めるクーポン施策で、ブランドと共同で設計された割引が、購入の「最後の一押し」として機能していること。次に、デビュー前からレビューを蓄積する仕組み。サンプルマーケットを通じて事前に評価を形成し、マイクロインフルエンサーによる拡散と組み合わせることで、初期段階から購買を促進している。さらに、アプリ内バナーやSNS、広告、ライブ配信を組み合わせた全方位的な露出設計により、短期間での認知拡大と売上創出を同時に実現していることだ。

メガデビューを拡張 14日間プロモーションやアンコール施策も





キム・ジェドン氏は、メガデビューについて「開始から1年を経て、2年目に入った。次の成長を生み出す段階にある」と述べ、フェーズ2に入ったことを強調した。

下半期に向けて、メガデビューのプロモーション期間を従来の7日間から14日間へ延長。対象ブランド数も毎週4ブランドから6ブランドへ拡大する。また、メガデビューで成功したブランドを、メガ割期間中に再度露出させる「アンコールメガデビュー」を定期的に実施。同社によると、今年3月に実施したプレテストでも通常の6〜7倍の成果をあげている。

ブランドの成長段階に応じた支援も強化する。デビュー初期のプロモーション施策「メガデビュー」を起点に、成長フェーズに応じた支援プログラムを段階的に展開する。

新興ブランドには、3カ月間の集中支援を行う「インキュベーションプログラム」を提供。さらに、上位ブランドにはライブ配信や特別企画を組み合わせた「メガコラボ」を実施し、販売規模の拡大を図る。従来は年間4ブランドを対象としていた重点支援も、2026年からは上位50ブランドへと拡大し、グローバルブランドの育成を進める。

オフライン拠点を東京に開設へ EC外にも拡張





さらに同社は、ブランドの成長支援をEC外にも拡張する計画を明らかにした。2026年後半には2つのポップアップストアを開設し、2027年前半には常設の旗艦店を都内にオープンする予定だ。

日本のEC化率は10%未満にとどまっており、オフライン市場の影響力は依然として大きい。キム・ジェドン氏は、「オフラインの可能性はまだ大きく残されている」と述べ、リアルな接点の強化が今後の成長に不可欠との認識を示した。

「集めて売る」タイミング設計 成功ブランドの共通点



「ブランドの成長は、特別な施策ではなく、基本的な設計の積み重ねによって生まれる」と指摘するのは、営業本部長のキム・スア氏。同氏は、日本市場について「文化的にも消費者特性も近いが、あくまで海外市場である」と述べた。

韓国での成功モデルをそのまま持ち込むのではなく、価格設計や商品構成、コミュニケーションまで含めた細やかな最適化が求められるという。実際、Qoo10は国内のオンラインビューティー市場で約30%のシェアを持ち、10代後半から30代後半のコア顧客約2000万人のうち80%が認知。そのうち約770万人が年間を通じて購入している。こうした若年層中心のユーザー基盤が、ブランドの初期成長を支える土台となっている。

越境ECを支える構造 政府連携と支援モデル



メガデビューなどのブランド支援を加速させている背景には、韓国の政府機関との連携もある。アワードには、中小ベンチャー企業振興公団の幹部が登壇し、Qoo10 Japanとの協業を通じて中小企業の日本進出を支援していることに言及。政府の支援を受けた企業がメガデビュープログラムに参加するケースもあり、参入障壁を下げることにつながっている。メガデビューは、民間プラットフォームの施策にとどまらず、越境ECを通じた輸出支援の一環としても機能している。

日本ブランドへの拡張とカテゴリー拡大へ



また同社は、8月に日本ブランドを対象としたセラー向けカンファレンスの開催も予定している。8月25日にザ・プリンスパークタワー東京で開催し、ブランドオーナーやメディア関係者など約850人の参加を見込む。支援施策やマーケティング、サポート体制について説明する予定だ。

同社によると、現在の売上のうち約7割をビューティー領域が占めている。これまで韓国ブランドとともに成長してきたQoo10は、日本のブランドオーナーにとっても出店の有力な選択肢であることを打ち出す。メガデビューで蓄積したブランド育成のノウハウを日本企業にも展開し、他カテゴリーへの拡張を進めることで裾野の拡大を図る。

取材・写真/戸田美子