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雑誌に掲載されたアイドルの写真や記事、付録のポスターやフォトカード──。いわゆる“推し活”の一環として、これらを撮影してSNSに投稿するファンは少なくありません。

こうした中、ファッションカルチャー誌『S Cawaii! ME』編集部が3月、記事や写真のスクリーンショットや無断投稿について「法律で禁止されている」と注意喚起しました。

つい、「買ったものだから投稿してもいいのでは」と考えがちですが、実際には著作権などの法的問題が関わる可能性があります。

雑誌掲載のアイドル写真や付録をSNSに投稿する行為は、どこまで許され、どこからが違法となるのでしょうか。知的財産法にくわしい齋藤理央弁護士に聞きました。

●写真1枚でも原則「著作権侵害」の可能性

──雑誌に掲載されているアイドルの写真や記事、付録のポスター・フォトカードなどを撮影してSNSに投稿する行為は、著作権法上どのように評価されるのでしょうか。いわゆる「購入報告」や「推し活」の一環として、写真を1枚だけ投稿するようなケースでもダメなのでしょうか。

SNSに投稿する行為は、権利者にしか認められない行為であるため、たとえ写真を1枚だけ投稿する場合でも、原則として著作権侵害にあたることになります。。

ただし、一定の条件を満たせば例外的に適法とされる場合があります。この例外の代表例が「引用」(著作権法32条)です。

その適用の可否は個別具体的な事情に応じて、裁判所が判断してきましたが、もともとはかなり厳格に運用されていました。

日本の著作権法はもともと出版や放送などプロ向けに整備されてきた側面があり、そもそも作りが厳しすぎると感じることもあります。

誰でも気軽に情報発信するインターネット時代になり、アマチュアがプロ向けの法律に縛られるようになってしまいました。そうすると著作権法は時代に合っていないという見方もできます。

近年は、こうした状況も踏まえて、裁判所がこれまで厳しかった判断基準を緩める傾向があり、 たとえば「引用」として適法とされる条件が緩和されているという指摘もあります。

●「表現の自由」と「著作権者の利益」のバランスで判断

──裁判所の判断はどう変わっているのでしょうか。

その一例として、聖教新聞の紙面を撮影してXに投稿した行為が争われた裁判があります。

同紙を発行する宗教法人「創価学会」が著作権侵害にあたるとして、投稿者に損害賠償を求めたものです。知財高裁は、創価学会側の控訴を棄却する判決を言い渡しています。

弁護士ドットコムニュースによると、原告側が「従来の著作権侵害の裁判例と異なる判断を示すもの」とコメントしています。

こうした評価からも、まさに裁判所の判断が変化していることがうかがえます。現在、最高裁に上告されており、最高裁が時代に応じた判断の変遷を受け入れるのかが、注目されます。

このように、近年の裁判例では、インターネット上の「表現の自由」にも十分配慮した姿勢を見せています。一方で、著作権者の利益も依然として重視されるべき要素です。

したがって、このバランス調整の観点から違法か適法かが判断されることになります。

たとえば、今回のケースですと、雑誌を買わなくても目当ての写真がネットで簡単に入手できてしまい、雑誌の売り上げが減ってしまうような投稿は違法とされやすいでしょう。

反対に、感想や話題の共有が目的で、世間話の感覚で写真本来の価値ではなく、投稿内容をわかりやすく伝える一助として写真を利用しており、閲覧したユーザーがむしろ雑誌本体も買ってみたくなるような投稿は、適法とされやすいかもしれません。

●「フォトカード交換しませんか」の投稿は違法?

──SNS上では、「フォトカードを交換しませんか」といった投稿とあわせて、実際のカード画像を掲載するケースも見られます。こうした投稿にはどのような法的問題が考えられるでしょうか。

この点については「美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等」(著作権法47条の2)が問題となります。

この規定では、掲載できる写真の画素数などについて細かな制限が設けられており、一般的な感覚で投稿した場合、この条件を満たさないことが多いと考えられます。

そのため、おそらく一般的なSNS投稿ではその条件を満たさないケースが多く、基本的に違法と評価される可能性が高いと考えられます。

もっとも、そのように本来の救済規定が機能しないことから、たとえば引用の規定で適法とするという考え方もあります。ただ、そうしてしまうと画素数などの定めが骨抜きになってしまうという悩ましさがあります。

いずれにせよ、ここでも「表現の自由」と「著作権者の利益」のバランスが重要になります。

とくにフォトカードの交換のように取引性を帯びる投稿については、表現の自由としての保護が相対的に弱くなり、少し厳しめに判定するという考え方も成り立たなくはありません。

【取材協力弁護士】
齋藤 理央(さいとう・りお)弁護士
弁護士法人EIC代表。著作権などコンテンツiP(知的財産)やITトラブルなど情報法分野に重点をおいている。重点分野で最高裁判決、知財高裁判決などの担当案件の他、講演、書籍や論文執筆監修など多数。自身のウェブサイトでも活発に情報発信をしている。東京弁護士会所属。著作権法学会、日本知財学会会員、弁護士知財ネット、情報ネットワーク法学会等に所属。
事務所名:法律事務所碧
事務所URL:https://eic.law