最終回「リブート」を徹底考察 視聴率断トツの大ヒット作が仕掛けた「伏線」と衝撃の「結末」
夏海はマー会長に密告か
大ヒット作となった「日曜劇場 リブート」(日曜午後9時)が最終回を迎える。過去9回の放送によって家族のために生きる登場人物たちの生き方が鮮明になった。一方で多くの謎が残されたまま。謎を整理し、徹底推理する。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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前回第9回には短くも見逃せない重要シーンがあった。早瀬夏海(戸田恵梨香)が弁護士・海江田勇(酒向芳)に何かを依頼した部分である。
海江田は合六亘(北村有起哉)が代表を務める犯罪組織「ゴーシックスコーポレーション」の顧問弁護士。現在は合六の資金管理役も務めている。

夏海はまず海江田を拳銃で脅し、合六の致命傷となり得る情報を聞き出した。合六から野党第1党党首で次期首相候補の真北弥一(市川團十郎)に渡る100億円の闇献金の受け渡し日時と場所である。
夏海が海江田に頼み事をしたのはそのあと。「海江田さんにお願いがある」。中身は明かされなかったものの、だからこそ最終回の行方を左右するものなのは間違いない。100億円の本来の所有者である香港マフィアのマー会長が関係する話であると見る。
夏海は海江田に対し、合六が100億円の商品を流用していることをマー会長に伝えてほしいと頼んだのではないか。あるいは夏海が自分で密告するため、マー会長の連絡先を尋ねたのだろう。
国内では無敵の合六といえどもマー会長は怖い。だから合六は100億円の商品を警視庁捜査1課刑事の儀堂歩(鈴木亮平)が盗んだことにして、殺した。第6回だった。
組織力のない夏海が合六を倒すには警察かマー会長を使うしかない。協力を頼んだ海江田側にも合六の暴力による支配から抜け出せるというメリットがある。
夏海は海江田と会った直後、警視庁監察官の真北正親(伊藤英明)に電話をかけ、闇献金の受け渡し日時と場所を報告した。日時は翌日午後6時。場所は東京都町田市にある弥一の資金管理団体事務所だ。
闇献金受け渡しの現場を警視庁捜査2課が押さえられたら、合六と弥一は政治資金規正法違反で逮捕される。2人は破滅する。一方で夏海は海江田への依頼内容については真北に告げていない。マー会長は保険のつもりなのではないか。さらに警察内のスパイを意識してのことだろう。
夏海から真北への電話にはほかにも重大な意味がある。夏海は自分の夫・早瀬陸(鈴木亮平、2役)が、合六の配下である冬橋航(永瀬廉)に捕まったことも伝えている。夏海は捜査2課の逮捕劇が済んだら、早瀬を助けてほしいと哀願した。
真北は途中でしばし考え、「約束します」と答えた。真北は非情な男だが、空手形は出さない。第6回で早瀬が警視庁捜査1課刑事・儀堂歩(鈴木亮平)を救ってほしいと頼んだときも即座に断り、こう言った。
「多少の犠牲を払ってもより多くの市民を守る。これが僕の正義です」
そんな真北が早瀬の救命は約束した。本気だ。真北はこのままでは闇献金の授受前に早瀬が殺されると考えた。そのまま真北は合六の店に行っている。弥一もいた。真北は時間稼ぎを図ったのだ。
ひき逃げ犯は弥一か
合六の店で真北は夏海に向かって、「僕はこっち側の人間なんですよ」といやらしく笑った。それでいて直後には遠回しに夏海を庇った。夏海が涙ながらに早瀬の救命を訴えているとき、「合六さん、さすがに僕たちのいるところで手荒なマネは勘弁してくださいよ」と頼んだ。夏海は真北たちがいる間は生き延びられる。
夏海と真北の電話にはまだ意味がある。この電話を真北がしていたのは自宅内。電話を切ると、誰かに向かってやさしく微笑んだ。状況から見て相手は妻・葉月(小橋めぐみ)である。
葉月は12年前、ひき逃げ事故を起こした。そのために真北は警視庁内の本流から外れた。以降、葉月はずっと負い目を感じ続けたものの、真北は近く全てが解決すると表情で伝えたのではないか。
葉月のひき逃げは分からないことだらけである。順法精神が強く求められるエリート警察官の妻でありながら、なぜ法令通りの事故処理をせず、逃げてしまったのか。また真北に葉月を責める素振りが見えず、むしろ庇っているように映るのはどうしてなのか。
この事故にこそ真北の行動の理由が全て詰まっている。ひき逃げをしたのは葉月ではなく、若手政治家だったころの弥一だと推理する。葉月は弥一の将来を潰さないために身代わりになった。おそらく家族であることが利用された。
そう考えると、真北と弥一のいびつな兄弟関係も理解できる。葉月の心を閉ざさせた恨みがあるから、真北は弥一の摘発に躍起になっている。第6回で明らかになったとおり、6年も前から儀堂に指示して合六の動きを探らせていた。
真北は第9回で早瀬と夏海に対し、意味深な発言をしている。「妻の笑顔を取り戻すためにも僕は出世しなくてはならないんです」。真っ先に口から出た言葉は「出世」ではなく、「妻の笑顔を取り戻す」なのである。優先順位が表れている。
おそらく真北は自分の狙いを悟られぬよう、弥一と合六に従順なフリをしてきた。弥一は第9回後半で「おまえを警察内の見張りに付けておいて良かった」と悦に入ったが、真北が連携しているのは与党なのである。それは第7回で本人が早瀬に明かしている。嘘を付く理由は見当たらない。
弥一は真北に向かって「おまえは警察のトップに立て。オレは日本のトップに立つ」と豪語した。だが出世は弥一と組まなくても実現できるのだ。弥一が捜査2課に摘発されたら、野党第1党は惨敗必至。与党は選挙で大勝できるから、論功行賞で真北は出世できる。
真北が本当は弥一と合六側の人間ではないという状況証拠はまだある。第9回。早瀬と夏海が真北宅を訪れた際、2人にお互いの現在地が分かるGPS機能付きのスマホを渡した。2人には役立った。この情報を真北は合六に上げていない。合六は2人の行方を追っていたから、位置情報は喉から手が出るほど欲しかったはずなのだ。
真北はスパイではない
合六のスパイは真北ではないと断定したい。スパイのフリをして都合の良い情報を流した程度だろう。では誰がスパイなのか。
儀堂の部下の捜査1課刑事・足立翼(蒔田彩珠)は1課のロッカールームの防犯映像を調べている。第3回で儀堂のロッカーから偽メールが仕込まれたパソコンが見つかったが、これを仕組んだ人物がスパイである。パソコンを入れたのは儀堂のもう1人の部下・寺本恵土(中川大輔)と見る。
これまでにも寺本には不審な点があった。第7回の冒頭、自分が運転する覆面パトカー内で早瀬がシュークリームを食べていると、「朝からシュークリームですか」と苦笑した。
寺本は儀堂とは比較的長い付き合いだから、甘い物が苦手なことは知っているはず。それなのに疑問を持たなかった。儀堂が早瀬であることを合六が知ったのは第4回。その情報は寺本にも伝えられたのだ。
ほかにも違和感のある場面があった。ロッカーにパソコンが入れられる前の第3回、寺本は早瀬に「これ失くしたって言っていたロッカーの鍵です。総務から届いてました」と言い、鍵を手渡した。貴重品も入れるロッカーの鍵は第3者に渡さないのが常識だ。
また謎は残る。合六は捜査2課に闇献金授受の情報が漏れていたことを知った。真北があえて漏らしたのか。このままだと合六も弥一も逃げ切ってしまう。
もっとも、真北は正しい情報を流していないはず。闇献金授受は翌日午後6時に場所は東京都町田市で行われるが、最後の大勝負ということで、真北が「捜査2課は午後8時に行われると見ている」などと嘘を付けばいい。
日時と場所以外でも真北が偽情報を流せば合六と弥一を摘発するのは可能だ。合六も弥一も真北を信用しているから、騙される。
まだ謎はある。100億円の商品を菊池瑛介(塚地武雅)が換金する前から、一部が消えていた。管理していた海江田は合六に対し、幸後一香(戸田恵梨香)の犯行だと告げたが、一香の正体である夏海はそんなことをやっていない。
海江田が換金して3年前のように千葉県船橋市に住む離婚した元妻に送ったのか。ただし、バレたらマー会長か合六に殺されるかも知れない。平凡な市民も悪党も全員が家族のために命を賭ける斬新な物語だった。
第9回までの平均個人視聴率は6.9%(世帯10.8%)。もちろん全ドラマの中で断トツである。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部
