そしてそんな自分を嫌悪したんです。夫とはセックスだけでつながっていたわけではないはず。それなのにできない夫を物足りなく思っている自分がいる。苛立つ自分に、さらに苛立っていましたね」

30代に入って間もないころのことだから、この先、自分はずっと誰ともセックスをしないまま年をとっていくのかと絶望感を覚えたこともある。そんなとき夫が「もし離婚したいなら正直に言ってほしい」と言い出した。

そんなつもりはないときっぱり答えたが、自分の「体の渇きだけはどうしようもないと感じていた」と彼女は言う。

◆浮気をしたら

33歳のころ、彼女は大学時代のサークルの仲間と久しぶりに集った。それまで結婚生活と仕事の両立に腐心していて、なかなか昔の仲間と会う時間がとれなかったのだ。

そこで当時、キヨノさんを慕ってくれていた後輩のヨシキさんと再会、ふたりだけの三次会、四次会へと流れ、気づいたら後輩の部屋のベッドで朝を迎えていた。

「自分がそんなことをする人間だと思っていなかったので、びっくりしました。確かにヨシキとは昔から仲がよかったけど恋愛感情はなかったし、再会したときもなかったんです。それなのに、私は人妻なのに、こんなことになるなんてと落ち込みました。

ヨシキは『キヨノさんは今も素敵です』なんて言ってはしゃいでる。私、不倫したことになるんだよ、あなたも夫から訴えられるかもよと言ったらビビりまくっていましたけど」

朝帰りなど初めてのことだった。それでもキヨノさんはタクシーを飛ばして帰宅した。冬だったので朝5時でもまだ暗いのが救いだった。帰宅するとすぐ自室のベッドに潜り込んだ。

「10時頃目覚めてリビングに行くと、夫がコーヒーを飲んでいました。テーブルにはおいしそうなサラダがあって。『昨夜はごめんなさい。久々に楽しくて酔い潰れた』と言うと、夫は『きみが楽しかったのならいいんだよ。よかった』と」

◆後輩に加えて同僚とも不倫関係に

それを機に、ときどきヨシキさんと会った。恋愛感情は生まれなかったが、仲間としての情と性的興味から逃れられなかった。性的に満たされることが重要だったのだ。

「それだけじゃないんです。実は会社の同僚とも勢いでそういう関係になってしまって……。同僚とはかなり本気の恋です。私、箍(たが)が外れてしまったみたいで」

まじめに生きてきて、好きな人と結婚してまじめな人妻だったはずなのにと彼女は消え入りそうな声で言った。まじめだったからこそ、そしていったん性的な喜びを知ってしまったからこそ、それがかなわなくなったとき、箍(たが)が外れてしまったのかもしれない。

「朝帰りこそしませんでしたが、私の帰宅が遅くなっても夫はなにも言わないし、週末は一緒に近所のカフェでブランチしたり映画を観に行ったりと仲良しのまま。

性的なこと以外、夫に不満はありませんでした。だからセックスだけ外注すればいい。そんなふうに思うようになったんです」

だがある夜、ふたりでリビングでくつろいでいると、「きみは最近、どんなセックスをした?」と夫がたずねてきた。キヨノさんが焦(あせ)ってなにも答えられないでいると、夫は「聞かせてほしいんだ」と真顔で言う。

◆他の男性に嫉妬しつつ興奮する夫

「夫は『刺激がほしい』と。刺激があれば自分もできるかもしれない。私が他の男とどうこうしているところを想像すると興奮する。きみの口から聞きたい、と。

この人、おかしいんじゃないかしらと思いながら、夫に問われるままに少しずつ話しました。夫は『つらい。きみが他の男としているなんて』と苦しそうな顔をするので話すのをやめると、『やめないでほしい』と懇願(こんがん)する。